こんにちは。早川町に暮らして10年、フリーで編集・ライターをしているクシダユリと申します。地域に関わることでは、南山梨の情報を発信するフリーペーパー『南山梨 HuMaN』の制作や、早川町の広報誌などに関わらせていただいています。
最初に感じた町の印象については今でもよく覚えています。南アルプスの迫り来るような渓谷の景色と、澄んだ川の青さにまず心を奪われ、そして同じくらい感激したのが温泉でした。町内には温泉が10施設近くもあって、「源泉100%かけ流し」や「飲泉可能」といった温泉も複数あるんですよ。
この記事では、地元密着の編集者が、早川町内の本当にお気に入りの穴場温泉をご紹介します。ぜひ最後まで読んで、次の旅先の参考にしてみてくださいね。
山梨には各地に魅力的な温泉がありますが、実は、その中でも知る人ぞ知る、特上の穴場温泉が集まっているのが早川町。温泉好きなら一度はぜひ訪れてほしい場所なんです。
日本で一番人口の少ない町
早川町をご紹介
「早川町ってどこ?」「どんな町?」「都心からはどのくらいで行けるの?」など、早川町を知らない人も多いと思うので、まずは町について紹介していきます。
早川町ってどんなまち?
山梨県の最西端に位置する早川町は、南アルプスの山々に抱かれた、静かでゆったりとした時間が流れる町です。町土の約96%を森林が占めていて、どこにいても山の匂いや川の音がすぐそばにあります。また、早川町は「日本で一番人口の少ない町」としても知られています。人と自然の距離がとても近く、ニホンジカやカモシカ、サルなどの野生動物が当たり前のように姿を見せるのも、この土地ならではの光景です。早川町には、昔から山で暮らしてきた人たちの知恵や営みが今も静かに息づいていて、山とともに生きてきた時間がそっと残っているのも魅力。「日本で最も美しい村」連合にも加盟していて、見どころのある町です。
早川町へのアクセスは?
早川町は、かなりの山奥といった印象を抱かせてしまったかもしれませんが、意外と東京や静岡方面からのアクセスは悪くありません。以下で各方面からのアクセス方法の紹介をするので、参考にしてみてください。
東京方面から
電車の場合:新宿から JR中央本線で「甲府駅」へ向かい、JR身延線に乗り換えて「下部温泉駅」で降車。ここが早川町の最寄り駅です。駅前からは奈良田温泉行きの「はやかわ乗合バス」が出ているので、それに乗って町内に入れます。
高速バスの場合:新宿から出ている身延行きの高速バスに乗り、「飯富」で降車。そこから道路の向かいの歩道へ移動し、「はやかわ乗合バス」の「飯富ふれあいセンター」のバス停からバスに乗り換えて、早川町に入ることができます。
車の場合
新宿から中央自動車道を使い、「甲府南IC」または中部横断自動車道の「下部温泉早川IC」または「中冨IC」で降りるルートが一般的で、だいたい3時間ほどで到着します。
静岡方面から
電車の場合:静岡・清水方面からは JR身延線に乗り「下部温泉駅」で降車。駅前からは奈良田温泉行きの「はやかわ乗合バス」が出ているので、それに乗って町内に入れます。
車の場合:静岡からは中部横断自動車道を使って北上し、「下部温泉早川IC」で降りれば、そのまま早川町方面へまっすぐ向かうことができます。だいたい1〜1.5時間ほどが目安です。
早川町の温泉を
おすすめしたい3つの魅力
早川町の温泉は、ほかではなかなか味わえない魅力があります。ここでは3つの魅力ポイントについて紹介していきます。
源泉100%かけ流しが多い
早川町の温泉には、湧いたままの源泉をそのまま浴槽へ注ぐ「源泉100%かけ流し」の湯が多くあります。手を加えないぶん、温泉によって異なるそれぞれの湯の香りや色、肌にふれる時のテクスチャーなどがしっかりと感じられ、湯冷めしにくく入ったあとの余韻が続きます。源泉100%かけ流しでは、その日の気温や湧出量によって湯の表情が変わることも。自然の中で生まれたお湯の揺らぎを感じられるところも、早川町の温泉の楽しさです。
秘境感満載!ロケーションが良い
早川町の温泉は、道中のロケーションも醍醐味の一つ。南アルプスの山々に抱かれ、深い渓谷に沿って走る道からは、上流ならではの透明度の高い川の色や、季節ごとに移り変わる木々の表情がよく見えます。春のやわらかな緑、夏の濃い緑、秋の紅葉、冬の静かな山肌。その景色を追っているだけで、心がすーっと癒されます。温泉にたどり着くころには、いつもの生活のざわめきが遠ざかり、きっと非日常の世界へ踏み込んだような感覚になりますよ。
質がいいのに料金はリーズナブル!
早川町の温泉は、源泉100%かけ流しの施設が複数あって、お湯の質がとても良いのが特徴です。それにもかかわらず、料金設定は比較的リーズナブルなのが嬉しいところ。そして、あまり大きな声では言えませんが…町内の温泉は、場所とタイミングによってはほぼ貸切のように入れる時もあるんです。あまり混み合わず、静かにゆっくり温泉に浸かれるのは、とっても贅沢。
お湯の良さと、落ち着いた環境の両方がそろっているのは、早川町ならではだと思います。
源泉100%かけ流しの
町内温泉おすすめ3選!
早川町内の温泉は、どこも全部おすすめなのですが、その中でも特に大好きな温泉を3つご紹介します。この3つは、わりと町の中では近い場所にあるんですが、泉質はそれぞれ全然違うので、ぜひすべて回って入り比べて欲しいです!
奈良田温泉 白根館
奈良田温泉 白根館は、早川町の最奥の集落・奈良田にある源泉100%かけ流しの日帰り温泉です。建物に入るとクマやシカの剥製があって、山小屋を思わせるような木造の内装に、まず心踊ること間違いなし。ここでは、白根館のお湯の特徴や過ごし方などを紹介していきます。
体が驚くほど軽くなる「リセット湯」
白根館のお湯は、身体も心も、とにかく疲れきってしまった人におすすめの「リセット湯」。
町内の温泉の中でも特に塩気が強く、重厚感ある硫黄の香りも特徴的。お湯にゆっくり浸かっていると、体の奥に溜まっている疲れがぎゅーっと絞り出されていくようで、湯上がりは驚くほど体が軽くなります。まっさらになったような、あの清々しさはここならではだと私は思ってます。美肌の湯として知られているのもポイント。肌に吸い付くような、ほんのりぬめりを感じるお湯で、上がったあとは肌がパンと張る感じがあって、毎回嬉しくなります。また、白根館は「七不思議の湯」という愛称もあります。奈良時代に奈良田に約8年いらっしゃった孝謙天皇の祈りで湯が湧いたという伝承や、日によって湯の色や手触りが少し変わるという不思議さなどから由来しているそう。疲れ切った人でなくても、ぜひ入ってほしい温泉です。
おすすめの過ごし方
湯上がりには、受付横にあるセルフサービスの100円コーヒーで一息つくのがおすすめ。棚には陶器のカップとソーサーが並んでいて、その中から気に入ったものを選べるのが、また良きポイントです。お風呂上がりのこのほんのひとときは、日々の忙しさで鈍っていた自分の感覚がふっと戻ってくるようで、いつも幸せな気持ちになります。白根館のすぐ近くには、食事やカフェが楽しめる「古民家カフェ鍵屋」があります。また、このあと紹介する「女帝の湯」にも歩いて行けて、そこには温泉のほかに食堂やお土産コーナーもあるので、散策がてらぜひ立ち寄ってみてください。
DATA:
奈良田温泉 白根館
【住所】山梨県南巨摩郡早川町奈良田 344 ☎︎0556-48-2711
【営業形態】日帰り温泉(宿泊・食事サービスはなし)
【泉質】含硫黄ナトリウム塩化物温泉、源泉100%かけ流し
【営業時間】平日 10:30〜16:00(受付〜 15:30)/土日祝 10:30〜17:00(受付〜 16:30)
【定休日】ウェブサイトで要確認
【料金】大人(中学生以上) 1,000円、小人 500円、回数券(6回分)4,980円
【駐車場】あり 【併設】休憩室(要予約)
【HP】https://r.goope.jp/shiranekan/
奈良田温泉 女帝の湯
奈良田温泉 女帝の湯も、奈良田集落にあって、源泉100%かけ流しの日帰り温泉です。白根館からすぐ近くですが、お湯の性質は全然違うので、体験したらきっと驚くこと間違いなし!ここでは、女帝の湯のお湯の特徴と、おすすめの過ごし方を紹介します。
ゆるゆる心癒される「ほどけ湯」
女帝の湯は、心が弱っている時や自己肯定感が下がっている時に特におすすめの「ほどけ湯」。
お湯に身を沈めていると、「どんな自分でも大丈夫だよ」と受け止めてもらえるような安心感があって、ゆるゆると心がほどけていきます。お湯には湯の花がふわりと浮かぶこともあって、少し低めの温度でトロリとした美容液のようなテクスチャーが特徴的。浸かっていると、お母さんのお腹の中で羊水に浮かんでいるような、不思議な抱擁感があります。
ここも「美肌の湯」として知られていて、2018年の温泉総選挙では「うる肌部門」全国3位を獲得しています。私はここで1時間以上ゆっくり浸かっていたことがあるのですが、指先が全然シワシワにならなくて驚きました。しかも毎回湯上がりには肌のトーンが明るくなって、頬に指が吸い付くようなしっとり質感になるのを感じるので、テンションが上がります。
女帝の湯と白根館は、南アルプスの登山客が立ち寄ることも多い温泉で、夏の登山シーズンは混んでいることもあります。女帝の湯には大きな荷物を預けられるロッカーもあり、便利です。
※現在は施設改修工事で、2026年3月31日まで臨時休業中なのでご注意ください。
おすすめの過ごし方
女帝の湯の館内には、無料で使える座敷の休憩スペースがあり、お風呂上がりはここでひと休みするのがおすすめです。部屋は縁側と続いていて、山の稜線や奈良田湖の景色も一望できます。
館内には食事処もあり、ほうとうやワラビそば、ヤマメフライなど、土地の味が楽しめる品など豊富なメニューがそろっています。入り口のお土産コーナーで、並んでいる特産品や手仕事の品などを選ぶのも楽しい時間です。
すぐ近くには「古民家カフェ鍵屋」があり、スイーツやコーヒーでゆっくりするのもおすすめ。さらに「白籏史朗記念館」や「早川町歴史民俗資料館」、奈良時代に奈良田で過ごした女帝の孝謙天皇にゆかりのある「奈良法王神社」も歩いて行けて、奈良田らしい静かな文化に触れられます。
DATA:
奈良田温泉 女帝の湯
(2026年3月31日まで施設改修のため臨時休業中)
【住所】山梨県南巨摩郡早川町奈良田486-486 ☎︎0556-42-7382
【営業形態】日帰り温泉
【泉質】ナトリウム塩化物・炭酸水素塩泉、源泉100%かけ流し
【営業時間】9:00〜19:00(食事処は10:00〜18:00)
【定休日】なし※木曜は無人営業で「温泉のみ利用可」
【料金】町内:大人(中学生以上)300円、小人200円/町外:大人700円、小人300円(幼児無料)
【駐車場】あり
【併設】食事処、お土産コーナー、ロッカー
【HP】https://www.hayakawa-zaidan.net/
西山温泉 湯島の湯
西山温泉 湯島の湯は、露天風呂で山の迫力を間近に感じられる源泉100%かけ流しの日帰り温泉です。ここのお湯は素朴ですが、ずっしりとした重みがあって、大地のパワーが静かに伝わってきます。ここでは、湯島の湯の特徴やおすすめの過ごし方を紹介します。
パワフルな気持ちが湧いてくる「奮い立ち湯」
湯島の湯は、明日から仕事!という人や、これから頑張るぞ!という人にぜひ入ってほしい「奮い立ち湯」です。
無色透明で一見普通のお湯に見えるんですが、手を沈めてそっと揺らしてみると、どこか重さのあるような、ほんのり硬さを感じる湯ざわりで力強さがあります。湯島の湯に浸かると、洗濯したてのシャツがパリッと糊付けされて戻ってくるような、心身が整う感覚があります。ポジティブでパワフルな気持ちが自然と湧いてくるような温泉なので、湯上がりは元気100%です。
洗い場は少し変わっていて、温泉の源泉が絶えず流れている水場があり、そこから洗面器でお湯をすくって身体を洗うスタイル。湯船も、山の景色に自然と溶け込むような佇まいになっていて趣向が凝らされています。
町内の日帰り温泉では数少ない露天風呂で、湯船に入りながら迫力ある山肌を望めるのも、推しポイント。秋から冬は寒さ対策でカバーがかかるので、景色を楽しむなら春〜夏がおすすめです。
おすすめの過ごし方
湯島の湯の敷地内から少し歩いて河原へ降りると、東日本と西日本を分ける境界となっている「糸魚川–静岡構造線」の断層を間近で見られ、東と西で地層の色がくっきり分かれているのが確認できます。自然のダイナミックさを感じられる希少なスポットなので、ぜひこちらも立ち寄ってみてください。
同じ敷地内には木造のコテージもあり、休憩や宿泊に利用できます。宿泊は自炊スタイルで、好きな食材を持ち込んで調理が可能。夜は驚くほど静かで暗くなり、晴れていれば空には満天の星。早川の深い夜をじっくり味わえるので、一泊して過ごしてみるのもおすすめです。
歩いて行けるカフェやお店は近くにありませんが、国道52号線方面へ車で3分ほど走ると、全国屈指の巨樹「湯島の大杉」のある、パワースポット的な神社があります。ぜひ、この神秘的で驚くほど大きな杉と、一緒に写真を撮るのもおすすめです。
DATA:
西山温泉 湯島の湯
【住所】山梨県南巨摩郡早川町湯島1780-7 ☎︎0556-48-2468
【営業形態】日帰り温泉
【泉質】ナトリウム一流酸塩・塩化物泉・アルカリ性高温泉、源泉100%かけ流し、飲泉可
【営業時間】9〜6月:10:00〜18:00、7・8月:10:00〜19:00(売店は11:00〜16:00)
【定休日】木曜(祝日の場合は翌日休館)不定休もあり
【料金】町内:大人300円、小人200円/町外:大人700円、小人300円(幼児無料)、回数券(11回分)7000円(町外)
【駐車場】あり
【併設】売店、コテージ(休憩・宿泊)
【HP】https://hayakawa-zaidan.com/shisetsu-2/yushima
まとめ
早川町の温泉は、源泉100%かけ流しの贅沢なお湯があり、自然の力をそのまま感じられるのが魅力です。南アルプスの山あいに位置し、静かなロケーションでゆっくり過ごせるのも大きなポイント。道中の渓谷美や川の透明度など、訪れるだけで非日常の特別感を味わえます。
今回紹介した3つの温泉は、それぞれ個性があり、温泉好きにはぜひ巡ってほしい場所ばかり。疲れをリセットしたい日や、自然の中でゆっくり呼吸を整えたい時に、早川町はぴったりの温泉地です。都心からもほど良い距離で、日帰りでも泊まりでも楽しめます。旅の次の行き先に、ぜひ早川町の温泉を加えてみてください。
PROFILE
フリー編集者・ライター クシダユリ
南山梨の情報を発信するフリーペーパー『南山梨 HuMaN』の制作を手掛け、早川町の広報誌などにも関わっています。地域に密着したコンテンツ制作を通じて、地元の魅力を広めることに情熱を注いでいます。