市川三郷町の山あいから、楽しそうな声が聞こえてくる。「ざざっ」と土の上を滑るタイヤの音、軽やかに風を切る感覚。そして、思わずこぼれる笑い声。かつて静かな時間が流れていた公園は、いまやマウンテンバイクを楽しむための拠点として、新しい表情を見せている。その舞台をつくったのが「山守人(やまもりびと)」だ。
PICK UP
YAMANASHI MTB 山守人(やまもりびと)
マウンテンバイクを愛する仲間たちによるボランティア会員組織。初心者から上級者まで幅広いメンバーが集まり、総延長35km以上、最大標高差約1,200mのフィールドで活動している。MTB体験や自転車教室、山道整備や地域活動などを通して、地域と関わりながら山で走る環境を少しずつ広げている。
住所:山梨県西八代郡市川三郷町印沢947-3市川公園MTBフィールド
営業日/時間
夏期(3/16~11/14)火曜定休 営業時間9:00~18:00
冬期(11/15~3/15)火曜水曜定休 営業時間10:00~16:00
※定休日が祝祭日の場合は翌日が振替休日/GWやお盆は営業、年末年始休業は12/29~1/3
STORY
ゼロから始まった
MTBのフィールドづくり。
活動のスタートは17年前。代表の弭間(はずま)亮さんは、「当時、日本において、マウンテンバイクで山道を走れる環境はほぼゼロだったんです」と話す。なぜなら、山というのはかならず誰かの「所有地」であり「管理地」であり、どの場所にもいくつもの関係者が関わっているから。ひとつのMTBのルートを通すために、行政、地権者、地域の人たちなど、多くの人との合意が必要になるのだ。「ひとつひとつ関係者に説明をしても、最初の頃はほとんどが“マウンテンバイクは危険だから”の一点張りでしたね」。それでも彼らは、あくまでも正面から向き合い続けた。理解者を探し、小さな実績を少しずつ積み重ね、関係者との信頼を築きながら少しずつコミュニティを広げていった。ひとつのルートの許可を得るまでに4年、5年かかることもある。そんな気の遠くなるような時間を地道にかけながら、マウンテンバイクで山道を走れる環境づくりに奔走していった。
代表の弭間亮さんは、アウトドアブランドでの勤務を経て、一般社団法人「山守人」と株式会社山守人を創設。
市川三郷町の「市川公園MTBフィールド」。6ヘクタール近い広大なフィールドを、手作業で整備していった。
最新鋭のE-MTBから子ども用のMTBまで幅広くラインナップしているから、あらゆるレベルの人が楽しめる。
山を守るために、山で遊ぶ。
「山守人」という名前には、彼らの思想が込められている。「使わなければ山を守れる」ではなく「使うからこそ、山を守れる」。人が自然に山に入り、山で遊び、山を使うことで、その地形や自然をリアルに感じることで山の本当の姿がもっと見えてくる。そうやって人が山に関わり続けることで、人が山や自然の大切さを考え始め、結果として「山を守る」ことにつながるという考え方だ。それに人の目が増えれば、不法投棄や山火事の抑止にもなる。山から人を遠ざけるのではなく、きちんと関わりながら守っていく。大切な日本の環境資源である山を守り続けるために、そうした循環をつくることが、彼らの活動の本質的な目的なのだという。
マウンテンバイクで遊ぶほど、山や自然を「守れる」んです!
レベルに合わせて丁寧なスキル講習をしてくれるから、誰でも安心安全に楽しむことができる。ヘルメットや防具もレンタル完備。
HELLO
(MTB!)
SPOT
「山」へ入るための入口。
その活動の拠点が、市川三郷町のこの公園だ。かつては訪れる人が少なく、荒れかけていた場所を、指定管理という形で再生した。今では敷地内にたくさんのマウンテンバイクのコースが整備され、初心者からエキスパートまでレベルに合わせてバイクを楽しめる環境がつくられている。
「この場所でマウンテンバイクを楽しんでいただくことももちろんうれしいですが、ここは僕たちの壮大な目標を達成するための導入拠点でもあるんです」と弭間さんは言う。まずはたくさんの人にマウンテンバイクの楽しさを知ってもらい、スキルを覚え、この近隣の山で本格的にマウンテンバイクを楽しみながら「山」の本当の姿を知ってもらう。この公園は、そんな体験の入口なのだ。
公園にはビギナーから上級者まで楽しめるコースが用意されている。上級コースでは、山の中を駆け抜ける爽快な体験ができる。
走ることで「自然」との
距離が変わる。
また、この場所でのマウンテンバイク体験の魅力は、その自由度の高さにある。ツアーは完全カスタム型で、参加者の体力や経験に合わせた内容を提案してもらえる。電動アシスト付きのE-MTBも20台以上用意されていて、体力に自信がない人でも気負うことなく山というフィールドに入り、楽しむことができるのだ。ファミリー層や初心者グループはもちろん、わざわざ海外から訪れるゲストも少なくないという。ただマウンテンバイクで山を走るという体験そのものだけでなく、市川三郷周辺の美しい山の原風景の中に体ひとつで入り込み、手付かずの自然と一体となる感覚を楽しみに訪れる人もどんどん増えている。
マウンテンバイクで走ると、自然との距離が少しずつ変わっていく。森の匂い、土の感触、木々の間から差し込む光。ガイドの言葉に耳を傾けながら進むと、山道の背景にある歴史や自然のリズムも見えてくる。なぜこの道がここにあるのか。どんな人がこの山を使ってきたのか。風景はただの景色ではなく、物語を持つフィールドへと変わっていく。「本当に目から鱗でした」と話す参加者が多いのも、そのためだ。
レベルや人数などに合わせて、体験ツアーをカスタムできます!
MTBのコース整備に加え、公園の環境を守るための日々の管理も行っている。
地域の子どもたちも参加するイベントを開催するなど、さまざまな形でMTBと山を知る楽しさを広げている。
MTBという道具を通して山の利活用を広げ、地域課題の解決と地方創生を目指す。
ちょっと非日常で、
心地いい時間。
「山へ行くと、雑念が消えるんですよね」。弭間さんのその言葉が、この体験の本質だ。街の中には、情報がたくさんある。でも山の中では、風の音や鳥の声、タイヤが土を踏む感触といったシンプルでプリミティブな感覚だけ。走ることで、頭の中がどんどん静かになっていく。山を走る時間は、スポーツでもあり、リフレッシュでもあり、ちょっとした冒険でもあるのだ。
ちょっと非日常で、どこか心地いい。そんな特別な時間が待っている山守人のフィールドは、山と遊ぶ楽しさを思い出させてくれる場所だ。山を走り、風景を知り、土地とつながる。その体験が、南山梨の自然の魅力をもう一度感じさせてくれる。
「山守人」としての理念の実現はもちろん大切だが、MTBに乗る弭間さん本人がいちばん楽しそうなのが印象的だ。
MTB TOUR
マウンテンバイクツアーについて
仲間や家族、パートナー、ひとりでも参加できるプライベートツアー。体力やライフスタイルに合わせたカスタムツアーも可能。初心者でも安心のスキル講習付きで、レンタルバイクなどの装備も完備。フィールドは山梨県内で許可や了承を得て整備された壮大なエリア。詳しくは「山守人」の公式サイトをチェックしてください。
https://www.minamialpsmtb.com/