THEME:

信仰の道に栄え、時をとどめた宿場町

AREA:

日蓮宗総本山の身延山と霊場七面山を結ぶ参詣道の途中に、赤沢宿と呼ばれるかつての宿場がある。江戸時代にグループで身延山に歩いて参詣する「身延講」が盛んになったため、この参道は早くから整備されていたという。石畳のメインストリートは約800m続き、栗板の屋根や雨戸を備えた木造家屋が連なる町並みが、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。一歩、足を踏み入れると、ありし日にタイムスリップしたかのよう。

Featuring 赤沢宿

「重要伝統的建造物群保存地区」に指定された、美しい街並み。

中世のころから聖地身延山と霊場七面山とを結ぶ参道の宿場として知られた宿場町。中部横断道六郷ICから国道52号経由で約30分。日蓮宗の総本山である、身延山久遠寺と、七面山の敬慎院(けいしんいん)を結ぶ参詣道にある宿場。町を歩きながら案内してもらえるガイドツアーなども行っている。

赤沢宿をより深く楽しむために、まずは南アルプスプラザ総合案内所へ。
マップをもらって、散策スタート。

南アルプスプラザ総合案内所(早川町観光協会)
住所:山梨県南巨摩郡早川町高住650
電話番号:0556-48-8633
営業時間:9時〜17時
定休日:年末年始以外無休

赤沢宿のメインストリート。約800mにわたって石畳が続く。

PLACE

信仰深い身延講によって栄えた参詣道の宿場

七面山は古くから山岳信仰に基づく修験場であった。日蓮が身延山に久遠寺を開創してからは、守護神七面大明神が鎮座する山としても崇敬され、信者が身延山と七面山を行き交うように。その後、講中(参詣などを目的として組織された信仰者の集まり)の人気によって、身延講が盛んになったことから、道が整備される。その途中にある赤沢は、宿場として発展。30軒ほどの小集落で、そのうちの9軒が「大阪屋」「大黒屋」「玉屋」「江戸屋」といった旅籠屋を営んでいたという。

建物の合間を縫うように、細く急勾配で、カーブの連続する坂道が続く。

以前は霊場七面山までの急な参道を登る信者で溢れていたという。

TRACES OF HISTORY

急斜面のわずかな土地に伝統的建造物が建ち並ぶ

案内してくれたガイドの望月利和さんは生家が「大黒屋」で、平成15年までは宿を営んでいたという(ちなみに、赤沢集落の全戸が江戸時代に望月姓を名乗っていたのだとか)。現在宿泊できる形で残るのは、「江戸屋」の1軒のみ(2026年2月現在、休業中)。
「かつてに比べて人の流れは少なくなりましたが、家々の二階には参詣の証として常連客や講中が掲げた講中札(マネギ札)が残っています。斉藤、鈴木といった苗字から沢村建設などの会社名、日暮里、築地といった東京の地名まで、軒先に残ったさまざまな講中札から、当時のにぎわいを垣間見ることができます」

江戸末期の建物が残る貴重な町並みをご覧いただけます

旅籠の建物に残る講中札。講中が、定宿にしている旅籠に参詣の証、信仰の証として名前を残す役割があったと考えられる。

HELLO

(Histories)

歩いて味わう、赤沢宿の静かなひととき

赤沢宿の町並み自体は、30分もあればゆっくりと見てまわることができる。散歩の途中に訪れたいのは、無料で利用できる無人休憩所「喜久屋」。2階に上がって障子を開けると、赤沢集落や七面山を一望。ガラス窓がなく、風が抜ける室内と外の境が曖昧な空間では、日々の喧騒とかけ離れた穏やかな時間を味わうことができる。また、観光案内所を併設するカフェギャラリー「清水屋」では、旅籠を改装した古民家で、ドリンクや軽食をいただくことができる。土日祝日であれば、手打ちそばの店「そばどころ武蔵屋」が営業しているので、お昼の時間を目指して訪れるのもおすすめ。

歌人・若山牧水が赤沢宿に宿泊し、詠んだ歌の碑が4つあります

赤沢宿のガイドを行っている望月さん。大黒屋で生まれ育つ。

EVENT

絵灯篭のように赤沢宿を幻想的に照らす「油障子祭」

「これまで、建物の油障子に日本画を描いてライトアップする油障子祭を8月に開催してきました。油障子とは、風雨を防ぐために油紙を貼った障子です。これに地元の高校生が早川町の風景や動植物の絵を描いて建物の内側から光を灯し、築100年以上の建物をライトアップすると、集落全体を淡く照らす非常に幻想的な風景に。多くの人に喜んでもらったので、今後の開催はいまのところ未定なのですが、またぜひみなさんに見てもらいたいと思っています」

不定期で開催されてきた「油障子」は、この地区に流れる時間と、紡がれてきた歴史の層を静かに感じさせてくれる美しいイベントだ。次の開催は未定とのことだが、再びその灯りがともる夜を心待ちにしたい。
(写真提供:早川町観光協会)

幻想的な油障子の風景を、またいつかみなさんに見てもらいたいと思っています。

無料休憩所「喜久屋」の2階から七面山を望む。ガラス窓のない昔のままのつくりを堪能できる。

山道の道なりに連なって見える建物の屋根が印象的だ。

大阪屋の敷地内にある資料館。旅籠建築を活かし、赤沢宿の歴史や人々の暮らしを伝えている。

赤沢集落の女性5人で、土曜日・日曜日のみ営業している手打ちの蕎麦屋「武蔵屋」。

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