THEME:

大人のための絵本カフェ pieni nukka

山々の稜線を遠くに望む、南アルプス市の住宅街にひっそり佇む、絵本カフェ「pieni nukka(ピエニヌッカ)」。扉を開けると、壁を埋め尽くすように配置されたアンティークの本棚に、楽しげな絵本の背表紙がずらりと並ぶ。ここは、コーヒーと紙の匂いが香る、 大人のための絵本カフェ。

PROFILE

pieni nukka 白川清美 さん

南アルプス市出身。お子さんの小学校入学をきっかけに絵本の読み聞かせをはじめる。絵本の魅力に惹かれ、手元に増えた絵本を広く読んでもらおうと、絵本カフェをオープン。フェルト制作といった手仕事のワークショップも定期的に開催するなど、親子づれだけでなく大人がゆっくり落ち着ける居場所として親しまれている。

STORY

1通のファンレターから始まった絵本カフェの「種」

店主の白川清美さんは、南アルプスの出身。大学進学をきっかけに上京し、ご主人の仕事の都合で関西暮らしを経て地元である山梨に戻ってきたという。いちばん下のお子さんが小学校に上がったのをきっかけに、読み聞かせのボランティアを始める。毎週、図書館に通って絵本を選ぶうちに、手元に置いておきたい絵本を購入するようになり、気づけば家には絵本が増えていったという。

一冊の絵本から、すべてがはじまった。

白川さんが絵本に興味をもったきっかけは、20歳の頃に出会った一冊。東京で働いていたときに、たまたま本屋で手にした涌嶋克己さんの『ほっ』という絵本に感動し、ファンレターを送った。まだSNSのなかった時代、涌嶋さんからは「ありがとうございました」と返事が送られてきたという。その後、結婚して関西に住み始めていた白川さんは、阪神淡路大震災を経験。新聞で、復興活動の一環として絵を描いている涌嶋さんの記事を目にし、2通目のファンレターを書くことに。すると、やはり返事が来て、個展の開催を知る。早速出かけ、画集を買った際にサインとともにもらったのが、「福の種をまきましょうね」という言葉だった。

絵本という、幸せの「種」。

「それ以来、「私には、どんな福の種がまけるのかな」とずっと頭の片隅に思ってきました。私が山梨に戻ってきても会うことはなかったんですが、震災から30年経った2025年、神戸で涌嶋さんがライブペインティングをするイベントがあり、これはいかなくちゃと思って行ってきました。その時に、本を持って行って当時の話をしたところ、今度は『種を持っている』という言葉をいただきました。そのときに、読み聞かせをずっと続けてきたことや、絵本が手元にあることがぱっと頭に浮かびました。あ、私は絵本で種をまけている。このまま、絵本をライフワークとして続けていこうと思ったんです」。

ライブペインティングの時に涌嶋さんから「ほっ」のページにいただいたサイン。

絵本はまだまだ増加中。入りきらない分が自宅で眠っています

HELLO

(Books!)

A BEGINNING

暮らしの延長にあった、小さな挑戦。

こうして、子どもたちも手が離れて「好きなことに挑戦してみよう」と思えたタイミングと、白川さんの親戚が建てた家が空き家になっていて場所もあるという幸運も重なり、絵本カフェの構想を思いつく。
「自分自身がブックカフェに行くのが好きなんですが、この辺にはそういうお店がないから、ご近所の皆さんがくつろげる場所ができたらいいなと思って。でもまったくの素人なので、コーヒーのいれ方を習いに行ったり、夫と二人でリフォームをしたりして、1年半ほどかけて準備してオープンしました」

カフェメニューはハンドドリップコーヒーのほか、お手製のチーズケーキやガトーショコラといったスイーツが。

絵本が好きな方も、お話が好きな方も。ゆっくりしていってください

それぞれの時間が、心地よく重なる場所。

今では、近所の常連さんだけでなく、インスタグラムを見てカフェを目掛けて遠くから足を運んでくれる人もいるという。来店客の滞在時間は長く、絵本を静かに楽しみたい人は壁際の席へ。白川さんとの会話を楽しみたい人は真ん中のテーブル席へと、それぞれが思い思いの時間を過ごしている。子育てがひと段落してひとり時間を満喫する、白川さんと同世代の女性も多いとか。
絵本の読み聞かせを始めるきっかけになった息子さんはすっかり大きくなったが、小学校での読み聞かせはもうひとつのライフワークとして、13年目となる現在も続けている。店名のpieni nukkaはフィンランド語で「小さな綿毛」。白川さんが涌嶋克己さんからもらった“種”をまいたように、ふわりと笑顔の種が届きますようにと願いをこめて。

店の引き出しの中にも絵本が。大人も子どもも宝探しのように絵本探しを楽しんでいるそう。

PICK UP pieni nukka

絵本とコーヒーと。大人のための小さな居場所。

大人のための絵本カフェ。コーヒーを片手にページをめくりながら、忙しい日常の中で置き去りにしていた感情や、忘れていた感性と、静かに向き合う時間を。ここは、「心に届く一冊の絵本」と出会うための場所です。

住所:山梨県南アルプス市有野2710
営業時間:12:00~17:00
営業日:金・土・日曜日(※ときどき月曜日も営業)

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