洋菓子の名門アンリ・シャルパンティエが見出した山梨の桃、「夢みずき」の魅力。

美酒・美食体験
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最終更新日: 2025.08.15

洋菓子の名門アンリ・シャルパンティエが見出した山梨の桃、「夢みずき」の魅力。

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皆さんは「夢みずき」という桃をご存じでしょうか? フルーツ王国・山梨県で生まれたこの品種は、その名の通り夢のようにみずみずしく、切った瞬間に果汁が溢れ出すほどのジューシーさと、上品で華やかな香りが特徴です。

そんな夢みずきの魅力を最大限に生かした“至高のデザート”――「季節のクレープ・シュゼット〈山梨県産桃”夢みずき”〉」と「山梨県産桃”夢みずき”のショートケーキ」が、東京都の銀座にて期間限定で提供されていました。山梨県とのコラボレーション企画としてこのデザートを手がけたのが、かの有名な老舗パティスリーの「アンリ・シャルパンティエ」です。

本記事では、このコラボレーションに関わったアンリ・シャルパンティエのスタッフの皆さんにお話を伺いました。仕入れ・調理・接客を担う方々がそれぞれの現場で感じた夢みずき、その魅力を最大限に引き出すプロの技、さらには山梨県のフルーツの魅力について、たっぷりとご紹介します。

山梨県産のプレミアムな桃が、期間限定で見せた“夢”

アンリ・シャルパンティエは、1969年に兵庫県芦屋市で創業された老舗の洋菓子店です。創業者である蟻田尚邦がレストランでの修業時代に、「クレープ・シュゼット」(クレープをオレンジソースに浸して加熱し、最後にフランベして仕上げるデザート)を食べるお客様の笑顔に深い感銘を受けたそう。そして、「たくさんの人々に手軽にこのデザートを楽しんでいただきたい」という思いを持って同店を開業。以来、そのクレープ・シュゼットを看板メニューとしながら、「お菓子で世の中に”驚き”と”感動”を届ける」という信念のもとに、季節の味わいや産地の特色を活かしたスイーツを提供してきました。

由緒あるパティスリーのアンリ・シャルパンティエが、2025年7月より山梨県とのコラボメニューの第1弾として銀座メゾン店限定で提供したのは、「季節のクレープ・シュゼット〈山梨県産桃”夢みずき”〉」と「山梨県産桃”夢みずき”のショートケーキ」の2品です。

「季節のクレープ・シュゼット〈山梨県産桃”夢みずき”〉」は、季節限定商品として毎年人気の「クレープ・シュゼット 季節のフルーツ添え(白桃)」を、山梨県産の「夢みずき」を使用してアレンジしています。クレープにたっぷりと乗っている夢みずきは、皮をむいて冷凍させたものを提供する直前にソースに絡めながら温めているため、外はとろけるような柔らかさ、中はシャーベットのような歯触りで、食感のアクセントを楽しめます。温かなデザートでありながらも、暑い夏に華やかな涼しさを感じさせてくれる逸品です。

「山梨県産桃”夢みずき”のショートケーキ」は、スポンジの間にバニラとレモン果汁のシロップでコンポートした夢みずきをサンドしており、天面にはマリネした夢みずきを美しく飾り付けています。アプリコットと桃の洋酒を効かせた隠し味が上品な余韻を添えていて、フレッシュな桃と軽やかなクリームが織りなす贅沢な口どけには、思わずほほが緩んでしまいます。

仕入れのプロが語る山梨フルーツの「供給力」と「品種の豊富さ」

夢みずきの魅力が存分に感じられるこれらのコラボメニューには、多くのプロフェッショナルたちが関わっています。まずは、アンリ・シャルパンティエの仕入れを担当している能勢博行さんにお話を聞きました。さまざまな産地の素材と日々向き合っている目利きのプロには、山梨県産のフルーツはどのように見えているのでしょうか。

能勢さん(以下、敬称略)「山梨県産のフルーツの大きな特長は、『安定した供給力』にあると捉えています。昨今は温暖化などの影響を受けて、国産フルーツは供給が不安定になりがちです。ただ、山梨県はフルーツの生産量が日本一というだけあって、必要な量が多くても仕入れがしやすいと感じています。
安定した供給があるからこそ、私たちは全国のお客様に高品質なスイーツを、品切れを出さずに継続して提供できます。品質の高さはもちろんのこと、山梨県のフルーツはその点でとても頼りになる存在ですね。
また、生産している品種数も豊富で、ほかの産地では取り扱いのない希少な品種が多いのも魅力です。仕入れ担当としては、私たちのブランドとより相性のよい素材はないかと探し続けているので、山梨県産のフルーツには日頃から注目しています」

今回のコラボメニューで使用した「夢みずき」について、能勢さんは一目見た瞬間からその品質の高さを感じ取れたと評価しています。

能勢「初めて実物を見たときに、まず見た目がいいなと感じました。外のフォルムも大玉でずっしりとした重厚感があり、切っても実が締まっていて発色もよく、存在感があるなと。スイーツの材料としては、味もさることながら、こうした見た目のよさも大事な要素になります」

シェフが手に取る前に、素材としての「夢みずき」のポテンシャルを余すことなく引き出す――それが能勢さんの大きな使命です。そのために最もこだわったポイントは「仕入れのタイミングと追熟の期間の設定」だといいます。

能勢「アンリ・シャルパンティエは『良き素材と、良き製法で、最大限の美味しさをお客様に届けること』にこだわっています。夢みずきは追熟すると甘味が増して、食感も柔らかくなります。厨房にベストな素材を届けるには、いつ入荷してどのくらいの追熟期間を置くか……そのタイミングを見極めるために、シェフと共に試食を繰り返しながら、桃の状態をつぶさにチェックしてきました」

素材を主役に。シェフが追求した「夢みずき」の魅力を生かすメニュー開発

能勢さんから最高の素材を受け取って、今回のコラボメニューの開発に臨んだのは、アンリ・シャルパンティエのシェフ、小谷一隼さんです。洋菓子づくりのプロは「夢みずき」の魅力を、どのように捉えたのでしょうか?

小谷さん(以下、敬称略)「夢みずきは追熟するごとに香りが引き立つんです。華やかさが増して、味わいも上品に仕上がっていく。まさに“プレミアム”という形容が相応しいなと感じました。生のままで十分に美味しいだけに、この魅力をさらに引き立てるには、どんなスイーツにアレンジするのがいいか、かなり悩みましたね」

夢みずきの魅力をデザートとして最大限に生かすために、さまざまなレシピ案をつくり、検討を重ねた小谷さん。最終的にコラボメニューとして選んだのは、店が最もこだわりを持って提供している「クレープ・シュゼット」と「ショートケーキ」でした。

小谷「季節のクレープ・シュゼットは楽しみにしている馴染みのお客様も多く、夢みずきの素晴らしさを広く知ってもらうにはぴったりの舞台だと思いました。通常はソースにオレンジのリキュールを使っているのですが、今回は夢みずきの瑞々しさを引き立たせるために、アプリコットリキュールでより一層香り高く仕上げています。

ショートケーキも、当店のこだわりの詰まった自慢の商品です。タルトなども検討しましたが、夢みずきが主役として輝くのは、できるだけシンプルで素材の風味を邪魔しないような舞台だと考え、ショートケーキにしました。こちらも夢みずき本来の味わいを楽しんでいただけるように、クセのないシンプルな生クリームを採用しています」

接客のプロが目にした、お客様の新鮮な感動

シェフが素材への深いこだわりを持って開発したコラボメニューは、実際にお客様にどのように受け入れられたのでしょうか。銀座店で接客を担当している石川慶子さんは、「提供期間が短かったにもかかわらず、想像以上に多くの方にご来店いただいた」と語ります。

石川さん(以下、敬称略)「クレープ・シュゼットもショートケーキも、多くのお客様から好評をいただいています。美味しさはもちろんのこと、夢みずきは色づきがよい品種で見た目が愛らしく、デザートとしても“映える”なと感じていて。コラボメニューを注文した方々も、皆さんお写真をたくさん撮っていましたね」

クレープ・シュゼットはワゴンサービスで提供されるメニューで、接客担当が最後の仕上げを客席の目の前で行います。このアンリ・シャルパンティエならではのサービスが、お客様にとって格別な体験となるように、石川さんは細心の注意を払っています。

石川「調理ではありながらも、それ自体が“魅せるパフォーマンス”になるように意識していますね。お客様にこの時間をめいっぱい楽しんでいただけるように、当店の歴史やこだわりのポイント、使われている素材の魅力などを語りながら、ショーとして成立するような所作で仕上げていきます」

時にはお客様とコミュニケーションを取りながら、華麗な手さばきでサーブをしている石川さん。今回のコラボメニューの提供中、とある家族連れのお客様のやり取りがとても印象に残っていると話してくれました。

石川「クレープ・シュゼットとショートケーキを食べながら、ご両親がお子さんに『やっぱり、山梨のフルーツは美味しいよね』『今度、産地にも行ってみようか』と話されていたんですね。もしかしたら、ここで夢みずきに出会ったことがきっかけになって、今ごろ山梨に家族旅行に行かれているかもしれません。そうなっていたら、私たちとしても嬉しいなと感じます」

生産者とのつながりを大切に、持続可能な関係を目指して

お客様の最高の時間を演出するために、仕入れ・調理・接客それぞれのプロフェッショナルたちが、誇りを持って仕事に打ち込んでいるアンリ・シャルパンティエ。今回の山梨県とのコラボメニューの開発・提供を通して、現場の皆さんは山梨県産フルーツにどのような可能性を感じたのでしょうか。
接客担当の石川さん、仕入れ担当の能勢さんは、山梨産フルーツの魅力をよりダイレクトにお客様に伝えるために、さまざまなアプローチの可能性を模索しています。

石川「クオリティの高いフルーツだからこそ、生のままの瑞々しい香りや食感を新鮮な状態で楽しんでもらいたいですよね。もし希望されるお客様がいらっしゃったら、むきたて・切り立てのフルーツをそのまま提供するようなサービスもあってもいいかもしれません。

また、山梨県産のフルーツは品種が豊富なので、複数の品種を食べ比べできるようなメニューがあったら、お客様としては楽しみの幅がグッと広がるかなと感じています。これから秋にかけて旬を迎えるフルーツがどんどん増えてくるので、第2弾以降のコラボレーションもすごく楽しみです」

能勢「安定した供給力があるからこそ、さまざまな商品に応用できる可能性が拓けてきますね。今回のコラボは2品でしたが、次は品目を増やしたり、焼き菓子などにも活用したりと、より多様な展開ができたらいいなと考えています」

シェフの小谷さんは、あらためて山梨県産フルーツの品質の高さを称えつつ、今後は生産者や産地との連携を深めていきたいと意気込みます。

小谷「私たちが皆さんにお届けするスイーツは、良質な素材をつくり続ける豊かな土地と生産者さんがあってこそ生まれるものです。産地の風土や生産者の思いを理解すれば、もっとよりよい形で素材を生かせるレシピを考案できるかもしれません。これからはより持続的な関係で、より魅力的なスイーツをお客様に提供していくために、現地に直接足を運んだりもしながら、生産者さんの声に積極的に耳を傾けていきたいなと思っています」

まだまだ続く、山梨フルーツ×名門パティスリーの至福のコラボ

アンリ・シャルパンティエは創業以来、「良き材料」へのこだわりと探求心を大切にしています。今回のコラボレーションの背景にも、単に高品質な材料を使うだけでなく、その材料が生まれる背景に思いを馳せ、魅力を最大限に引き出そうとする徹底したこだわりが随所にあふれていました。彼らによってアレンジされたコラボメニューによって、山梨県産の「夢みずき」は“驚き”と“感動”と共に、たくさんのお客様に届けられたのです

山梨県とアンリ・シャルパンティエのコラボレーションは、これで終わりではありません。第2弾として、山梨県産のブドウを使用した特別なデザートをアンリ・シャルパンティエ銀座メゾンで提供(8月下旬以降の予定)するほか、山梨県立博物館で「Museum café Sweets lab葡萄屋kofu」を運営する株式会社プロヴィンチアとの協働による、県産果実の加工品を使用した新たなスイーツ商品の開発・販売(時期未定)などを計画しています。

山梨が誇るハイクオリティなフルーツと名門パティスリーのこだわりが生み出す、ここでしか味わえない特別なスイーツを、ぜひ体験してみてはいかがでしょうか?

アンリ・シャルパンティエについて詳しくはこちら

文・西山武志、写真・朝岡英輔

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