コロナ禍の現在、日本中から注目されている「やまなしグリーン・ゾーン認証」をご存知でしょうか?「やまなしグリーン・ゾーン認証」とは、山梨県が感染症対策に強い事業環境づくりを支援する制度のこと。支援の対象は、山梨県が定めている感染症予防対策の基準を満たした施設です。
このグリーン・ゾーン認証は今、全国的に大きな評価を受けています。
参考:全国モデルとなった「やまなしグリーン・ゾーン認証制度」
コロナ禍の2021年4月。政府は「飲食店で実施している感染防止対策を、第三者が認証する制度」を導入するよう、各都道府県知事に対し通知しました。その際の参考モデルとして挙げられたのが、「山梨モデル」と呼ばれるやまなしグリーン・ゾーン認証です。
この「山梨モデル」は、感染症対策と経済の両立を目指す理想的な認証制度として、日本全国で大きな注目を集め、現在各地で創設されている第三者認証制度の先駆けとなりました。
その後も「やまなしグリーン・ゾーン認証(山梨モデル)」は全国に広がったり、全国知事会で最優秀賞の独自政策に選ばれたりと、高い評価を受けてきました。さらに、その成果を如実に表すデータも出ています。コロナ禍における生活スタイルや経済、社会の変化の中での山梨県の取り組みは実際どういう効果があったのか、特徴的なデータをいくつか紹介します。
INDEX
グリーンゾーン認証の実施後、都道府県別の修学旅行先人気ランキング2位に急上昇
人気の修学旅行先として、山梨県は中学校の修学旅行先人気ランキング(令和2年度)で京都府に次ぐ、「第2位」と急進しました。
2019年の13位から大幅にランクアップしています。
その理由を山梨県感染対策センター(山梨県CDC)グリーン・ゾーン推進グループの森田考治主査は、以下のように語りました。
「自然あふれる環境で、密を避けた体験活動ができる、という側面もあります。しかし、ここまで順位が上がった一番の理由は、グリーン・ゾーン認証による安全性への評価でしょう。実際、隣接県に比べ感染者も抑えられていました」
森田主査は、そう言って胸を張ります。
「『修学旅行先として人気の山梨県』となると、安全性の強いアピールになります。その結果、観光客を呼び込む力が増える。観光客が増えれば、その分地元のホテルや飲食店が潤う。「修学旅行先ランキング」という、たったひとつの要因が、どんどん効果を広げていきました」
新型コロナ関連の経営破綻比率が全国最小!コロナ禍でも経済活動を持続
特筆すべきは修学旅行だけではありません。
山梨県はコロナ関連の経営破綻比率も47都道府県中47位と、全国最小です。
「山梨県は、感染者数が爆発的に増えた東京都と隣接しているにも関わらず、企業の経営破綻比率を低く抑えられました。1位の東京都と比べ、約5分の1です」(森田主査)
飲食店サイトの閲覧数の減少も低数値。グリーン・ゾーン認証により、外食を含む日常生活の維持も
コロナ禍において全国的に飲食店の営業自粛・時短営業の要請があり、外食の機会が大きく減少しました
ここで、内閣府が作成している経済効果データをご紹介します。
内閣府が作成している「V-RESAS(ブイ・リーサス)」は、地方創生における自治体の取り組みを情報面から支援するべく作成されたサイト。コロナ禍における地域経済に関するデータが掲載されています。
「V-RESASの中で『飲食店情報の閲覧数』を集計したデータがあります。『2019年以降の同週の情報閲覧数の増減』を確認でき、つまり『コロナ前の同じ頃に比べ、飲食店のWEBサイトを見る機会がどれくらい減ったか』がわかります。これによると、山梨県の閲覧数は30.2%減っていますよね。かなりの減少に感じますが、実は近隣の自治体よりも減少率を抑えられているのです」(森田主査)
山梨県は近県に比べ、コロナ禍でもそれほど外食を控えずに済んだ = 日常生活の維持に一定の効果があったことがわかります。
参考:V-RESAS(ブイ・リーサス)
グリーン・ゾーン認証施設内での感染連鎖は、たったの1%
最後にご紹介するのは、こちらのデータです。
グリーン・ゾーン認証を受けている施設において「感染者が客として利用していた」「感染者が従業員として従事していた」のどちらかに当てはまる事例は882件ありました(2022年6月10日時点)。その感染者からクラスターが発生した例は、10件のみ。たったの1%です。
「コロナのまん延防止等重点措置では『飲食店に時短営業を要請し、人流を抑制することで感染者数を減らす』という方法が取られていました。しかし、私たちはこのデータによって、飲食店は感染の原因になっていないと確信しました。協力金を支払い時短営業を要請したところで、コロナ対策にはならないと考えたのです」(森田主査)
施設内でこれだけコロナ感染を抑えられていることがわかり、山梨県は2022年以降、まん延防止等重点措置の発出を国に要請することなく難局を乗り切りました。
森田主査は「施設に時短営業を要請せずに済み、感染症対策をしっかりおこなって営業を続けた飲食店から、感謝の声がたくさん届きました」と話します。
県が伴走することにより、店舗のリスクを軽減する
グリーン・ゾーン認証制度について、森田主査はこう振り返ります。
「店舗は今まで、ずっと『うちのお店から感染者が出たらどうしよう』『風評被害を受けたらどうしよう』とビクビクしながら営業していました。認証制度を取り入れることによって、その不安を軽減できたと思います」
グリーン・ゾーン認証を受けていれば、例えば『山梨県の基準通りに感染対策を実施していたが、クラスターが発生してしまった』という事態が起きても『悪いのは店舗ではなく、山梨県の基準ではないか』と考えられます。
「グリーン・ゾーン認証マークを交付する場合、山梨県では一軒一軒の店舗を訪問しています。行政と店舗が同じ土俵に立ち、一緒にリスクを背負って進めていくことを心がけていました」
今後、未知の感染症が発生する可能性もあります。山梨県が目指すのは、コロナ禍と同様の事態が起きたとしても、感染拡大防止と経済活動を両立できる「超感染症社会」です。
宿泊施設を対象に、上位認証として始まった「やまなしグリーン・ゾーンプレミアム認証」は、超感染症社会を実現するためのいわば「二の矢」。山梨県の挑戦は続きます。