山梨県のスタートアップ支援事例を紹介 長期的で切れ目のない、手厚いサポートが特徴

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最終更新日: 2024.11.14

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山梨県のスタートアップ支援事例を紹介 長期的で切れ目のない、手厚いサポートが特徴

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最終更新日: 2024.11.14

山梨県では、これから成長を加速していくスタートアップを全力で支援しています。ほかにはない手厚い支援体制があり、切れ目なく続くサポートが特徴的です。

当記事では、山梨県のスタートアップ支援の内容と事例を紹介します。事業を成長させたいスタートアップの方は、ぜひご一読ください。

山梨県におけるスタートアップの支援体制

山梨県では、下記のようなスタートアップ支援をおこなっています。

  • 中高生の起業家精神を養うアントレプレナーシップ教育
  • 起業支援や起業資金援助
  • 事業成長を加速させるアクセラレーションプログラムの提供
  • スタートアップと県内企業のオープンイノベーション促進 など

支援と支援の間に隙間ができて行き詰まってしまうスタートアップが出ないよう、切れ目のない支援体制を構築している点が特徴的です。

さらに、スタートアップへの金銭的支援として「資金調達サポート事業」があります。スタートアップは自治体や民間企業が出資するファンドから支援を受けるのが一般的ですが、山梨県の場合は県の一般会計で出資金を計上し、そこから直接出資する仕組みになっています。

「スタートアップに対して県が直接出資するのは、日本全国を見ても山梨県だけです。県の一般会計から出資するため、山梨県が株主の立ち位置になります」と話すのは、山梨県産業政策部 スタートアップ・経営支援課の森田さん。

「一般的な補助金はお金を1回渡して終わりです。しかし、県からの出資となると話は違い、マスコミや県議会、県民からも注目されるため、スタートアップと継続的な関係性をつくっていきます。出資したスタートアップの経営が行き詰まって事業を断念することのないよう、県としても成長をサポートしています」

金銭的な支援のみの短期で終わる関係性ではなく、その後もスタートアップの課題や要望に合わせて伴走支援するところが特徴的です。スタートアップに対して、ここまで献身的な支援をする自治体は、かなり珍しいと言えます。

山梨県のスタートアップ支援策 画像提供:山梨県産業政策部 スタートアップ・経営支援課

山梨県がスタートアップ支援に力を入れる理由

スタートアップが県内で活躍できるようにするのはもちろん、県内企業との共創を促し、発展させていくことも視野に入れて手厚い支援をしていると森田さんは言います。

「スタートアップのピッチを聞くと、県内企業の経営者や県職員でも思いつかないような革新的なアイデア・技術のひらめきが多いと感じています。その新しいひらめきを県内産業に積極的に取り入れることによって活性化や発展につながると考え、スタートアップ支援に力を入れています。スタートアップと県内産業の両方をより良くしていきたいです」

スタートアップの支援事例

山梨県では、さまざまなスタートアップを支援していますが、今回はその中から株式会社TomoBiz(以下、TomoBiz)が提供する「REMOTAX(以下、リモタックス)」の事例を紹介します。同社は令和5年度アクセラレーションプログラムの採択企業です。

山梨県のアクセラレーションプログラムは、経営的な基礎知識や組織のこと、ピッチの仕方などを学び、県内企業とマッチングするものです。

スタートアップ・経営支援課の森田さんは、TomoBizを採択した理由を次のように話します。

「山梨県には訪日外国人が多く訪れ、一部ではいわゆるオーバーツーリズムのような状態も見られます。賑わっている反面、観光客1人あたりの消費額が少ないという課題があります。東京から近いこともあってアクセスしやすいですが、富士山を見たあと、お金を落とさずにそのまま別の県へ移動してしまう……。リモタックスは、山梨県の抱える課題を解決する仕組みのひとつとして有効だと考えて採択しました」

株式会社TomoBizが提供する「REMOTAX(リモタックス)」とは

リモタックスのサービスイメージ 画像提供:山梨県産業政策部 スタートアップ・経営支援課

TomoBizが提供するリモタックスは、日本の小売店が訪日外国人向けに免税販売するためのスマートフォンアプリです。面倒で複雑な免税手続きをリモタックスが代行することで、小売店の業務負担を軽減します。

小売店は、リモタックスのアプリからパスポートとレシートの写真を撮影し、合計金額を入力したら送信するだけ。アプリの導入時に費用が10,780円(税込)かかりますが、その後のランニングコストは0円です。通常は必要となる高額な免税システムを導入することなく免税販売を実現させ、コストも最小限に抑えられるメリットがあります。

同社の代表取締役、崔 彰桓(チェ チャンファン)さんは「リモタックスは免税業務を詳しく知らなくても、アプリで簡単に免税販売を始めることができるサービスです。このように免税業務を代行するサービスは、ほかにありません。加盟店には高齢の方もいらっしゃいますが、簡単に使えるような仕組みにしているので使い方についての問い合わせはほとんどありません。新しい従業員が入ったときにも10分程度で使い方が理解できるので、使用方法を教える手間がかかりません」と導入のしやすさと小売店に負担がない点をアピール。

同社がどこで利益を得るかというと、訪日外国人に還付する際に免税手数料をリモタックスが受け取る仕組みを採用しています。

「免税販売する小売店にもコストや業務の負担がなく、訪日外国人はお得に買い物ができる。我々にも手数料が入ります。『三方よし』という日本語が大好きで、まさにそれを形にした免税代行サービスです。将来的には商店街全体で免税販売ができる『免税タウン』をつくりたいと考えています」と崔さんは話してくださいました。

山梨県がリモタックス普及のために販路開拓を支援

アクセラレーションプログラムでビジネス知識を習得したあと、スタートアップは県内企業とのマッチングがあります。TomoBizのリモタックスも同様に、県からの伴走支援によって導入先を見つけることができました。

スタートアップ・経営支援課の森田さんは「多くのインバウンド観光客が訪れる富士北麓地域を中心に進めていこうと考えました。ワイン酒造組合や商工会、観光連盟などに崔さんと一緒に行って、免税販売を簡単に実現できる免税代行サービスがあることを説明してまわりました。そこで興味を持った県内企業に訪問するところまで付き添います」と当時を振り返ります。

TomoBizは東京に拠点を置く企業のため、新たな販路開拓には相当な労力が必要です。まったく山梨の土地柄を知らないスタートアップですが、県の担当者が同行することで話がスムーズになるケースもあります。

説明会の様子 画像提供:山梨県産業政策部 スタートアップ・経営支援課

実際に県から支援を受けたTomoBizの崔さんは次のように話されました。

「どこで営業したら一番可能性があるかを熱心に考えてくれました。組合に同行してもらったときには、担当の森田さんがリモタックスのことを事前に勉強してくださっていて、ご自身の言葉で企業の方に紹介してくれました。本気でサービスを広めていきたいという気持ちが伝わってきて本当に感動しました。そのおかげで私の説明も滞りなく受け入れてもらえ、免税販売を開始することができました。

県からのサポートがなければ、まったく面識のない企業に営業しても断られていたと思います。

別のところでスタートアップ支援を受けたこともありますが、短期間の関係に終わってしまい、ここまで手厚いサポートではありませんでした。山梨県の場合は、アクセラレーションプログラムが終わったあとにも相談したり企業を紹介してもらったりとサポートをしていただいています。何かあったときに気軽に相談できる関係がつくれたので、山梨県のスタートアップ支援に応募して良かったと思っています」

マッチングした企業の売上増加に貢献

山梨県の担当者とTomoBizの崔さんが販路開拓のために訪れた場所のひとつが山中湖の商工会。そこでリモタックスの導入先となる株式会社凛花とマッチングしました。

株式会社凛花は、山中湖畔で日本ワインを数多く取り揃える小売店を経営しています。山中湖は観光地のため、訪日外国人が多く訪れていますが、リモタックス導入前はワインボトルの購入がほとんどなかったそうです。

「外国のお客様は体験を重視しているためワインの試飲はしていただけるのですが、そのあとの購入はほぼありませんでした。お店に来ていただけるのに購入の機会を逃しているのは、もったいないなと思っていました」と話すのは、株式会社凛花の高村達也さん。

免税店になる検討もしたそうですが、システムの費用が高額で、税務署へ申告する手続きの煩雑さもあって導入をためらっていました。

「山中湖の商工会でリモタックスを紹介していただいて、費用の安さと簡単な操作で手続きが完了するところに魅力を感じて導入を決めました。他社のシステムも調べましたが、ここまで安いところはありませんでした」と高村さん。

実際にリモタックスを使ってみて、煩雑さはないとのこと。訪日外国人は免税店での買い物に慣れている方が多く、アプリの使い方さえ覚えてしまえばスムーズな対応ができるそうです。

リモタックスを店舗で活用する様子 画像提供:株式会社凛花

リモタックス導入後の変化も高村さんに伺いました。

「店頭に『TAX FREE』と書いたサインボードを掲示したところ、訪日外国人のお客様がとても多くなりました。外国の方にも優しい店という印象があるのかもしれません。試飲からワインボトルの販売にもつながり、売上が増加しています」

店先で免税店であることをアピール 画像提供:株式会社凛花

リモタックスの導入によって免税販売ができるようになり、さらにプラスの効果も生まれています。山梨県から紹介があったことに関しては「紹介がなければリモタックスを知らないままでした。地方の小さなお店だと免税店になるハードルが高いので、助けていただけて良かったと思っています」と高村さんは話されました。

これから山梨県のスタートアップ支援を受けるには?

これから山梨県の支援を受けてみたいスタートアップもいるのではないでしょうか。まずは話を聞いてみたいという方は「STARTUP YAMANASHI」のサイト内にある「ワンストップ窓口」からお問い合わせください。

「ワンストップ窓口」へのご相談はこちら

ワンストップ窓口には、全国のスタートアップから相談が来ています。気軽に相談してみてはいかがでしょうか。

スタートアップと県内企業へ同行したときの様子 画像提供:山梨県産業政策部 スタートアップ・経営支援課

山梨県からの支援内容は、ビジネスプランによって異なります。アクセラレーションプログラムで知識面の増強や企業とのマッチングを実現するものもあれば、オープンイノベーションを促進したり、資金を出資したりするなど、さまざまな支援策が用意されています。

スタートアップ・経営支援課の森田さんは「気軽に相談してもらい、アクセラレーションプログラムや共創促進事業などにぜひ応募していただきたいと思います。採択したスタートアップのほうが、短期ではなく長いお付き合いができるからです。ピッチなどでビジネスプランを聞かせてもらえると、県としても伴走支援がしやすくなります」と話されました。

各事業への応募に際し、山梨県に拠点を置く必要はありません。山梨県のフィールドを使って事業展開を考えている方は、ぜひ応募してみてください。

森田さんは「スタートアップの商品・サービスを県内で展開したところ、課題の解決につながった事例がいくつもあります。山梨県の課題や産業と親和性があり、成長が期待できるビジネスプランを持つスタートアップには我々も全力で支援するので、ぜひ来ていただきたいです」と各支援事業への応募を呼びかけました。

スタートアップ側の視点でTomoBizの崔さんは「自分のビジネスが山梨で展開できる可能性があるか見極めて、どのように攻めていったらいいか具体的な戦略があると事業がより加速するのではと思います。明確な戦略があれば『ここに繋いでください』というふうに支援をお願いしやすくなります。支援体制はありますから、どんどん頼って活用していくといいですよ」と、これから応募するスタートアップにアドバイスしています。

スタートアップの支援拠点が新たにオープン予定

画像提供:山梨県産業政策部 スタートアップ・経営支援課

山梨県では、令和7年11月にスタートアップの支援拠点がオープンする予定です。この拠点には以下の施設が入ります。

  • 3Dプリンターやレーザーカッターを常備するものづくりスペース
  • 撮影スタジオ
  • 県内企業やスタートアップ、学生など集うカフェ
  • 飲食系企業が活用できるチャレンジキッチン
  • コワーキングスペース
  • 11社が入居できる個室のオフィス

さまざまな人のコミュニティ形成ができたり、オープンイノベーションを加速したりするような施設になる予定です。

「我々の伴走支援に満足していただけたら、支援拠点に入居して県内で事業を拡大してもらうこともできます。いろいろな人たちが交わり、新たな事業が生まれるような場所にしたいと思っています」とスタートアップ・経営支援課の森田さんは話されました。

新しい支援拠点が完成したら、ぜひ訪れてみてください。

まとめ

山梨県のスタートアップ支援を事例も交えながら紹介しました。ほかの自治体にはない、山梨県ならではの手厚いスタートアップ支援があります。

令和6年11月現在、「資金調達サポート事業」に挑戦したいスタートアップを募集中です。事業資金の支援を受けたい方は、ぜひ応募してみてください。

令和6年度資金調達サポート事業の実施について

資金調達サポート事業に採択されたあと、アクセラレーションプログラムなど別のスタートアップ支援に挑戦することも可能です。切れ目のない長期的な支援を活用して事業を成長させたいスタートアップは、応募してみてはいかがでしょうか。

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