山梨の豊かな自然が育んだ鹿肉のジビエ、そして、有機栽培で丁寧につくられた野菜。その背景には、生産者たちの並々ならぬ情熱とこだわりが詰まっています。
「空気や水がきれいだから良いものができる」
・・・だけでは語り尽くせない、山梨だからこそできる高付加価値化の秘密と、人々を魅了する理由を探る。
本記事では、業界関係者に向けた産地見学会の取材を通じ、上質で心おどるやまなしの美酒・美食体験の土台を支えるエシカルな農畜産物と“熱き生産者”たちの想いに迫りました。
INDEX
八ヶ岳ジビエの真髄に迫る!明野ジビエ肉処理加工施設で見た“こだわりの鹿肉”
まず見学に訪れたのは、やまなしジビエ認定施設の一つ、明野ジビエ肉処理加工施設(八ヶ岳ジビエ)。ここでは、五味誠さん・舞さん夫妻(誠さんは自らも猟を行なっている)が、北杜市の峡北猟友会と協力しながら、鹿肉を衛生的に処理・加工しています。八ヶ岳の澄んだ水と豊かな山の恵みで育まれた良質な鹿肉づくりの現場は、参加者たちにとって新鮮な驚きの連続でした。
施設見学中、五味さん夫妻は鹿肉の加工工程について熱く説明しました。まず鹿の体温や体重を測定し、洗浄と皮・臓器の除去を行ったのち、別の部屋でさらに洗浄と冷却を素早く実施。そして3~4日間冷蔵庫でじっくり熟成させることでうまみを引き出し、部位ごとに最適な状態にカットして出荷します。
誠さんは「すべて私が放血(血抜き)を行うことで品質を安定させています。八ヶ岳の鹿は山の豊かな食べ物をたっぷり食べているため、筋肉質で味が濃いと評判なんですよ」と、ジビエにかける熱いこだわりを語りました。
参加者は五味さん夫妻の説明を聞いた後、加工した鹿肉を見て、実際にカットしたり触ったりして肉の状態を確かめ、その味わいに期待を膨らませます。

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山梨という土地だからこそできる“有機農業”の可能性とは?
ジビエ肉処理加工施設に続いて訪れるのは、山梨県に根付く有機農業の世界。化学的に合成された肥料や農薬、遺伝子組み換え技術を使わず、環境への負荷を抑えて行う農業として知られるのが有機農業です。そして、山梨県の高標高地ならではの冷涼な気候は、病害虫の発生を抑え、有機栽培に最適な条件を生み出しています。
今回の見学会では「有機JAS認証」を取得した若き2人の生産者が登場しました。山梨という土地だからこそできる農業の可能性、栽培のこだわりや地域を盛り上げるための取り組み、そして生産者としての熱い想いをご紹介します。
土作りから大自然の力を野菜に宿す!畑山農場の有機栽培
標高3000メートル級の山々に囲まれた北杜市にある畑山農場。にんじん、はくさい、小松菜など約30種類の作物を栽培しており、晴天率の高さが有機野菜の育ちを支えているそうです。
代表の畑山貴宏さんは札幌市出身。大学時代に有機農業のアルバイトを体験したことで「自然の中で心豊かに暮らしたい」と強く思い、大学院卒業後に山梨県へ移住。2003年に農家としての道を歩み始めました。
畑山さん有機栽培の特徴は、土づくりへの徹底したこだわり。稲わらや牧草を多く食べる牛や馬の糞を使った“繊維質の多い堆肥”により、微生物が時間をかけて土を肥沃にしていくそうです。
「土の中で微生物がゆっくり堆肥を分解し、肥沃な土をつくりそれが野菜の栄養となる。時間をかけた分だけ、味や栄養価に違いが出るんです」と、畑山さんは目を輝かせながら語ります。
畑山さんはさらに、有機農家同士の「共同出荷」にも積極的。北杜市には有機農業を志して移住してきた人が100人ほどおり、いくつものグループで協力しながら、都市部へ安定的に野菜を届ける仕組みを築いていると言います。
見学の最後には、小松菜やワサビ菜をその場で試食。新鮮な葉物が持つほのかな甘みや香りが、参加者たちの心を一瞬で掴みました。

10ヘクタールすべて有機JAS認証!ファーマンが描く新時代の地方農業
次に向かったのは、同じ北杜市に拠点を置く「株式会社ファーマン」。代表取締役の井上能孝さんは埼玉県所沢市出身で、有機農家のもとでの研修を経て就農し、山梨県で23年以上もの間、有機栽培に取り組んできました。
ファーマンは10ヘクタールの農地すべてで有機JAS認証を取得。玉ねぎ、にんにく、とうもろこし、じゃがいもなど30品目を生産し、それらの野菜を使ったバーベキューやシェフによる料理を提供しています。収穫したての野菜をその場で味わえる体験は人気を集め、観光客や地元の方々を笑顔にしています。
また、畑山農場をはじめとする他の生産者から集まる野菜をまとめて都市部や海外へ販売する「有機野菜の農協」のような役割を担い、地方から付加価値を生み出す新たなモデルを模索中。最近ではワインとのコラボも始め、高品質なワインと有機野菜を一緒に味わえる場を整えています。
井上さんは「ただ野菜を安く売るだけではなく、体験やストーリーをセットにすることで、地方の農業の付加価値をさらに高めたい」と意気込みを語り、その瞳には強い決意が感じられました。

極上ジビエ×有機野菜×ワイン!美酒美食の山梨を味わいつくす贅沢ランチ
今回の産地見学会では、こだわりのジビエと有機野菜、それらに携わる生産者の熱い想いに触れるだけではなく、韮崎市にあるフランス料理店「キュイエット」で特別ランチコースを味わいました。訪れた生産者の食材を中心に、素材の魅力を存分に引き出してもらいます。
「キュイエット」は、フランス・パリとシャンパーニュの星付きレストランで修業を積んだ山梨県出身の山田真治シェフが2003年にオープンしたお店。「シャンパーニュの風景と重なる山梨の自然の中で、自分の店を持ちたい」という想いが、この地での出店につながったといいます。
この日、特に参加者を唸らせたのは、先ほど見学した八ヶ岳ジビエで加工された鹿肉。火入れが絶妙で、「ジビエ特有の臭みがなく食べやすい」「肉の旨みがしっかり残っていて絶品」と、大満足の声があがりました。さらに料理に合わせて提供された山梨県産ワインも、ソムリエである山田紫乃さんが丁寧にペアリングを考案。ワインとジビエの至福のマリアージュに、参加者は終始笑顔でした。
【料理メニュー】
・八ヶ岳湧水マス
・山梨県産ジビエ(鹿肉 カルガモ 雉)パテ
・名水赤鶏コンフィ 黒富士農場放牧卵温泉卵
・八ヶ岳ジビエ鹿ロースト
・富士川町産洋梨キャラメリゼ
【ワイン】
・甲州スパークリング 2022(セブンシダーズ・ワイナリー) 白
・シャンテY.A vrille 2014(ダイヤモンド酒造) 赤
・穂坂日之城シャルドネ2022(シャトー・マルス) 白
・あけの 2021(中央葡萄酒) 赤
・貴腐 2012 ハーフ(サントリー登美の丘ワイナリー) 白



フランス料理キュイエット – 韮崎|葡萄畑と色彩豊かな景観を楽しむ本格フレンチへようこそ
やまなし独自のエシカル農畜産物。安心・安全と人・環境に優しい取り組みで自然と共生する未来へ
今回の見学会は、やまなしジビエと有機農業に焦点を当て、生産者が大切にしている熱い想いに触れる場となりました。
本記事でも取り上げているやまなしジビエについて、山梨県では「やまなしジビエ認証制度」として野生鳥獣による農林業被害に対応する中で捕獲したニホンジカを、ジビエとして活用する方策を推進しています。県独自の認証制度として、安全性と品質を確保し、適切な衛生管理と迅速な処理を行うシカ肉処理加工施設を「やまなしジビエ認定施設」として指定、高品質な鹿肉を全国へ届けています。
また県では、雄大な自然と生産者たちの情熱が生み出すエシカルな農畜産物の生産推進するため、「やまなしアニマルウェルフェア認証制度」「やまなし4パーミル・イニシアチブ農産物等認証制度」といった、技術面や経営面で生産者を支援する取り組みを進めています。そして、自然と共生するエシカルな農畜産物の魅力を全国へと発信し、さらには山梨で農業を始める方のサポートも行っております。
ご興味がある方は以下リンクのページをご覧ください。
山梨県は今後も、生産者や地域の人々と手を携えながら、エシカル農畜産物の生産と普及を力強くサポートしていきます。自然の恵みを最大限に活かし、人と地域を元気にする県の取り組みから、これからも目が離せません。
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