横浜から身延町へ移住して6年。
浅野秀人さんが手掛けるのは、ただの大豆じゃない。
これが“幻の大豆”あけぼの大豆だ。大きくて、甘くて、濃い味。
その秘密は、身延町の気候と手間ひまかけた栽培法にあり。
町の風景と共に味わうその一粒一粒、まるで自然そのものの味だ。
まだ知らない人が多いけど、この美味しさ、きっと広がっていく。
PROFILE

浅野 秀人 さん
衝撃の味と出会い、横浜から身延町へ移住。その後は、農業のノウハウや「あけぼの大豆」の生産のあり方をとことん追求。そのバイタリティは経営者時代のキャリアがあってこそ。現在販売している枝豆スープや味噌は自身が考案。移住後に“味噌ソムリエ”の資格も取得した。

廃校となった小学校を拠点施設とし、数々の「あけぼの大豆」商品を製造。すぐ近くには富士川があり、季節ごとに変化する自然は日常の一部。なんという贅沢。
エリアごとに地形や風土が
さまざまな、富士川と
それを囲む山々が
印象的な南山梨
標高300〜700mに位置する身延町は、寒暖差が大きく、霧も多く発生。この特殊な気象条件だから生まれた「あけぼの大豆」は、一般の大豆と比べて粒が大きく、重さが約2倍。身延町でしか栽培できない品種、かつ手作業のため、希少性がとても高いと言われている。世間では“幻の大豆”と呼ばれる「あけぼの大豆」の味に惚れ込んだ浅野秀人さんは、6年前に夫婦で移住。
自身でも畑を持ち、栽培から商品開発まで担当している。感度の高い人たちの間ではすでに話題で、
都内の高級デパートからミシュランお墨付きのレストランまで、取り扱い店舗は多数。
数年前には、地域の気候・風土を活かした伝統ある生産方法のみ登録できる「GIマーク」を取得した。
「山梨で唯一なんです!」と高ぶる浅野さんは、この計画の発起人。未来に向けた挑戦は始まったばかり。

畑から商品まで、すべての工程に関われるのは楽しいです!
彼の選んだ第2の人生は、
想像以上に刺激的だった。
自分の人生は自由に生きればいい。そう背中を押してくれるのは浅野さん。「農業をしながらのんびり暮らしたい」と第2の人生を想像しながら、横浜でバリバリ仕事をしてきた。経営者だったこともあり、その行動力は抜群。50歳前に仕事を辞め、地域おこし協力隊の道を模索する。その時に訪れたのが身延町で、ちょうど「あけぼの大豆」の収穫期。数日しか出回らない採れたての枝豆を農家の人に頂く。そこで衝撃が走った。「こんなに美味しい大豆が世にあったなんて!」。これは絶対多くの人に知られるべき。そう確信した彼は迷わず身延町への移住を決めた。現在は「あけぼの大豆」の栽培から商品開発まで担当。展開する商品は多岐に渡る。「山梨で唯一のGI取得は難易度がとても高い。登録には4年の歳月を費やしました」。のんびり過ごすはずだった移住生活は、想像を超えた広がりを見せる。住民との仲は深まり、また別の飲食系のプロジェクトも企画中。身延町の発展に欠かせない中心メンバーとして、その手腕を発揮している。

のんびり暮らすつもりが、気付けば身延町の未来を作る一員に。
自身の畑で野菜や米も収穫。「あけぼの大豆」作りを稼業としながら、自給自足に近い暮らしを試みる浅野さん。毎朝は畑仕事からスタート。「結果は収穫時にしか出ない。でもその裏で種を撒いたり、雑草を取ったり、いろいろと作業がある。人目には触れないけど、その大変さを楽しめています」。自宅には憧れだった薪ストーブを。便利さより、心の豊かさを選ぶようになった。「ずっと横浜で暮らしていたからか、身延町の何気ない自然に幸せを感じます。四季を色濃く感じられるって贅沢なんだな、と。富士川沿いの朝も好き。霧が立ち込める時間は幻想的で、朝陽がキラキラと川面を照らす瞬間はノスタルジック」。バイク好きでもあり、時には本栖湖までツーリング。自宅からは30分弱で、圧巻の富士山を見ることができる。近所で暮らす人も農家が多く、朝活から帰ってくると玄関に採れたて野菜が置かれていることも。「最初はびっくりしたんですが、それはもう日常に。周りとの暖かな人間関係もこの町の魅力だと思います」
Hello!
(Morning!)

大豆が完熟する前に採れる枝豆は、特に希少価値が高い。浅野さんが初めて口にした時「今まで食べてきた枝豆は何だったんだ!?」と思うほど感動したそう。

大粒の「あけぼの大豆」。6月中旬〜7月上旬に種を蒔き、8月中旬に開花。その後10月に枝豆、11月中旬から大豆を収穫する。時間をかけて成長するから、強い甘味と深みが現れる。

学校の教室を改装して加工室へ。懐かしい雰囲気の中、毎日手作業で行われる商品作り。日々10種類近くの製品を製造。すべて
無添加というのも嬉しいポイント。

何人かがチームとなり、毎日交代で「あけぼの大豆」の美味しさを繋ぐ。枝豆を使ったジャンボシューマイやディップ、極上大豆の味噌、常温で保管できるこんがり焼き大豆など、種類も豊富。

100年以上栽培されていた在来種が、新しい形となって全国に届いていく。柔らかな光と豊かな自然に包まれる身延町の魅力は、食べることでリアルに。



PROFILE
浅野 秀人さん