THEME:

木とともに過ごす

AREA:

富士川町の静かな集落に、ひと味違う家具工房がある。
元養蚕施設を改装した「スナンタ製作所」は、
木工家・若林克友さんのアトリエ兼ギャラリーだ。
ここでは、オーダーメイドの家具づくりだけでなく、木の温もりを感じるワークショップや、
木の声に耳を傾けるアート作品が生まれる。
抜節(ぬけふし)に宿る生命の痕跡を見つめ、彫刻作品へと昇華させる若林さんの手仕事。
さらに、作品を“暮らしの中で”体験できる「泊まれるショールーム」も用意されているらしい。
木とともに過ごす時間、その心地よさを味わいに行こう。

FEATURING

スナンタ製作所

富士川町砂垈(すなぬた)の自然に囲まれた場所に佇む、木工家・彫刻家・家具作家の若林克友さんのアトリエ兼ギャラリー。かつて養蚕施設だった建物を改装し、2014年にオープン。オーダーメイドの家具制作、店舗デザイン、アート作品の制作を行うほか、木の温もりを体感できるワークショップを開催。木材の自然な造形美を活かした作品づくりが特徴で、抜節をモチーフにした彫刻や、地域の森とつながる循環型のものづくりにも取り組む。ギャラリーでは家具や小物の展示販売も行っており、訪れる人が木と向き合い、木の魅力を知るきっかけを提供している。

木と向き合い、心を整える場所。
富士川町「スナンタ製作所」

木工家・若林克友さんの「スナンタ製作所」は、富士川町小室砂垈地区にある。ダイヤモンド富士の絶景ポイントで知られる髙下地区からも程近い風光明媚なエリアで、集落の人口は20人ほど。若林さんは、もともと養蚕施設だった建物を改装して2014年にギャラリーと工房を構えオーダーメイドで家具の注文を受けたり、店舗のデザインをするほか、アート作品の制作も数多く手がける。ギャラリーでは、作品や家具の展示が見られるだけでなく、アクセサリーやカトラリー、うつわといった小物類をその場で購入することができる。木材の温かないい香りがたちこめる工房では、スプーンや靴べらをつくるワークショップを開催。木材を切り出し、刃物で削って形を整え、やすりがけを施すという作品づくりの一連の作業をアテンドしてくれる。黙々と木に向き合って形を整えていく作業は、まるでマインドフルネス。心まで整っていく感覚を味わいたい。

自然の中で、木の温もりと創作の静けさを楽しむ!

抜節をメインモチーフにした
作家活動

若林さんは、抜節(ぬけふし)をモチーフにした作品を多く制作している。「抜節とは、折れたり傷んだ枝をかばいながら成長した箇所。節はもともと根から水分を枝に送ったり、葉から養分を幹へ運ぶエネルギーの通り道の役割をもちます。枝がなんらかの理由で枯れてしまうと、節は幹まで影響が及ばないように自ら役目を終えて死に節になります。その死に節が抜け落ちた跡が抜節です」。抜節のある木材は生きた節(生き節)に比べて価値が下がるが、若林さんは、傷ついても生きて年輪を重ねた痕である抜節を強くうつくしいカタチととらえ、木材になったからこそ見ることができる自然の造形美を、彫刻作品に昇華させている。また、地元の森林組合とも直接つながりをもち、地域の森の循環づくりのために伐採される広葉樹を家具として再生したり、建築材としていかす活動を実施。伐採の現場や、丸太が木材になる様子を子どもたちに見せる見学会も行うなど、持続可能な環境を次世代に手渡す取り組みに注力しているという。

自然が作り出したその強さと美しさを、作品に昇華させています。

泊まれるショールーム
「中富別棟」

若林さんの家具や作品を見て楽しむだけでなく、実際に手にとって使うことをコンセプトにした泊まれるショールームが「中富別棟」だ。駐車場から宿泊者のみに入ることを許されたアプローチを抜けると、緑に囲まれた1棟の古民家が現れる。ここは若林さんの曽祖父が暮らした築100年の古民家を、自ら監修して改装した一棟貸しの宿。若林さんの作品である家具や建具、彫刻作品が数多く配置されている。「椅子に座って読書をしたり、スープを飲んでスプーンの口当たりを確かめてもらったり。実際に使っていただけるのが、作り手として何よりうれしいところです。また、アート作品は昼と夜で見え方も変わります。ギャラリーの展示を見ただけではわからない作品の魅力を、滞在を通して感じてもらえれば」。今後は、「スナンタ製作所」の工房で実施しているワークショップを、「中富別棟」でも出張開催できるよう計画中だという。チェックインからチェックアウトの時間をフルに使って、暮らすように滞在を楽しもう。

Hello!

(Morning!)

富士川町の山間にある小室砂垈地区に工房とギャラリーを構える「スナンタ製作所」

身延町にある一棟貸しの宿、「中富別棟」の室内

古民家を改装したギャラリーの2階部分も展示エリアになっている

若林さんの妻、美緒さんがつけているのは、木の抜節をいかしたピアス。ギャラリーで購入できる

ギャラリーには、アート作品のほか注文家具のサンプルなども展示されている

抜節をモチーフに、人の姿のようなフォルムに美しく再生したオブジェ

工房ではアンティークのような機能美のある機械が現役

ワークショップでは、木が丸太から作品や道具になっていく過程が見られる

スプーンの形に削っていく作業

少しずつ繰り返し削っていく動作や、削る音が心地よく、心まで研ぎ澄まされる

少しずつ少しずつスプーンの形になっていく

木材から切り出した抜節。ひとつとして同じものがなく、表情豊か

ワークショップは丁寧に教えてくれるので小学生の子どもから大人まで誰でも体験できる

抜節のオブジェの途中経過。リクエストがあればオブジェの制作体験も

一棟貸しの宿「中富別棟」は、身延町の旧中富町にある

宿では、若林さんお手製の竈門に薪を割って火を入れて炊いた、地元のお米を 夕食にいただくこともできる

宿の2階は改装中。今後ギャラリーとして宿泊客に開放予定

若林克友さんと妻の美緒さん。美緒さんは大学の後輩で、制作の手伝いやスナンタ製作所のPRを担う

PROFILE

スナンタ製作所

People / Things / Product

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Things
Product

南山梨のヒト・モノ・コト