THEME:

人と人を繋ぐ

AREA:

朝、鐘の音が響く。それが深山さんの1日の始まり。
常幸院の住職として静かな日々を過ごしつつも、地域を活性化させる新しい挑戦を続けている。
坐禅や地域イベントを通じて、人々と少しずつ繋がり、寺院を“お寺”以上の場所に変えていく。

PROFILE

常幸院 住職 深山 光信 さん

大学卒業と同時に神奈川県にある總持寺で2年半修行。200人もいた修行僧とともに禅を学ぶ。その後、今の場所へ。現在は住職として常幸院を統括。人気アニメに登場した寺院で、世界中から旅人が訪れる。南山梨全体を盛り上げるべく、人と人を繋ぎ、観光資源を活かしたイベントなども立案。

この寺の住職だった
祖父から受け継ぎ
27代住職となった深山光信さん

特別な節目に訪れることが多い神社仏閣は、日常とかけ離れた場所と思われがち。深山さんは寺院で過ごすうちに、本来人々が行き交う“駆け込み寺”が、寂しい雰囲気に変わっていることに気づく。時代とともに変化した暮らしとカルチャー。ならば仏教の魅力をもう一度多くの人へ。そう考えた深山さんは「この寺をいのちの集う場所へ」とスローガンを掲げる。寺院の日常を気軽に体験できる行事を企画するほか、定期的に禅合宿や坐禅会を開催。オープンな空気を作ることで、地元だけではなく、県外からも多くの人が訪れるようになった。活動を通して仲間はどんどん増えていく。今や深山さんはこの地域に欠かせない存在になりつつある。

地域と寺院の深い関わりが、町の活性化に繋がっていく。

「坐禅、読経、写経などは、希望があれば誰でも体験できます」と深山さん。人数や内容に合わせ、フレキシブルに対応してくれる。定期的に開催される坐禅会は20年近く前からスタート。朝活気分で訪れる主婦も多いという。1泊2日で行われる禅合宿は、町内外の子供達が何十人も参加。禅寺の生活を通して、いのちの大切さと向き合った。サッカー合宿では、試合優勝の喜びを改めて伝えに来る子供達もいた。「どんな形でもいい。それが寺を訪れるきっかけになれば」と笑顔。手を合わす習慣や、いただきますという言葉の意味、何気ない日本人の行動には仏の教えが根付いていることも多い。そこに触れるだけでも、日常は彩りを帯びてくる。

寺をもっと身近に感じてもらえるよう、坐禅会やさまざまな行事を
開催し、多くの人が集まる場所にしていきます!

地域から消えてしまったお盆のお祭りを灯籠流しという別の形で復活させたのも深山さんだ。「常幸院の上にある廃校ではキャンプイベントも行っています。地元の生産者と一緒にマルシェなども」。住職という肩書きを超え、さまざまな地域プロジェクトに取り組む彼は、新たな企画も目論み中。“積極的に人に、地域に、社会に寄り添う僧侶を目指す”。20歳で住職になることを決めた和尚の本気度と行動力に、あっぱれ!

禅寺の暮らしは朝が早い。毎日5時30分に起床し、6時には境内にある鐘を鳴らすのが深山さんの最初のお勤めだ。その後は本堂で読経と坐禅、掃除、事務作業などを行う。「近くの坂道から見る朝焼けが好きです。空が静かにどんどん開けていく。すごくいい景色」。毎朝の坐禅は気持ちをリフレッシュさせる効果も。「ただ座ってじっとしている時間って、実はほぼない。起きたら動きっぱなしの人が多いと思います。でも一度止まり、姿勢を調え、呼吸を調え、心を調えることで、日常の慌ただしさから解放される。スッキリした気持ちで1日を迎えられます」。都内に車を走らせることがある深山さんは、車内から眺める富士山もお気に入り。「身延町の大きな魅力のひとつ。いろんな角度から見れます。特に好きなのは本栖湖から見る富士山」。毎回車を止めて写真を撮るこの場所では、滅多に見られない“逆さ富士”の撮影にも成功したとか。身延町には古き良き風情を残す下部温泉があり、歴史を感じる特産物もある。「いつかは身延町の特産品が味わえるカフェや食事処を常幸院の境内にオープンできたらおもしろいですね!」

坐禅で心をリフレッシュし、富士山や本栖湖の景色を楽しみながら、
身延町の魅力を感じています。

Hello!

(Morning!)

新しい1日の始まり。僧侶の深山さんは毎朝6時に境内の鐘を鳴らす。続けることは当たり前のようで難しい。仏の教えを体感できる朝の時間

法衣や袈裟と呼ばれる着物。身につけるものすべてに意味がある

袈裟色には僧侶のアイデンティティーが表現されている

古くから続く常幸院。周囲を見渡せば歴史を感じるものばかり

そこに新しいエッセンスが加えられていく。“生きている”を感じるお寺

古き良き日本の佇まいが残る境内。何気ない景色に心がふわっと揺らぐ。誰かが過ごしてきたあの時間が、想像の中で
優しく蘇る

江戸時代に使われていた駕籠。武家や公家、僧侶などが使用した高貴な乗り物は当時の象徴

PROFILE

常幸院 住職

深山 光信さん

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南山梨のヒト・モノ・コト