今から10年後、あなたはどこで、誰と、どんな日々を過ごしていると思いますか?
日本人メジャーリーガーとして活躍している大谷翔平選手は、高校時代に目標達成シートを使い、夢の実現に向けて達成すべき目標を細分化して取り組んでいたことで注目を集めました。
「こんな風になりたい!」
目標を可視化して向き合うことで、今から何をしていけばいいのかが見えてきます。
ゴールとそこに向かうための筋道が決まれば、将来への漠然とした不安が、具体的な「やるべきこと」に置き換わるでしょう。
そんな観点から、山梨県では、理想の「ライフプラン」を設計するための様々なサポートを行っています。
今回は高校生・大学生を対象とした「ライフプラン作成出前講座」にフォーカス。
ライフプランの基礎知識から、東京と山梨の住宅や教育にかかる費用の違いまで……未来へのヒント満載の講座を潜入取材。その内容を、受講した学生たちのリアルな反応を交えてレポートします!
INDEX
そもそも「ライフプラン」って何? 早めの準備が大事な理由
ライフプランとは、理想の未来を具体的に思い描き、それを叶えるために必要なキャリアやお金、人生設計をまとめた「将来の設計図」です。
「設計図」と言われてもピンとこないかもしれませんが、わかりやすく言えば、将来就きたい職業、住みたい場所、思い描いている家族構成などを具体的に書き出すことで可視化し、そこに向かって「今から何をどう準備するか?」を計画していくようなイメージです。
特に、進学・就職を控える高校生・大学生や、キャリアに悩む20〜30代の社会人にとって、ライフプランを考えることはメリットだらけ。将来のビジョンが明確に持てているから、計画的に行動しやすくなり、「なんだか将来が不安…」という気持ちが、具体的な数字やイメージに落とし込まれることでグッと気持ちが楽になるはずです。
「ライフプラン作成出前講座」に潜入! 授業の様子をレポート

2024年12月、県立青洲高校での出前講座に2年生全員(約250人)が参加。生徒たち自身がワークに取り組む参加型の講座で、10年後の自分を具体的にイメージするプロセスを体験していきます。
「10年後の自分」を想像するワーク

講師の飯塚和美さんからの「将来はどこで暮らしたい?」「どんな仕事をしている?」といった問いかけに答える形で、生徒たちは県が作成した啓発冊子「Yamanashi Lifestyle Design Book」に書き込みながらイメージを広げます。普段は友達同士でもあまり話さない夢や理想の生活について、少し照れながらも真剣に語り合う姿が印象的でした。
クイズで学ぶ「人生に必要なお金」
講座では、住宅購入費、子どもの教育費や老後資金など“人生にかかるお金”をクイズ形式で学んでいきます。
たとえば…
- 新築住宅の平均購入費用はいくら?
- 子ども1人の教育費は?
- 老後の生活費はどれくらい?


中には予想外の回答もあったようで、特に東京都と山梨県との住宅購入費用の違いには「東京、高すぎ!」など驚きの声も。冊子には着工新設持ち家比率全国3位など山梨の良いところや、結婚、妊娠・妊活、不妊治療への支援など、学生のうちには触れることが少ない情報が詳細に記載されています。

飯塚さんは、住宅購入、子育てなど、さまざまなライフイベントに係る具体的な費用について説明。
「進路」や「働き方」の現実もしっかり把握

国公立大学と私立大学の進学費用の違いや、20代の平均年収・給与の手取り金額が示されると、生徒からは「平均年収はそんなものなんだね」というつぶやきも。
そんな生徒たちに対して、飯塚さんは「同じ職業でも、正規雇用か非正規雇用かで収入は変わります。理想の仕事だけでなく、働き方まで考えることがライフプランには大切です」と、解説。生徒たちも興味深そうにうなずいていました。
講座を「人生をデザインするヒント」に

約1時間に及んだ講座では、生徒がこれから直面する進学・就職・結婚・子育てなどのライフイベントも具体的に解説され、受講後、生徒からは次のような感想が聞かれました。
普通科・弦間由紀那さん
「現場監督になりたいという夢があります。年収や働き方の違いなどリアルな数字を知ることで、目標を具体的に考えられるようになりました」
商業科・大沼李羽さん
「行き当たりばったりじゃなく、目標から逆算して準備する大切さを学びました。いただいた冊子を使って、自分の未来をもっと掘り下げてみたいです」
学年主任の宮坂雄太教諭も、「『入りやすいから』『今やりたいことができるから』だけでなく、将来設計を意識した進路選択をしてほしい。そのきっかけになったはず」と手応えを感じていました。
山梨県がライフプラン作成を支援する背景とは?
大きな反響があった今回の「ライフプラン作成出前講座」。
山梨県はなぜ、このような講座を企画しているのでしょうか?ここからは、その背景をご紹介します。
近年、人口減少や少子化が進む中で、山梨県でも若い世代の結婚や将来設計に対する意識に変化が見られます。特に未婚率の上昇は全国的な傾向であり、山梨県においても顕著になっています。
県が実施した「人口減少・少子化対策に向けた県民アンケート調査」(令和5年2月実施)によると、結婚をためらう理由として、 「自由な時間や気楽さを失いたくない」「趣味や娯楽を楽しみたい」 「結婚資金が足りない」 「結婚後の生活資金が不安」といった回答が多く寄せられました。
また、子どもを産み控える理由としても、 「子育てや教育にお金がかかりすぎる」など、経済的な負担を懸念する声が目立ちます。

こうした状況を踏まえ、山梨県では、若者が自分の将来を具体的にイメージし、どのようなライフイベントが起こるのか、それぞれに必要な費用はどれくらいなのかなど、早いうちから理解し、自分が望む未来に向かって進むことができるよう、2024年からライフプラン作成を後押しする取り組みを開始しました。
将来に向けた具体的な計画を立てることで、若い世代がより前向きに人生設計を考えられるよう、県として支援を進めています。
山梨県が行う2つのライフプラン支援策
1. ライフプラン相談窓口の設置
県内40カ所にライフプランに関する相談窓口を開設。進学や就職、結婚、子育てなど、多岐にわたる人生設計や資金計画の悩みについて、専門家から個別にアドバイスがもらえます。
2. ライフプラン作成出前講座
今回の記事でお伝えした、高校生や大学生を対象に県職員が学校に出向いて行う講座です。将来のライフイベントに必要な資金の目安や支援制度の解説を、スライドやワークを交えながらわかりやすくレクチャーします。
2024年5〜12月に、県内の7つの高校・大学で実施されました。
まとめ:まずは“理想の未来”を思い描くことから
ライフプランの作成は、あなた自身の「理想の未来」を具体的に描くための第一歩。将来の進学や就職、結婚や子育てについてじっくり考えるきっかけにもなります。
結婚・子育てにかかるお金、ライフイベントごとにどんな準備が必要なのか、仕事とプライベートのバランスなど、将来への漠然とした不安を一人で抱え込まず、まずは気軽に相談してみませんか?
あなたの描く「10年後」が、もっとはっきりした形で迫ってくるかもしれません。ライフプランという「設計図」を手に、理想の未来へ一歩ずつ近づいていきましょう。
やまなしライフプラン相談窓口
https://www.pref.yamanashi.jp/jinko-taisaku/lifeplansoudan.html
「Yamanashi Lifestyle Design Book」
https://www.pref.yamanashi.jp/documents/115111/hp_yamanashilifedesignbook.pdf
山梨県人口減少危機対策特設サイト
https://www.pref.yamanashi.jp/jinko_kiki/tokusyu/sp2.html