山梨県が2022年7月に実施した「新型コロナ感染症についてのアンケート」で、医療提供体制、検査体制、ワクチン接種促進、グリーンゾーンの取り組みについて、いずれも72~88%のポジティブな解答があったことが11月、県への取材で分かりました。県の施策について知っているかどうかを尋ねた設問も、「認知している」が88〜97%を超えるなど、コロナ対策への取り組みが高い評価を受けました。
コロナ禍での万全の対策が評価された一方、まん防適用不要請、「日常の回復・経済のリバイバル」への方針転換、マスク着用の緩和といった日常に戻るための緩和施策についても64〜77%のポジティブな解答がありました。コロナ対策での信頼があったからこそ転換に支持を受けることができたとみられます。
INDEX
アンケート結果の概要
これは「医療提供体制」「検査体制」「ワクチン接種促進」など、コロナ禍における山梨県の取り組みについてのアンケート。下記の13項目について調査を実施しました。
- 性別
- 年齢
- 移住地域
- 医療提供体制
宿泊療養施設、医療強化型宿泊療養施設の設置や、やまなしホームケア、退所後ケア、ファーストケアなど、感染者が増加しても医療提供が可能となる体制を整備しました。 - 検査体制
学校で感染者が出るとクラス全員に検査を行う新山梨方式や、高齢者や障害者の施設関係者に対する定期検査などで、クラスターの発生を抑制しました。 - ワクチン接種促進
大規模接種センターの設置、ワクチン相談ダイヤル、副反応休業助成金、ワクチン接種で当たるキャンペーンなどで、ワクチンの積極的な接種を働きかけました。 - 生活関連
誹謗中傷を防ぐための人権連絡会議、生活資金貸付金などで、生活関連の影響を抑制しました。 - 情報発信
知事記者会見でのメッセージ、市町村ごとの感染状況、医療危機メーター、感染症ポータルサイト、LINE公式アカウントなどを通じて、情報発信を行いました。 - 学校、保健所への対応
学校の休校措置、小中学生応援サイト、部活動マスク着用要請、ガイドラインなどにより、学校、保育所等への影響を最小化しました。 - 中小企業者中小企業者の資金繰り支援
コロナ関連の無利子・無担保融資などにより、経営環境の悪化した中小企業者の資金繰りを支援しました。 - 飲食・宿泊業支援
グリーン・ゾーン認証制度、設備改修や機器等購入の助成、無尽でお助けキャンペーン、食のグリーン・ゾーン応援キャンペーン、グリーン・ゾーン宿泊割りなどにより、需要の落ち込んだ飲食・宿泊業の支援を行いました。 - まん延防止等重点措置の適用不要請
山梨県では飲食店由来のクラスターが少なかったため、まん延防止等重点措置の適用を要請しませんでした。 - ワクチン未接種者外出自粛要請
山梨県では第5波の際にワクチン未接種者の感染率が2回接種者の2倍以上となっていたため、ワクチン未接種者の外出自粛を要請しました。 - 「日常の回復・経済のリバイバル」への方針転換
山梨県では、現在の感染状況がコントロールできていることから、日常を取り戻し県内経済のリバイバルを目指すこととしています。 - マスク着用の緩和
山梨県では、国の方針に従い屋外での着用を不要とすることや、2歳未満の幼児への着用推奨を行わないこと、部活動中のマスク着用を必要最小限度とすることなど、マスク着用の緩和をしています。 - ワクチン接種の推進
山梨県では、大規模接種センターの設置、接種者へのプレミアム食事券のプレゼントなど、ワクチン接種の推進を図っています。
※山梨県がホームページやSNSなどでアンケートを実施し、結果を集計
実施時期 :2022年7月下旬
有効回答者数:2,996名
コロナ禍での取り組みに対する評価
このアンケートによると、山梨県におけるコロナ禍の下記取り組みは、県民から大きな評価を得ていました。
- 医療提供体制
- 検査体制
- ワクチン接種促進
- 飲食・宿泊業支援
- まん延防止等重点措置の適用不要請
対策への認知度も高く、また、各対策を認知していた回答者の内、72〜88%が「非常に良い」「まあまあ良い」と回答しています。]
▼対策の内容を知っていたか?
医療提供体制 | 検査体制 | ワクチン接種促進 | 飲食・宿泊業支援 | まん防の適用不要請 | |
非常に良いまあまあ良い | 88% | 72% | 81% | 74% | 88% |
あまり良くない非常に良くない | 12% | 28% | 19% | 26% | 12% |
▼対策の内容についての評価は?
医療提供体制 | 検査体制 | ワクチン接種促進 | 飲食・宿泊業支援 | まん防の適用不要請 | |
非常に良いまあまあ良い | 88% | 72% | 81% | 74% | 88% |
あまり良くない非常に良くない | 12% | 28% | 19% | 26% | 12% |
アフターコロナでの取り組みに対する評価
「コロナ禍での対策」と同時に、今後の「日常生活への回帰」に関する施策も評価を得ました。
- 「日常の回復・経済のリバイバル」への方針転換
- マスク着用の緩和
上記2点の取り組みについても、それぞれ77%が「同意できる」「やや同意できる」と回答しています。
▼対策の内容についての評価は?
「日常の回復・経済のリバイバル」への方針転換 | マスク着用の緩和 | |
同意できるやや同意できる | 77% | 77% |
あまり同意できない全く同意できない | 23% | 23% |
「日常に戻るため、感染対策を徐々に緩和していく」ことは、賛否の分かれることが多い施策です。日常生活への転換について支持を得られたのは、コロナ禍で感染対策を徹底し、県民からの信頼を積み重ねてきたからと言えるでしょう。
今回の記事では、このアンケート結果をご紹介します。
調査方法について
「新型コロナ感染症についてのアンケート」は2022年7月下旬、山梨県サイト、県政モニター、LINEなど、7つの方法で実施しました。
アンケートを実施した方法と有効回答者数
- LINE(新型コロナ対策パーソナルサポート):2,381件
- Twitter(新型コロナ対策):255件
- GMOリサーチ:230件
- Twitter(県公式):63件
- 県政モニター:41件
- 県ホームページ:25件
- 県からのお知らせ:1件
アンケート内容
新型コロナ感染症における山梨県の取り組みについて、以下の5項目のうち、近いものを選択する方式で回答してもらいました。
- 非常に良い
- まあまあ良い
- あまり良くない
- 非常に良くない
- 対策について知らない
今後のアフターコロナに関する施策については、以下の4項目のうち、近いものを選択する方式で回答してもらいました。
- 同意できる
- やや同意できる
- あまり同意できない
- 全く同意できない
アンケート結果詳細
おもなアンケート項目とその結果を見ていきましょう。
医療提供体制
医療提供体制については、下記の取り組みへの評価を質問しました。
▼医療提供体制
宿泊療養施設、医療強化型宿泊療養施設の設置や、やまなしホームケア、退所後ケア、ファーストケアなど、感染者が増加しても医療提供が可能となる体制を整備しました。
この取り組みを認知していた回答者のうち、約88%が「非常に良い」「まあまあ良い」を選択しました。
検査体制
検査体制については、下記の取り組みへの評価を質問しました。
▼検査体制
学校で感染者が出るとクラス全員に検査を行う新山梨方式や、高齢者や障害者の施設関係者に対する定期検査などで、クラスターの発生を抑制しました。
この取り組みを認知していた回答者のうち、約72%が「非常に良い」「まあまあ良い」を選択しました。
ワクチン接種促進
ワクチン接種促進については、下記の取り組みへの評価を質問しました。
▼ワクチン接種促進
大規模接種センターの設置、ワクチン相談ダイヤル、副反応休業助成金、ワクチン接種で当たるキャンペーンなどで、ワクチンの積極的な接種を働きかけました。
この取り組みを認知していた回答者のうち、約81%が「非常に良い」「まあまあ良い」を選択しました。
飲食・宿泊業支援
飲食・宿泊業支援については、下記の取り組みへの評価を質問しました。
▼飲食・宿泊業支援
グリーン・ゾーン認証制度、設備改修や機器等購入の助成、無尽でお助けキャンペーン、食のグリーン・ゾーン応援キャンペーン、グリーン・ゾーン宿泊割りなどにより、需要の落ち込んだ飲食・宿泊業の支援を行いました。
この取り組みを認知していた回答者のうち、約74%が「非常に良い」「まあまあ良い」を選択しました。
まん延防止等重点措置の適用不要請
まん延防止等重点措置の適用不要請については、下記の取り組みへの評価を質問しました。
▼まん延防止等重点措置の適用不要請
山梨県では飲食店由来のクラスターが少なかったため、まん延防止等重点措置の適用を要請しませんでした。
この取り組みを認知していた回答者のうち、約64%が「非常に良い」「まあまあ良い」を選択しました。
日常の回復・経済のリバイバル」への方針転換
「日常の回復・経済のリバイバル」への方針転換については、下記の取り組みへの評価を質問しました。
▼「日常の回復・経済のリバイバル」への方針転換
山梨県では、現在の感染状況がコントロールできていることから、日常を取り戻し県内経済のリバイバルを目指すこととしています。
回答者のうち、約77%が「同意できる」「やや同意できる」を選択しました。
マスク着用の緩和
マスク着用の緩和については、下記の取り組みへの評価を質問しました。
▼マスク着用の緩和
山梨県では、国の方針に従い屋外での着用を不要とすることや、2歳未満の幼児への着用推奨を行わないこと、部活動中のマスク着用を必要最小限度とすることなど、マスク着用の緩和をしています。
回答者のうち、約77%が「同意できる」「やや同意できる」を選択しました。
県政の実効性を高めるための取り組み
今回山梨県が実施した「行政が実行した施策について、県民からの評価を集めて分析する」という試みは、全国的にも珍しいのではないでしょうか。これは、山梨県がいわゆる「EBPM」を重視し、ステークホルダーの意見や反応を積極的に施策に生かすことを徹底しているからです。
▼EBPM(Evidence-Based Policy Making)
証拠に基づく政策形成のこと
地方自治体が実施する政策は、これまで
- 市民の実情を反映しているか
- 市民に周知されているか・支持されているか
- 政策による効果があったか
といった点について、十分に検証されないケースも多々あったのではないでしょうか。
県政モニターなど県民の意見を聴取する機会があっても、頻度が低く、得られるサンプルも限定的でした。
今回のアンケートは、県民の意見や実情をより反映した行政を目指すため、トライアルとして実施。結果は前述の通り、多くの取り組みについて「良い・同意できる」といった好意的な回答を得ました。
ただ、一部の取り組みについては、否定的な意見やそもそも認知されていないケースもあり、今後の課題となりました。
このアンケートは準備から実査完了までおよそ1週間という、スピード感を持って実行できた取り組みです。これは「企画・実施・検証・改善のサイクルを適正に回す」という、EBPMを重視する姿勢と同時に「県民のための県政を実現する」という強い意志の表れと言えるでしょう。
県の担当者は「山梨県は今後も県民や事業者の実情を把握し、より効果的な政策の立案・実行ができるよう、県民とのコミュニケーションに努めます」としています。