「TRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業」第3期成果発表会を実施しました

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最終更新日: 2024.02.09

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「TRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業」第3期成果発表会を実施しました

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最終更新日: 2024.02.09

2023年3月10日に「TRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業」第3期成果発表会が実施されました。

本事業は、最先端技術やサービスを有するスタートアップ企業等に対し、経費支援や実証実験のフィールドマッチング支援など、産学官金のオール山梨体制で伴走支援をする事業です。2021年度より山梨県で実施しており、今回で3回目の取り組みとなりました。

成果発表会では、応募総数44社の中から採択された、スタートアップ7社による実証実験の成果を発表。後半は、取り組みの深掘りや山梨のスタートアップを熱く語るトークセッションも行われました。当日の様子をピックアップしてお伝えします。

「TRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業」とは

リニア中央新幹線が品川から名古屋までつながり、山梨県にも駅ができる予定です。劇的に環境が変わることを見据え、2020年に「リニアやまなしビジョン」を策定しました。

「リニアやまなしビジョン」に基づき、スタートアップの新しい技術やサービスの実証実験など、リニア開業効果の最大化に向けた取り組みをオール山梨で進めています。その中で始まったのが「TRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業」です。

第3期までの間に、21件のプロジェクトを支援・サポートしています。

採択企業7社による成果発表会の様子

「TRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業」第3期で採択された企業は、以下の7社です。

  1. 株式会社ヘッジホッグ・メドテック
  2. 株式会社テラ・ラボ
  3. ファストドクター株式会社
  4. 株式会社キッチハイク
  5. インフィック株式会社
  6. 株式会社コーピー
  7. アイリス株式会社

それぞれの成果発表の様子を紹介します。

1.株式会社ヘッジホッグ・メドテック

株式会社ヘッジホッグ・メドテックの発表の様子

株式会社ヘッジホッグ・メドテックは、頭痛治療用アプリの開発や企業向け健康経営サービスを提供している会社です。今回の実証実験では「頭痛による生産性低下の可視化と、疾患啓発及び医療機関との連携の実証」を行いました。

同社では「企業内で、頭痛による生産性低下を起こしている人がいるのではないか」という問題意識が高かったそうです。頭痛による経済損失は年間2.3兆円にも上ると言われていますが、健康診断の項目になるものではないために、企業では可視化できていませんでした。

実証実験では、生産性可視化サービス「健康経営サーベイ」を使い、協力企業に出社した従業員、延べ269名の健康状態を分析。そして、頭痛の受診勧奨プログラム「頭痛ヘッジfor健康経営」を用いて、頭痛についての学び直しや通院を促す取り組みを行いました。

実証の結果、大半の従業員が肩こり・頭痛などの体調不良を抱えて仕事をしていると明らかになっています。1年で見ると1カ月分くらいは、体調の影響を受けて働けていない計算になり、生産性への影響が大きいと実証されました。

2.株式会社テラ・ラボ

株式会社テラ・ラボの発表の様子

衛星や大型無人機の開発を行う株式会社テラ・ラボでは「航空リモートセンシング等を活用し、大規模災害発生時における災害対策DXの社会実装に向けた実証実験」を実施しました。

災害発生時の情報をスピーディーかつ網羅的に収集・共有できないかということで始まったプロジェクトです。

大規模災害発生時に、モーターグライダーやドローンを使い、初動体制の意思決定に役立つ地図情報を作成。避難場所や被害情報などを集約し、複数の自治体と同時に共有します。
実証実験では、大きな河川の堤防が2箇所壊れたことを想定した訓練を実施しました。初動期意思決定に有効となるべく設定した計測時間で速やかにデータを取得できるのか、データを取得したあと情報をスムーズに提供できるのか、重ね合わせる付属情報や操作など実際にデータを使ってどうだったのかを検証しています。

実証実験の様子(提供:株式会社テラ・ラボ

モーターグライダーとドローンによる地図情報の計測とオペレーションは、計画通りに進みました。データの共有も無事にできましたが「きれいな地図情報より、早く第一報をもらえたほうがありがたい」などの意見が協力した自治体から上がっています。

得られた意見は、今後のシステム改善と運用体制の構築に活用していくそうです。

3.ファストドクター株式会社

ファストドクター株式会社の発表の様子

救急医療現場の課題解決に取り組むファストドクター株式会社では「オンライン救急サポート」の実証実験を行いました。

軽症者の救急搬送が社会問題となっており、その数は年々増加傾向にあります。また、大多数の地域で外来診療のニーズが減少傾向に入っていて、在宅医療の拡充が求められている現状もあります。

このような背景から、在宅医療を24時間受けられるのが理想ではありますが、医師不足や体力面などで課題が多いのも事実です。

そこで、医師が対応できない夜間・休日において、同社がオンライン診療を行うことで、医師の負担軽減、不急の緊急搬送減少につなげます。

実証では、夜間・休日に初期救急医療のオンライン診療を実施。症状に応じて地域の医療機関や救急隊と連携を取ったり、診療後に医師の判断で処方薬を配送したりする取り組みを行いました。

実証実験のスキーム図(提供:ファストドクター株式会社

実証した結果、申し込みから診療開始までが約10分で可能になると判明しました。開始2カ月で累計28件の申し込みがあり、21件の診療が完了しています。6割が小児患者の家族からの申し込みで、特に6歳未満の利用数が顕著です。

相談症状は発熱や咳・痰、嘔吐などが多く、医師の診断の結果、95%以上が低緊急(在宅療養の継続または翌日以降の対面受診)となりました。

休日・夜間診療所や在宅当番医制の負荷軽減が見込まれるほか、軽症者の救急利用抑制に効果が期待できる結果が得られました。

4.株式会社キッチハイク

株式会社キッチハイクの発表の様子

株式会社キッチハイクでは、1~3週間の間、子どもを保育園に通わせながら、家族で地域に滞在できる「保育園留学Ⓡ」を提供しています。実証実験では「保育園留学を活用した地域と域外をつなぐ関係人口経済圏の創出」に取り組みました。

保育園留学を希望するキャンセル待ち家族が全国に2,500組いて、すでに需要はある状態です。しかし、受け入れる自治体や保育園側の不安を払拭しきれず、スムーズな意思決定が進まなくなっていました。

「保育園留学Ⓡ」の様子(提供:株式会社キッチハイク

そこで、ユーザーに対して優先的に正式募集開始の案内をする「正式募集お知らせ登録」と、プレオープン期間にモニターとして参加できる「モニターに応募」の仕組みを構築。4つの地域で実証実験をしました。

「正式募集お知らせ登録」は、目標数の2倍以上を上回る198家族からの登録がありました。登録することにメリットがあると感じたユーザーは98%にも上っています。

「モニターに応募」には首都圏在住の方が多く集まり、実証実験中にモニター留学した家族は3組でした。

これらの取り組みで需要を可視化したところ、正式オープンを希望する自治体が3地域、保育園が4園、宿泊施設が4件という結果が得られています。プレオープン期間を設けることで、地域の需要創出や受け入れ側の不安払拭ができると可視化された取り組みでした。

5.インフィック株式会社

インフィック株式会社の発表の様子

介護や介護DX事業などを行うインフィック株式会社では「ポータブルエコーを活用した、見守りシステムとの連携を介して実現する排泄業務DXプロジェクト」を実施しました。

ポータブルエコーを直腸と膀胱にあててスマホで可視化し、見守りシステム「LASHIC care」とデータを連係することで、ご利用者様ごとに排泄リズムを掴む取り組みです。

これまで排泄介助業務は、ベテランスタッフの経験と勘に頼ったり、マニュアルに沿って毎日同じ時間に実施したりするのが当たり前でした。可視化したデータによって排泄のリズムが掴めれば、新しい業務プロセスに取り組めます。

実証実験の結果、本来はトイレ誘導の必要がない可能性が高い時間にも、トイレへ誘導していたことが多いとわかりました。排泄介助にかけていた時間を約30%削減できると試算しています。人それぞれの排泄リズムに合わせれば、排泄介助の回数も減らせるそうです。

ポータブルエコーを活用し、排泄データを可視化することで、1日あたり1人40分もの時間削減が期待できます。

実証実験では、取得したデータをクラウドに取り込む予定でしたが未達成だったそうです。手動でのデータ分析に留まったものの、それでも有意義な結果は得られています。

実証実験に協力した介護施設からは「日常のケアに活かせる」といったポジティブな声が上がりました。

今後は、開発体制を強化してデータ連携の実現や、排泄パターンを自動生成するアルゴリズムのシステム実装を目指しているとのことです。

6.株式会社コーピー

株式会社コーピーの発表の様子

自動車関連のプロジェクトを中心に研究開発を行う株式会社コーピーは「製造業の生産性向上を実現する画像解析AIを用いた作業工程解析ソフトウェアの開発」を実施しました。

製造現場の録画のデータを用いて、通常と異なる工程サイクルを「作業者解析AI」が発見。そうすることで、今まで気が付かなかった異常を発見し、通知できるようになります。また生産技術者が問題視すべき工程を把握でき、早期の改善へつなげられます。

実際に協力企業の工場にて1週間分の動画を撮影し、検証を実施しました。ソフトウェアが各動作にかかる時間を測定したあと外れ値を検知すると、その動作を含んだ場面へ遷移する仕組みになっています。

そのときの様子を確認することで、何が原因で作業がストップしたのか把握が可能です。また、ベテランと新人による動作の違いを分析し、作業のバラつきや工程にかける時間などを可視化することもできます。

本来、人の目で見つける異常工程をAIが検知することで、人間が関わる時間を短縮できるとわかりました。短い運用の期間でも成果が得られ、解決すべきハード面・ソフト面の課題が明らかにできて良かったとのことです。

7.アイリス株式会社

アイリス株式会社の発表の様子

AI医療機器ベンチャーであるアイリス株式会社が実施したのは「咽頭画像診断の有用性検証プロジェクト」です。インフルエンザの陽性陰性の判定ができるAI搭載医療機器「nodocaⓇ」の実証運用を行い、nodocaの有用性検証を行いました。

インフルエンザの検査をする際、鼻の奥に綿棒を差し込むため、強い痛みや不快感を経験した人も多いはず。患者が子どもの場合は押さえつけて検査しなければならないケースもあり、付き添いの保護者も大変な思いをします。

「nodocaⓇ」は円筒状のカメラを搭載しており、口の中に入れて写真を撮るだけで検査ができるプロダクトです。つらい思いをせずにインフルエンザの診断が可能になります。

インフルエンザのほか、近年は新型コロナウイルスも蔓延。インフルエンザと新型コロナウイルスを間違えずにAIが判定できるのかを実証実験で確認しました。

精度の確認、検査時の痛みはないか、大規模病院に導入できるのかを研究目的にし、それぞれについて成果が得られています。

第3期審査員からの総評

第3期の審査員を務めた、株式会社シクロ・ハイジア 小林氏から、全体のコメントとして以下の3点をお話しいただきました。

  • 事業化するためのテストベット環境の提供は少なく、日本で実現できるところはほとんどないこと
  • 全国からスタートアップが集まり、地域との連携が生まれていること
  • 実証実験から半年で続々と成果が出ているのは驚異的であり、明確な課題が見つかっているのは素晴らしいこと

価値のある取り組みが行われた7社のスタートアップに対し、今後に向けてのエールが送られました。

トークセッションの様子

成果発表会後半では、「TRY YAMANASHI!事例から振り返るリニア実証実験事業」「みんなで語ろう!これからの山梨とスタートアップ」の2テーマでトークセッションを実施。ファシリテーターに株式会社MTG Venturesの藤田豪氏をお迎えし、熱いトークが繰り広げられました。

TRY YAMANASHI!事例から振り返るリニア実証実験事業

トークセッションの様子

スタートアップから、株式会社キッチハイク 鳥海彩氏と株式会社ヘッジホッグ・メドテック 石坂洋旭氏が登壇。連携パートナーからは、甲府市産業部産業総室 雇用創生課課長 浅川亜紀氏、フォネットグループ代表室室長 赤池浩一氏が登壇しました。

「TRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業」に参加して良かったことや難しかったこと、今後の課題についてトークを展開。

スタートアップからは「事業を軌道に乗せるところに実効性を感じました。連携パートナー探しなどにも協力いただいて、手厚くサポートしてもらえて良かったです。得られた課題は今後に活かしていきたい」などの声が上がっています。

連携パートナーからは「はじめはサポートすることに不安を感じていましたが、新たな可能性を探れる良い経験になりました。受け入れ側にもメリットがあります。山梨県の事業だから安心ですし、自治体側の理解があるのでスムーズに進められました」という感想がありました。

山梨県のサポートの手厚さを、スタートアップも連携パートナーも話されています。新しいことを始めるなら、スムーズに事業を展開できる環境がある自治体選びも大切です。

みんなで語ろう!これからの山梨とスタートアップ

トークセッションの様子

2つ目のトークテーマでは、以下の4名にご登壇いただきました。

  • シナプテック株式会社代表取締役 戸田達昭氏
  • 株式会社スクーミー代表取締役CEO 塩島諒輔氏
  • 株式会社エアロネクスト代表取締役CEO 田路圭輔氏
  • 山梨県リニア未来創造局リニア未来創造・推進課 課長補佐 齊藤浩志氏

こちらのトークセッションでも、山梨県庁の方との距離の近さやサポート体制の良さが話題に。山梨県が行っているスタートアップ関連イベント「Mt.Fujiイノベーションキャンプ」の取り組みを例に挙げ、サポート体制の手厚さが具体的に紹介されました。

山梨県のスタートアップや県外からの移住者とイノベーションを進めていくには「山梨で成功する人を増やし、外から来た人も成功できるようにサポートする環境づくりが必要」というお話しもありました。うわべの連携ではなく、戦略的に連携した体制づくりが大切です。

新しい事業を始めるときには、地域住民を巻き込まなくてはなりません。山梨は新しいことに寛容な住民が多いため、何か始めるときの土壌としては最適です。

登壇者からは「山梨で成功する環境やサポートは整っており、将来のフィールドは県外や世界に広がっています。山梨からでも大きく羽ばたいていくことが可能です。一緒に新しい未来をつくっていきましょう」と、これから新しい挑戦をしたいスタートアップへ応援のメッセージが送られました。

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