※2023年8月に甲斐ベリー7は新たな名称として「サンシャインレッド」として商標登録されました。
ブドウ生産量日本一を誇る山梨県。農林水産省の調査によると、日本におけるブドウ収穫量の25%が山梨県で生産されています。
さまざまなブドウが生産される中、シャインマスカットの血を引く赤いブドウ「サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)」が誕生しました。今後のブドウ生産の柱として期待される、山梨県オリジナル品種です。
サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)が開発された背景や今後の展開について、山梨県果樹試験場の開発担当者と、山梨県の農産物の生産振興や販売支援に取り組む担当者に話をうかがいました。
INDEX
サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)とは?
サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7。読み方:かいべりーなな)は、2022年1月に品種登録されたシャインマスカットの血を引く赤いブドウです。山梨県オリジナル品種の赤系ブドウ「サニードルチェ」と「シャインマスカット」をかけあわせて誕生しました。
▼サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)の特徴
・鮮やかな赤色の果実。
・種がなく、皮ごと食べられる。
・マスカットの香りがとても強く、食味に優れる。
・糖度は19度程度で甘さが際立つ。
シャインマスカットの華やかな香りと甘さを有していること、食味が優れているところが大きな特徴です。親品種が持つ、それぞれの特徴を引き継いでいます。
では、サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)は、どのようにして誕生したのでしょうか。
関係者から求められた赤色で皮ごと食べられるシャインマスカット
サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)を開発したきっかけは、ブドウを生産・販売する関係者から要望の声が上がったことでした。
「当時、山梨県の農家さんや市場、ブドウを販売する方々から『シャインマスカットの特性を引き継ぎながら、赤い色で皮ごと食べられるブドウをつくってほしい』という声があり、開発することになりました」と、山梨県果樹試験場の開発担当者は話します。
それまで、赤色で皮ごと食べられるブドウはあったものの、シャインマスカットのような品種はありませんでした。シャインマスカットと比較して遜色ない品種が求められたことで開発がスタートしたそうです。
また、緑色と赤色の房を並べると見た目の彩りが良くなり、ブドウの販売促進が有利に進められるといった期待も込められていました。
複数年の調査・研究で生き残ったのがサンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)
「サニードルチェ」と「シャインマスカット」を初めてかけあわせたのは2007年。サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)が品種登録された2022年まで、15年もの年月をかけて開発が行われました。
大まかに次のような流れで、調査・研究が毎年繰り返されます。
- 異なるブドウを交配し、一粒ずつ種を取る。
- 種まきをして小さな苗を育てる。
- 畑に植えて果実を実らせる。
- 果実調査を行う。
- 果実品質や栽培特性が優れたブドウを選抜する。
毎年、複数のブドウを組みあわせて交配します。種から育てる苗は、毎年100~150ほどの数になるそうです。
「たくさんの苗が畑に植わっていて、果実がなったブドウからひとつずつ房を収穫して調査します。果実の品質が良ければ、また来年も調査しますが、少しでも優れた特長がないブドウは木ごと伐ってしまうんです。厳しい調査を数年間繰り返す中で、選抜されて生き残ったのがサンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)です」
やっと優れたブドウがあっても、1年だけでは気候による影響などが判断できないため、5年以上の調査を通してブドウの特性を確認しているそうです。
また、開発をする中で大切にしていたのは「皮ごと食べられること」と「おいしいこと」。
「果実がなったら、一粒ずつ食べて味を確認していきますが、なかなか皮ごと食べられるブドウができることはありません。なかには味が悪いブドウもあります」
実際に味を確かめながら長い年月を経て選抜したことが、サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)の香りの強さや優れた食味につながっています。
長い期間をかけて調査・研究を重ね、ようやく誕生したサンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)。品種登録されるまでに、大きな苦労と努力があったとうかがえます。
ふるさと納税の返礼品で注目を集めたサンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)。今後の販売予定は?
2022年に果樹試験場で収穫されたサンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)は、山梨県のふるさと納税の返礼品になりました。10〜12万円と高額な寄付金額にもかかわらず、用意された50房が3日で完売し、予想を超える反響だったそうです。
完売したあとも「追加はないか?」といった問い合わせがあり、サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)への興味・関心の高さがうかがえます。
ここで気になるのが、サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)の入手方法。「具体的な購入方法はある?」「今年も、ふるさと納税の返礼品に登場するの?」と気になっている人もいるのではないでしょうか。
山梨県の農産物の生産振興や販売支援に取り組む担当者に話をうかがいました。
「2020年から、サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)の生産を希望する農家さんに対して、苗木の供給が始まりました。2年間で約6,000本の苗木を供給しています。
しかし、苗木を植えた年にブドウの収穫を迎えるわけではありません。本格的に市場に出回り、消費者の皆さんの元へ十分な量を届けるには、もう数年程度はかかると想定しています。
早期に県内で産地化できるよう、苗木の安定供給や高品質化に向けた生産技術の統一などを、関係機関と一緒に進めているところです」
現在は、本格出荷に向けて生産の安定化を目指し、販売方法などを検討している段階です。サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)を食べられる日が待ち遠しいですね。
ふるさと納税の返礼品についても、生産量などを考慮して検討するとのことです。山梨県へふるさと納税ができるサイト「さとふる」で新しい情報をチェックしてみてください。
自慢の新品種、サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)を多くの人に食べてもらいたい
サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)に期待することや想い、今後の展開について話をうかがいました。開発担当者は、次のように話しています。
「サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)の食味や香りは、シャインマスカットに負けない自信があります。とてもおいしいブドウですので、多くの皆さんに味わってもらいたいです。しかし、そのためには農家さんに作ってもらわなくてはなりません。
サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)の試験は品種登録をしたから終わりではなく、まだ続いています。より農家さんが栽培しやすい方法を検討しています。
品質を向上させる試験も引き続き実施して、農家さんのためになる研究成果を提供していきたいです」
そして、農産物のプロモーションに取り組む、県の担当者にも話をうかがいました。
「山梨に食味や香りに優れる、すごいブドウがあることを多くの皆さんに知ってもらいたいです。開発されたストーリーを発信したり、実際に試食できる機会を設けたりして、サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)の価値を皆さんに認めてもらえるような販売促進をやっていきたいと思っています。
プレミアム感のあるブドウですので、自分へのご褒美や贈答用などとして手に取ってもらいたいですね。
また、山梨県では「おいしい未来へ やまなし」をキャッチフレーズに、農畜水産物の魅力を広くアピールしています。サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)が山梨県のオリジナル品種だということを全面に出し、県の代表選手として認知してもらえるように発信していきたいです。
山梨県は日本一のブドウの産地です。サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)が、県内産ブドウの柱のひとつになることで『ブドウ生産量日本一』のブランドが確固たるものになると期待しています」
サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)は、山梨県が誇る自慢の新品種であることがわかりました。そして「多くの人に食べてもらいたい」という熱い想いも伝わってきます。
一般的に流通するのは、もう少し先になりそうです。販売しているところを見かけた際には、サンシャインレッド(品種名:甲斐ベリー7)が持つ豊かな香りと食味、甘さをぜひ味わってみてください。