山梨のフルーツで新しいスイーツを開発!若手パティシエ育成プログラム

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最終更新日: 2024.11.15

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山梨のフルーツで新しいスイーツを開発!若手パティシエ育成プログラム

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山梨では1年を通してさまざまなフルーツが生産されていて、ブドウやモモは生産量全国1位を誇ります。
山梨のフルーツはそのまま食べても絶品ですが、スイーツに使うとさらに魅力が引き出されます。そのため多くの有名料理店や菓子店で、スイーツの食材として利用されています。

そこで山梨県では県内を訪れた方にもっと県産フルーツを使ったスイーツを味わってもらおうと、県内の若手パティシエを育成し、県産フルーツを使った新しいスイーツ開発を進める「若手パティシエ伴走支援プログラム」を始めました。

今回は本プログラムに参加したパティシエと指導を担当したシェフにインタビューを実施。プログラムの内容や学んだこと、新作スイーツの開発秘話などを伺いました。

「若手パティシエ伴走支援プログラム」とは

「若手パティシエ伴走支援プログラム」は、若手パティシエが有名シェフらから講義・指導を受けて技術を磨きながら、県産フルーツを使った新作スイーツを開発。県立博物館併設のカフェで試験販売を行うプログラムです。

講義などの主な内容は次の通りです。

■支援担当専門家

・ 金子博文 氏:「銀座ウエスト青山ガーデン」シェフ、「Museum café Sweets lab. 葡萄屋kofu」グランシェフ
・ 古屋浩 氏:「Museum café Sweets lab. 葡萄屋kofu」オーナー ほか

■レクチャー内容

素材講習(3回)
製造指導、技術指導(各1回)
一般講習会
商品開発サポート

■新作スイーツの試験販売

山梨県立博物館「Museum café Sweets lab. 葡萄屋kofu」にて期間限定で販売(2024年3月〜6月)

講習での学びを生かしてモモとあんこのケーキを開発!県内での人脈づくりにもつながった

若手パティシエ伴走支援プログラムは2024年1月にスタートしました。

プログラムの1期生で、和洋菓子店で働くパティシエの松田雄太さんに、応募の経緯やプログラムで学んだこと、開発したスイーツの詳細などをお聞きしました。

「桃源の郷・菓子処つるや」松田雄太さん

松田雄太さん
「桃源の郷・菓子処つるや」(南アルプス市)チーフ。山梨県出身。東京の専門学校を卒業後、東京の菓子店に勤務。2021年ごろに山梨にUターンし「つるや」に入社。

――松田さんの普段の仕事内容、パティシエになった経緯を教えてください。

大正時代から続く老舗の和洋菓子店「桃源の郷・菓子処つるや」で、和菓子と洋菓子の製造・開発を行っています。

子どものころから料理を作るのが好きで、「つるや」の店主である叔父のお菓子を作る姿に憧れて、菓子職人を目指すようになりました。
県内の高校を卒業した後、東京の専門学校で学び、都内のいくつかの洋菓子店で働きました。そこでいろいろな技術を学んだのですが、将来は「つるや」を継ぐつもりだったため、和菓子の知識や製造スキルをつけるためにUターンを決意。3〜4年程前に山梨に戻り、「つるや」で働きながら、叔父から和菓子づくりを学んでいます。

桃源の郷・菓子処つるや

――今回のプログラムに応募した理由を教えてください。

たまたま叔父が知り合いからプログラムのことを聞き、私に「応募してはどうか」と勧めてくれました。
実はUターンするまでずっと東京で働いていたこともあって、県内にあまり仕事上のつながりがなかったんです。このプログラムに参加すれば洋菓子づくりやフルーツの加工を学べるほか、人脈づくりもできるかもしれないと思い、応募することにしました。

古屋浩オーナーによる素材講習

――1期生に選出され、5回にわたって素材講習や技術指導を受けました。具体的にどういったことを学びましたか。

講習では化学的な根拠をふまえた食材の相性などを教えていただきました。
その中でも特にフルーツに合わせて使う砂糖を変えるという点は、それまでなかった視点でとても勉強になりました。今ではお店での菓子づくりの際に、食材に合わせて砂糖を使い分けています。

また金子シェフはフルーツの生かし方が素晴らしく、いろんな加工法を知ることができました。金子シェフがつくった細工菓子も見せていただいたのですが、本当にキレイでしたね。プロの技術を目の前で見ることができたことは大きな学びになりました。

プログラムで開発された新作スイーツ「桃っこ」

――プログラムの中で「桃っこ」というケーキを開発されました。ケーキの特徴やこだわり、開発の苦労などを教えてください。

「桃っこ」はモモのジュレ、あんこ、抹茶のムースを層状にしたケーキです。
つるやでは和菓子と洋菓子の両方を製造していることから、あんこを使ったケーキを作りたいと思っていました。そこであんこに県産のモモを組み合わせることにしたんです。モモの味が負けないように、あんことのバランスを考えるのが大変でしたね。

金子博文シェフからの直接指導

――金子シェフからは試作品に対してどういったアドバイスがありましたか。またそのアドバイスを受けて、どのように改良しましたか。

「『桃っこ』という商品名を見たお客さまが想像する味のイメージをよく考えるように」というアドバイスをいただきました。そこでモモの存在をより強く感じられるように、ジュレに使うモモの実を大きめにカットするようにしました。
またケーキの土台部分にパイ生地を使用し、ケーキを口に入れた際にパイ生地やモモの果実など、食感の変化を楽しめるように工夫しました。

――期間限定での発売でしたが、「桃っこ」は博物館カフェで人気だったそうですね。

そう聞いています。つるやでも販売したのですが、みなさん「美味しかった」と言ってくださり、うれしかったですね。
お店のお客さんや知り合いにはフルーツ農家が多いので、今後も県産のフルーツを使い、和菓子と洋菓子を組み合わせた商品を開発していきたいと思っています。

――今回プログラムに参加したことで、松田さん自身にどのような変化がありましたか。

技術や知識の面で勉強になったのはもちろんですが、県内で横のつながりができたという点は大きな収穫でした。

プログラムの関係者、講習会の参加者にはパティシエ以外にフルーツ農家、パン屋などいろんな方がいました。みなさんから生産者ならではのフルーツ加工の知恵、パン作りのコツなどさまざまなことを教えてもらいました。
県内の人脈も広がり、参加して本当によかったと思っています。

――最後に今後のプログラムへの参加を検討している方にひとことお願いします。

金子シェフをはじめ、プログラムに関わっておられる方々は有名な方ばかりで、最初はとてもドキドキしました。ですが金子シェフはびっくりするくらい優しい方ですし、ほかの方々も気さくに話しかけてくださって、すぐに緊張がほぐれました。
もし敷居が高いと参加を迷っているなら、恐れずに応募することをおすすめします。一歩踏み出して輪の中に入ってみることで、きっと多くの学びが得られるはずです。

私も「つるや」で製造・開発を続けつつ、今回の経験を糧にどんどん新しいことにも積極的に挑戦していきたいと思っています。

「若手パティシエの可能性を引き出したい」「山梨に恩返しがしたい」。金子シェフの思いとは

「銀座ウエスト青山ガーデン」金子博文シェフ(本人提供)

――今回のプログラムでは若手パティシエを伴走支援する専門家の1人として、直接松田さんの指導にあたられました。東京の洋菓子店でシェフをされていますが、山梨のプログラムに携わることになった経緯を教えてください。

山梨は私にとって特別な場所なんです。
山梨には日本でも有名なフルーツ農家が何軒もあって、注文するといつも最高の状態の食材を提供してくれます。しかもその生産者の方が、「スイーツに適したブドウがあるよ」と別の生産者を紹介してくださるケースも多く、いろんな生産者とつながることができました。

みなさんお菓子づくりに全面的に協力してくれて、何か困ったことがあればすぐにサポートしてくれる。家族のような存在です。だから「いつか山梨の生産者に恩返しがしたい」と思っていたんです。

今回のプログラムには、県立博物館併設のカフェ「Museum café Sweets lab. 葡萄屋kofu」のグランシェフとなり、県主催の講習会の講師なども務めているといった経緯から、携わる機会をいただきました。

――松田さんとは初対面だそうですが、プログラムを経て松田さんはどのように成長したと感じますか。

松田さんはとても真面目な方で、講習で私の話を聞いたり、お菓子作りをそばで見ていたりするときはいつも真剣な顔をしていました。その様子から、たくさんのインスピレーションを受け、多くを学びとってくれたのだと感じました。
「桃っこ」も試作品に対する私のアドバイスを聞いて改良し、より“モモ感”のあるケーキになりました。博物館カフェでも店頭に出すとすぐ売れていたと聞いています。

パティシエの講習などで、新商品を考えるという内容はよくあるのですが、実際の販売まで行うのはかなり珍しいと思います。今回新たなスイーツを生み出し、販売の体験までできたことは、大きな成果だと思います。

金子博文シェフによる一般講習会

――今回携わった感想、また若手パティシエの育成について金子シェフの思いを教えてください。

松田さんは叔父さんをとても尊敬していて、将来は店を継ぎたいと言っていました。私が伝えたことが、彼の役に立ったのであればうれしいですね。
プログラムは終わってしまいましたが、松田さんとのご縁は大事にしたいですし、私が博物館カフェにいるときに来てくれれば質問にはいくらでも答えるつもりです。

私はこのプログラムを通して、若手パティシエのみなさんがそれぞれ持つ可能性を引き出していきたいと思っています。
今後の参加者のみなさんにも、実りのある内容をお伝えしていきたいですね。

まとめ

山梨県では今後もスイーツコンテストを開催するなど、県産フルーツを使ったスイーツ開発を後押ししていきます。
新作スイーツが次々と誕生すれば、山梨が「フルーツ王国」のみならず「スイーツ王国」と呼ばれる日もくるかもしれませんね。

みなさんも山梨にお越しの際は、ぜひ県産フルーツの魅力を存分に生かしたスイーツを味わってみてください。

<インフォ>
Museum café Sweets lab. 葡萄屋kofu」

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