日本有数のジュエリー産地である山梨県。日本で最初に宝石の単位(カラット)が制定された1909年11月11日にちなんだ「ジュエリーデー」を前に、山梨県ジュエリー協会と甲府商工会議所は毎年、ジュエリーを身近に感じられるイベントを開催しています。今年も11月2~3日、甲府市内を中心とした多数のジュエリー関係者が参加し、ジュエリーの製作体験や展示、ワークショップなど、ジュエリーの魅力を発信する多彩な催しが開かれました。
INDEX
ジュエリー産地山梨の歴史は、江戸末期から
山梨のジュエリー産業は、奥秩父の主脈に属する山の一つである金峰山一帯から産出する水晶をきっかけに始まりました。山梨では、江戸時代末期から「水晶工芸=水晶研磨」と「貴金属工芸(宝飾=錺(かざ)り)」の2つが別々の仕事として発展してきましたが、明治中期に2つの産業が結びつき、装身具の生産が盛んになったのです。
その後、山梨のジュエリー工房やデザイナーは、戦時中の空襲による被害、バブル崩壊後のジュエリー市場の低迷といった困難を乗り越えながら、高い技術を活かしたもの作りに加え、山梨のジュエリーの魅力発信など、新たな試みも積極的に進めています。
「やまなしJEWELRY WEEK 2024」とは
山梨のジュエリーの魅力を知ってもらおうと、山梨県ジュエリー協会と甲府商工会議所は毎年秋、「やまなしJEWELRY WEEK」を開催しています。
今年は、以下のような催しが開かれました。
・ゆめ・きら・マルシェ
山梨県庁噴水広場に、アクセサリーやパン、焼き菓子などたくさんのショップが並びました。来場者は、色とりどりのヘアアクセサリーやピアス、ネックレスなどの買い物を楽しんでいました。
・ジュエリーワークショップ
手描きのジュエリーデザインの基礎を学んだり、iPadを操作してオリジナルジュエリーをデザインしたりするワークショップが開かれました。
・ジェム&ミネラルエリア
甲府市内のジュエリーショップが集まり、宝石や鉱物を展示・販売しました。
・やまなしジュエリーショップJewelry Weekフェア
来場者は、プロポーズジュエリーの相談をしたり、カラーコーディネーターからパーソナルカラー診断に基づく似合うジュエリーのアドバイスを受けたりしていました。
・プロダクトファッションショー
山梨を代表する地場産品である甲州印傳や郡内織物、甲府ジュエリーをまとったモデルたちによる華やかなファッションショーが開かれました。
・キッズジュエリープログラム
子どもたちがネックレスやブレスレットを手作りし、楽しみました。完成後は自分だけのジュエリーを身に着け、家族と一緒に写真撮影を楽しんでいました。また、2日目には、山梨在住のファッションモデル 前田一翠さんによる、ウォーキングやポージングのレッスンも受けた後、自分たちで作ったジュエリーとお気に入りの洋服でファッションショーも行いました。
・ジュエリーツーリズム
来場者は、甲府市内のジュエリー工房を見学したり、ジュエリー製作を体験したりと、思い思いに山梨のジュエリーの魅力に触れていました。
今回の記事では特に、プロダクトファッションショーおよびジュエリーツーリズムの様子をご紹介します。
プロダクトファッションショー
3日には山梨県庁噴水広場で、甲州印傳や郡内織物、甲府ジュエリーをまとったモデルたちによる華やかなファッションショーが開かれました。
モデルたちは甲州印傳のバッグや郡内織物のストール、きらびやかなネックレスやイヤリングを身に着け、ランウェイを歩きました。今回のファッションショーは初の屋外開催となり、青空のもと、県指定 有形文化財の山梨県庁舎別館をバックに歩くモデルたちは、家族連れや若者を中心とした多くの観客から盛大な拍手を受けていました。 ファッションショーの終わりには、甲府商工会議所の進藤中会頭があいさつし、「甲府にはジュエリー、印傳、織物がある。山梨の地場産業を応援していただきたい」と呼びかけました。
ジュエリーツーリズム紹介① 土屋華章製作所
湯村温泉郷の入り口にある水晶彫刻工房「有限会社土屋華章製作所」では、参加者たちが「宝石のまち甲府」の源流である水晶貴石細工の伝統技術を見学し、水晶玉磨きを体験しました。伝統工芸士からアドバイスを受けながら、研磨用の機械で白っぽい水晶玉を磨き、透明で透き通った水晶玉ができると、参加者たちは「きれい」と歓声を上げていました。
土屋華章製作所の代表取締役で伝統工芸士の土屋隆さんにお話をうかがいました。
――土屋華章製作所は、200年以上の歴史をもつ製作所なのですね。
1821年、御岳山昇仙峡に住む宮司だけのものだった水晶加工技術を、初代の宗助が会得し、前身の「玉潤堂」を創業しました。そして明治時代末期に4代目の華章が、モーターで動く研磨加工用動力機械を開発し、水晶をいろいろな形に加工できるようになりました。これが山梨のジュエリーの源流の一つです。
――体験を通じて、参加者の皆様はどんなことを感じている様子でしょうか。
普段は入れない工房に入り、山梨のジュエリーの歴史や水晶について深く知っていただくことができたのではないかと思います。皆様、熱心に工房をご覧くださって、ありがたいですね。山梨のジュエリーのストーリーを知ったうえで、さらにジュエリーに親しんでいただければうれしいです。
――今後の展望を教えてください。
今後も水晶加工の技術をしっかりと継承していきたいです。この技術は山梨で開発され、山梨で発展して今に至る貴重なものです。若い世代にも受け継いでいき、産業全体を発展させていきたいですね。
土屋華章製作所 | 山梨県甲府市にある水晶貴石細工の会社です (tsuchiyakasho.jp)
ジュエリーツーリズム紹介② VENEZIA
ジュエリーのECサイト「VENEZIA」を運営している株式会社世界貿易は、宝石採掘体験や宝石ガチャ、ジュエリー展示会、宝石をイメージした色とりどりのドリンクを楽しめる「JEWELRY CAFE」を開催しました。
宝石採掘体験では、参加者がライト付きのヘルメットをかぶり、暗い洞窟を模したスペースを探検しました。子どもたちも土をスコップで掘って、オパールなどの宝石を見つけ、「大きい宝石、とれた!」と喜んでいました。
洞窟コーナーのすぐ近くでは、研磨したオパールなどの石が1,000~10,000円で販売されており、自分のお小遣いでほしい石を買う子どももいました。
世界貿易代表取締役社長のソンキヤ・ナビンさんにお話をうかがいました。
――宝石採掘体験や宝石ガチャなどの催しを通じて、参加者の皆さんにどんなことを感じてほしいですか。
甲府は「宝石の産地」と言われるぐらい多くの宝石が集まっています。ですがお子さんたちはそんなことを知らないので、宝石採掘体験や宝石ガチャを通じて、宝石に興味を持ってほしいですね。そしていずれはデザインや販売など、さまざまな関わり方で、宝石業界に入ってくれる新しい世代が生まれてくれたらうれしいです。
――お子さんたちの反応はいかがですか。
とても盛り上がってくれていると思います。イベントは3年目ですが、これまでに来てくれたお子さんが今年も宝石を買いにきてくれたり、宝石について勉強したりしてくれています。
――宝石の魅力はなんでしょうか。
キラキラした宝石を身に着ければ、パワーをもらえて、自信を持って外を歩けます。そういう宝石の魅力を知ってもらえればうれしいですね。
株式会社 世界貿易 – 山梨県甲府市 (sekaiboeki.jp)
山梨ジュエリーミュージアムでは、通年で体験・見学も
甲府市の山梨県防災新館1階にある「山梨ジュエリーミュージアム」では、山梨のジュエリーの歴史や、山梨で活躍するジュエリー職人の作品、ジュエリー製作に欠かせない道具などが展示され、ジュエリーについて深く知ることができます。時期ごとに変わる企画展示もあります。
土、日、祝日には貴金属加工、宝石研磨、水晶美術彫刻の職人の作業の様子を見学できます。宝石研磨や貴金属加工、バロック真珠を使ったペンダント制作などの体験もできます。
詳細は、以下のサイトをご覧ください。
また、山梨県内には、ジュエリー製作体験や研磨体験、工房見学をできる以下のような施設もあります。予約が必要な施設もありますので、詳細は各施設にお問い合わせください。
Lucky&Co.,Ltd.(ラッキーアンドカンパニー)|ジュエリーのOEM・製造卸・企画開発
ジュエリーのOEM、ODM、販売集客企画、技術力なら| 株式会社石友
終わりに
山梨には、ジュエリー産地としての歴史と伝統があり、個性豊かなジュエリーがそろっています。買い物だけでなく、ミュージアムやオープンファクトリ―の見学、体験なども通じて「宝石のまち甲府」を知って、山梨のジュエリーに親しんでいただければ幸いです。そしてぜひ、来年のJEWELRY WEEKにもいらしてください。