山梨大学で「医療機器産業」「水素・燃料電池産業」の人材養成講座事業化コースを開講

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最終更新日: 2024.12.17

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山梨大学で「医療機器産業」「水素・燃料電池産業」の人材養成講座事業化コースを開講

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最終更新日: 2024.12.17

2024年8月28日(水)、山梨大学で「医療機器産業」「水素・燃料電池産業」の人材養成講座事業化コースの合同開講式が行われました。医療機器や水素・燃料電池製品の開発・製造に必要な知識や技術の習得を目指す両講座の事業化コースは、今年度、新たに設置され、事業化に向けての企画提案や事業化計画立案に必要な力を身につけることを目指したものです。

今回は、山梨県と山梨大学における医療機器産業、水素・燃料電池産業の人材育成に向けた取り組み、新たに設置した事業化コース開設のねらい、今後の展望についてご紹介します。

これまでの人材育成の取り組みについて

<医療機器産業技術人材養成講座>

医療機器産業は、国内市場規模が約4兆円と大きく、今後も市場規模が拡大していくと予想されています。また、医療機器は、精密な加工を要するものも多く、山梨県のものづくり企業が培ってきた高い技術力の活用が期待できる産業分野です。そこで、山梨県と山梨大学は、医療機器に必要な技術・知識等を習得する機会を提供することを目的とし、2015年度より「医療機器産業技術人材養成講座(一般コース)」を開設してきました。これまでの9年間で178名が修了し、修了生輩出企業では部材供給での参入実績だけではなく、大手メーカーとの取引に発展する事例も見られるなど、今後さらなる参入拡大が期待できます。

<水素・燃料電池産業技術人材養成講座>

「水素」「燃料電池」は、脱炭素社会推進、新産業創出、雇用拡大などに貢献可能な技術分野として期待されています。水素・燃料電池産業分野への参入にあたっては、具体的な設計、製品開発、性能評価等を行うための高度で専門的な知識を必要とするため、人材育成が不可欠であるとして、山梨県と山梨大学は、2016年度より「水素・燃料電池産業技術人材養成講座(一般コース)」を開設してきました。これまで、8年間で64団体・企業の161人が修了し、修了生輩出企業では県外企業との技術連携や取引が始まるなど、少しずつ効果が出始めています。

事業化コース開設目的・主な内容

両コースの修了者が所属する企業が医療機器産業、水素・燃料電池産業のそれぞれに進出するなど着実な成果は生み出されていたものの、ビジネスに向けての企画立案や中長期的な事業化計画のハードルは高く、受講はしたものの、採算性など事業化への不安を持ち、参入に踏み出せない団体、企業も存在しています。

そこで、山梨県と山梨大学は今年度、2コースで「事業化コース」を開設し、受講者には、事業化に向けて必要な知識を身につけていただくことを目指しています。

<医療機器産業技術人材養成講座事業化コース>

このコースでは、以下の内容について計10コマ、15時間かけて学びます。主な内容は、以下の通りです。

【内容】
経営戦略、事業化のポイント、医療機器製造に関する要素技術、製造ライン見学、
医療機器関連の施設、展示会での情報収集 等

<水素・燃料電池産業技術人材養成講座事業化コース>

このコースでは、計14コマ、20時間にわたって、以下の内容を学びます。最終的には、来年2月に開催される国際水素・燃料電池展で商談活動をすることを目指します。主な内容は、以下の通りです。

【内容】
国内外市場動向、技術マーケティング戦略、提案書作成、
展示会での情報収集・営業活動、フォローアップ 等

開講式の様子

開講式の様子

2講座の合同開講式は山梨大学で行われ、両講座の受講生計15人が出席しました。

山梨大学の中村和彦学長は「受講生の皆様には、習得される事業化に関する知識や考え方を、今後の皆様の業務、さらには企業の関連産業への参入のためにご活用いただければと考えています」と述べました。

山梨県の有泉清貴産業政策部長は受講生に向けて「水素・燃料電池、医療機器関連産業の両分野は、本県企業の高度な技術を横展開することで多くの企業参入が期待できる魅力的な分野です。市場獲得に至るまでのノウハウをしっかりと身につけていただき、各企業における中核人材としてご活躍されることを期待しています」とエールを送りました。

今後の展望

今後の2コースの展望について、医療機器産業技術人材養成講座を担当する三澤裕・融合研究臨床応用推進センター特任教授と水素・燃料電池産業技術人材養成講座を担当する岡嘉弘・水素・燃料電池技術ナノ材料研究センター客員教授にお話を伺いました。

<三澤特任教授>

三澤裕・融合研究臨床応用推進センター特任教授

――事業化コースに期待すること

「今回は事業化コースということで、幹部の皆さんを対象としています。今まで一般コースは、医療機器の技術者の育成を目的に実施してきました。しかし、経営層が医療機器について理解し、そして医療機器関連産業に参入する際に戦略を立てられることが非常に重要です。そのために、市場環境、競合の状況、医療機器製販業が求める技術などを学んでいただき、自社の戦略を立てるのに役立てていただきたいと思っています。」

――山梨県内の医療機器産業の今後の展開について

「製販業になるのではなく、製販業に部材や技術を供給していくことが現実的な進め方であると思っています。そこで、医療機器に用いられる技術やノウハウを学び、経験値をしっかりと作っていただいた上で、次のステップである製販業にトライしていくことが重要です。さらに、ドクターとのコミュニケーションからニーズを理解できるようになり、自社の技術とニーズをしっかりとマッチングさせて、自社で製品を作り、事業化につなげるというシナリオが描ければ良いと思っています。」

<岡客員教授>

岡嘉弘・水素・燃料電池技術ナノ材料研究センター客員教授

――事業化コースに期待すること

「受講はあくまでも手段であり、目的は水素・燃料電池産業分野への参入です。実際に参入する企業にとっては、自社が継続的に事業を実施できるのか不安な部分もあると思います。参入にあたっては、企画提案力が必要となります。事業規模や採算性といった事業計画にまつわること企画提案力を本コースで身につけて、参入に対する不安を取り除いてもらいたいと思います。」

 ――今後の県内の水素・燃料電池産業の発展について

「山梨県と山梨大学が取り組んでいる水素・燃料電池関連の基幹産業化に向けて、裾野を拡大していくことが大事です。事業化コースを行うことで、より裾野が広くなると考えています。山梨大学の技術指導力に県内企業の技術力が融合すれば、強靱な基盤が形成できるでしょう。」

参加者の声

2コースの受講生に、参加のきっかけや感想をお聞きしました。

<医療機器産業技術人材養成講座事業化コース>

株式会社市村製作所(精密順送プレス金型設計製作/精密電子部品プレス加工)
代表取締役 市村悟様

――受講のきっかけ、理由

「今日まで私たちの稼ぎ分野は、携帯電話やパソコンなどがメインですが、『携帯電話の部品を作っています』と『医療品を手掛けています』では、対極をなします。前者では極論の話になりますが、もはや、若い方たちの心に響きづらいという現実を知り得ました。すなわち、リクルート活動でも人が集まらない根源がわかりました。」

――印象に残った授業の内容
「世界および日本の医療機器市場の現状を知り、私たちが普段使用している材料が医療分野で欠かせないものだと、三澤特任教授よりうかがえました。出口の見えないトンネルのようでしたが、少しばかりの活路を見出せました。また、やまなし産業支援機構やメディカル・デバイス・コリドー推進センターの存在により、今までは敷居の高かった医療機器業界に県内の中小零細企業が一歩踏み出しやすいということに気づけました。」

――講座を今後どう生かしていきたいか
「通常の講座とは違い、より医療機器ビジネスの視野を広げていける内容や機会の場となっており、利益を導き出すビジネスとして挑んでいく必要に迫られていると感じます。子どもたちに夢を与える分野として、堂々と『市村製作所は、世の中に役に立つことをやっている会社』なのだと証明するために、覚悟をもって臨んでいく所存です。」

<水素・燃料電池産業技術人材養成講座事業化コース>

株式会社ミラプロ(真空関連部品の設計・開発・製造、各種製造装置の組立て(半導体、液晶、クリーンエネルギーなど)など )
マーケティング事業推進課 主任 鈴木真実様

――受講のきっかけ、理由

「弊社では2022年から高効率な水素液化を目的とした磁気冷凍水素液化装置の開発を行っています。これは国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の未来社会創造事業『磁気冷凍技術による革新的な水素液化システムの開発』のプロジェクトに沿ったものであり、今後の水素社会普及に向けたカギとなる技術と考えています。

昨年より水素・燃料電池産業技術人材養成講座の一般コースを技術者が受講しており、関連技術や知見を学ばせていただきました。

今回の事業化コースを受講することで、具体的なマーケティング戦略や市場分析に関する考え方や手法を習得し、弊社の水素事業をより戦略的に推し進めることができるようになるいい機会だと思い受講しました。」

――印象に残った授業の内容

「講座のメインであるマーケティング戦略立案の課題演習は特に印象に残っています。市場や顧客・競合の分析を改めて行うことで、従来では漠然としていた部分がより明確になったと感じています。また、講座に参加された受講企業の皆様の発表から、違った視点での業界分析を聞くことができたことも学びにつながりました。

併せて、発表課題作成の中で新たな競合になりえる企業の情報を得ることもできました。

ただ、先生はなかなかスパルタで、課題の資料作成は大変でした。そのかわり、フォローも手厚く対応いただけて、隔週の講座とは別でWEB会議での相談時間を各社に設けていただけていたので、細かな質問までさせていただくことができました。」

――講座を今後どう生かしていきたいか

「水素事業をより戦略的に推し進めるツールとして活用できればと考えています。

弊社の水素液化システムはまだまだ研究段階ではあるものの、技術開発と並行して、マーケティング戦略を企画していくことは事業拡大にとって、非常に重要なことだと思います。

講座で得た考え方、作成してきた企画案、戦略をさらにブラッシュアップすることで、弊社の水素事業戦略を確立させ、山梨の水素産業、ひいては世界の水素社会実現に貢献できればと考えています。」

 終わりに 「医療機器産業」「水素・燃料電池産業」振興に向けた取り組みを加速

今回の事業化コースの受講生は現在、実践的なカリキュラムのもとで医療機器産業や水素・燃料電池産業への新規参入に向けた学びを深めています。山梨県は今後も、山梨大学など県内研究機関や各企業と連携しながら、医療機器産業や水素・燃料電池産業に取り組む企業の人材育成や新規参入を支援していきます。

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