「サステナブル(Sustainable)」という言葉をご存知でしょうか?
サステナブルは「sustain(持続する)」と「able(可能な)」の2つをかけ合わせた言葉で、「持続可能な」という意味があります。
今いろいろな所でよく耳にする「サステナブル」は、これからの地球や人の暮らしを考えていく上で、避けて通れない重要な概念です。サステナブルとSDGsの違いは何か、なぜサステナブルな社会を目指すべきなのかなど、まとめましたのでご覧ください。
INDEX
サステナブルな社会とは
サステナブルな社会とは「自然や人間としての豊かな暮らしを未来に長く継承していけるよう、地球の環境や資源へ配慮する社会」のことを指します。
サステナブルという言葉は、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で取り上げられた「SDGs」をきっかけに日本で広まりました。
サステナブルとSDGsは何が違うのか
サステナブルと同じような意味合いで使われる言葉に、SDGs(エスディージーズ)があります。
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略で、日本語にすると「持続可能な開発目標」。サステナブルな社会を実現するために、私たちがやらなければならないことを目標として掲げたものがSDGsです。
SDGsでは「貧困や飢餓」「健康や福祉」「教育」「ジェンダーや人、国の平等」「環境問題」「経済成長」など、幅広い観点から17の課題が挙げられています。
これらの課題を2030年までに解決し、目標を達成することが「サステナブルな社会」の実現への一歩と言えます。
サステナブルな社会を考えることがなぜ今必要か
SDGsが採択されたのは2015年。しかし、そこで取り上げられた課題は、すべて今に始まったことではありません。未来の地球や人々の暮らしを考えると、その場しのぎの対策を続けていても、抜本的な解決にはならないものです。
これらの課題を解決していくためには、私たち全員が「自分や、自分の子どもたちにも降りかかる問題である」という意識を持ち、机上だけではなく実際に行動を起こし、長期的視野で取り組んでいく必要があります。
それに加え、企業・自治体は、SDGsを「果たすべき社会的責任」と認識しなければなりません。
昨今の世間の流れからも、社会貢献・環境保護といった取り組みは重要です。特に「サステナブルな社会の実現に取り組まず、利益だけを追求する」といった営利企業は、消費者や投資家から厳しい視線を向けられるというデメリットがあります。逆に、熱心に取り組む企業は消費者に良い印象を与え、広く受け入れられていくでしょう。
例えば、最近注目されている「ESG投資」。これは投資先企業が「環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(企業の管理体制 / Governance)」を考慮しているか 、という点を評価しておこなう投資のことです。「消費者から支持を集め、成長していく企業か」どうかを判断するにあたり、これからの時代は財務情報だけでなく、サステナブルな観点が重要視されていることになります。
このように、目先の利益だけに固執せず、サステナブルな社会の実現に取り組むことは、企業・自治体に大きなメリットをもたらすと言えるでしょう。
サステナブルな社会にデメリットはあるか
サステナブルな社会を目指し、企業・自治体がSDGsを推進することについて、以下のようなデメリットも考えられます。
1.手間がかかる
2.コストがかかる
3.本業がおろそかになる、本末転倒
1. 手間がかかる
SDGsに取り組むことによって、担当者に時間や手間といった負担がかかる可能性があります。本来の業務の一部として遂行する分には問題ありませんが、そうでない場合、担当者に大きな負担がかかることも少なくありません。
また、人材不足のなかSDGsを進めることで、ほかの人員への負担が増えることも考えられます。
2. コストがかかる
人員への負担が増えると同時に、新しい取り組みにかかるコストや人件費・研修費などが発生する可能性もあります。
SDGsへの取り組みが良い効果をもたらし、結果として回収できるケースも考えられますが、「社会貢献の一貫」としての色が濃い場合など、コストに見合わない可能性も大いにありえます。
3. ほかの業務がおろそかになる
社会貢献への意識が強く、SDGsへの取り組みに多くの時間を割くことになると、事業運営・自治体運営といった業務がおろそかになることが考えられます。また、担当者にとって負担だけ増えてリターンが何もない状態だと、モチベーション低下に繋がることも。
さらに、企業の場合はSDGsに積極的に取り組むことで、元々の事業収入が減少してしまう可能性もあります。
「SDGsに取り組まないデメリット」の方が大きいことも
ここまで「SDGsに取り組むデメリット」について説明しましたが、長期的な視点で考えると、やはり「SDGsに取り組まないデメリット」の方が大きいと言えるでしょう。サステナブルな社会の実現に取り組まず、利益だけを追求する企業として、消費者や投資家から批判を受けるおそれがあります。
一方、SDGsに関する活動を実施していたとしても「実際の取り組みより誇張して伝える」「都合のいい情報のみを伝え、マイナスとなる情報は隠蔽している」といった取り組み方では、イメージダウンを免れません。
SDGsには誠実な姿勢で取り組まないと、逆の効果を生んでしまうこともあります。
サステナブルな社会を作り上げるための取り組み
サステナブルな社会を作るため、独自の取り組みをおこなっている企業・自治体などをご紹介します。
企業と自治体が協力し、「水」を育む森づくり
サントリーホールディングス株式会社は、日本各地21カ所の「サントリー天然水の森」で森づくりを実施。ビールやウイスキー、清涼飲料に使用する天然水を「サントリー天然水の森」から採水しています。
数ある商品の内「サントリー天然水の森 南アルプス」に利用する天然水の採水地・山梨県北杜市の森林では、サントリーと自治体間で森林を守るための協定を締結。
サントリー・北杜市・財産区管理会・地元森林組合の4者で締結している「天然水の森 南アルプスの森林整備に関する協定」や、サントリー・山梨県で締結している「育水の推進に関する連携協定」など、官民が協力し、水を育むゆたかな森づくりを実践しています。
自然と共存する人々の取り組み
山梨名産の「甲州ワインビーフ」は、ワインに使用したブドウの搾りかすを飼料として与えている甲州牛です。ブドウかすの再利用だけでなく、遺伝子組み換え飼料を極力使わないようにすることで、農業におけるサステナビリティを損なわないよう取り組んでいます。
一方、富士河口湖町では、木工職人・吉野崇裕さんが豊かな森に触れられるコミュニティ施設を建築中です。ワークショップなど木に触れる制作を通じ、人と森との共生を強く感じる体験ができます。
全国に先駆けておこなう、山梨県の持続可能な取り組み
大都市圏を除く日本全国で少子化、高齢化、過疎化という問題は無視できないものとなっています。山梨県も例外ではありません。人口が減少しても、都市機能を集約することで30年先の未来も豊かな暮らしを継承していくために、さまざまな取り組みを開始しています。まだまだ大きな成果を目指して邁進している段階ですが、先進的な活動にも臆することなく着手し、県民の方々の声を聞きながら一歩ずつ前に進めています。
山梨県が考えるのは「サステナブルな地域・社会はイノベーションの基盤になり、富を生み出す原動力になる」ということです。サステナブルな社会の実現のために山梨県が実行している、さまざまな取り組みをご紹介します。
農業に関するサステナブルな取り組み「おいしい未来へ やまなし」
山梨県産の農畜水産物ブランドである「おいしい未来へ やまなし」。
農業・畜産業・水産業の分野で「おいしい未来」を育むため、山梨では品質の高い農畜水産物づくりや食の安全、SDGsに関する取り組みなどをおこなっています。
▼アニマルウェルフェア
最初にご紹介する取り組み「アニマルウェルフェア」は、日本語で「動物福祉」と訳されます。アニマルウェルフェアとは、家畜にとって自由度が高く、快適な環境下での飼育を目指す考え方のこと。家畜のストレスや病気を軽減することで、生産性の向上・安全な畜産物の生産につながると言われています。
日本ではあまり知られていないアニマルウェルフェア。海外ではスターバックスやマクドナルドなど、名だたる大企業がこの取り組みを推進していますが、日本ではなかなか関心が高まりません。
そんな中、山梨県は、全国の自治体で初めてのアニマルウェルフェアの認証制度「やまなしアニマルウェルフェア認証制度」を2021年に創設しました。全国に先駆けて、持続可能な畜産を目指しています。
▼4パーミル・イニシアチブ
次にご紹介する取り組み「4パーミル・イニシアチブ」は、土中の炭素を1年間あたり0.4%増やす活動のこと。炭素を増やすことで人間のCO2排出の影響を帳消しにし、地球温暖化の抑制につながると言われる取り組みです。
この4パーミル・イニシアチブは世界中から699団体(2022年3月現在)が加盟しており、山梨県は日本の自治体として初めてこれに参加。2021年5月には「やまなし4パーミル・イニシアチブ農産物等認証制度」を制定し、「やまなしアニマルウェルフェア認証制度」と同様、全国に先駆けて活動しています。
次世代エネルギーに関するサステナブルな取り組み
山梨県は、次世代エネルギーの普及にも取り組んでいます。例えば、P2G(※)システムによる次世代エネルギー「グリーン水素」の普及活動もそのひとつ。グリーン水素とは、再生可能エネルギー由来の電力を利用して生成した水素のことです。山梨県は、官民共同でP2Gシステムの技術開発に取り組み、日本のGX(※)をリードしていきます。
【※P2G】 「Power to Gas(パワー・ツー・ガス)」の略。余剰電力を水素(気体燃料)に変換して貯蔵・利用する方法のこと 【※GX】 グリーン・トランスフォーメーション。化石燃料などを再生可能エネルギーや脱炭素ガスに転換することで、温室効果ガスの排出量削減を目指しつつ、社会経済システムを変革する取り組みのこと |
超感染社会に関するサステナブルな取り組み
サステナブルにおいて「経済の持続性」の観点も外せません。特に感染症の拡大防止に注力した結果、経済活動を止めすぎないように注意する必要があります。この、感染対策と経済活動を両立するのが「超感染症社会」です。ここで山梨県が取り組んでいるもののひとつが「グリーン・ゾーン認証」。山梨県が定めた感染対策の基準を満たしている施設に対して、県として認証・支援をするものです。
参考:修学旅行人気ランキング2位に急上昇、山梨県内企業の倒産率が日本一低い県に…「やまなしグリーン・ゾーン認証」がもたらした成果とは
豆知識:水害から地域を守り、500年間次世代へ土地を繋げ続ける信玄堤
信玄堤(しんげんつづみ)は、釜無川(かまなしがわ)と御勅使川(みだいがわ)の合流地点にある堤防。釜無川の氾濫をおさめるため、武田信玄が築いたと言われています。
この信玄堤は現在も現役で、500年近くも治水の役目を担っています。甲府盆地を水害から守り、次世代へ土地をつなげ続けている信玄堤は、まさにサステナブルの代表と言えるでしょう。