「サステナブル(sustainable)」という言葉をご存知ですか?
最近よく耳にするこの言葉は、私たちが暮らしていくうえで避けて通れない考え方であり、これからの地球環境において非常に重要な概念です。
この記事では「いまなぜサステナブルが必要なのか」「私たちが日々の生活で実践できるサステナブルは何か」をまとめましたので、ぜひご一読ください。
INDEX
サステナブルとは何か
サステナブルは「持続可能な」という意味で、「sustain(持続する)」と「able(可能な)」の2つをかけ合わせた言葉です。
サステナブルはすでに私たちの生活から切り離せないもので、今後の人々の暮らしを考えていく上でとても重要な意味を持ちます。
「サステナブル」という概念のはじまり
「サステナブル」という言葉は1987年、国連で「環境と開発に関する世界委員会」が公表した報告書の中で初めて使われました。
「経済成長や環境保全において、将来世代のニーズを満たしつつ、現在世代のニーズも満たす」ことを「持続可能な開発」という概念として発表したのがサステナブルの始まりです。
その後、1992年に開催された「国連環境開発会議(地球サミット)」において、この「持続可能な開発」を実現するため、21世紀に向けて各国が実行すべきアジェンダが採択されました。
ここからサステナブルという考えが広く浸透していき、今後の地球環境や人々の暮らしぶりを考えるのが自然なことになりました。
サステナブルとSDGsの違い
サステナブルと合わせてよく聞く言葉として「SDGs(Sustainable Development Goals)」が挙げられます。
サステナブルが「持続可能な」という意味なのに対し、SDGsは「持続可能な社会を実現するために、私たちがやらなければならないことを目標として掲げたもの」を指します。
いまサステナブルが注目されている理由 – なぜサステナブルが必要なのか
SDGsは、サステナブルな社会を実現するために「企業・自治体が果たすべき社会的責任」と言えます。
昨今の状況から、SDGs達成に取り組まない企業は、消費者・投資家から敬遠されるようになるでしょう。
例えば、最近注目されている「ESG投資」は、投資先企業が「環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(企業の管理体制 / Governance)」を考慮した経営をおこなっているか、という点を重視します。
企業の評価は、もはや財務情報だけではありません。サステナブルを念頭に置いた経営をおこなわない企業は、厳しい目を向けられるようになりつつあります。
反対に考えれば、目先の利益だけを追わず、サステナブルな社会の実現に取り組むことは、企業・自治体に大きなメリットを生むと言えるでしょう。
企業・自治体のサステナブルに対する取り組み
ここでは、サステナブルに熱心に取り組む企業・自治体を紹介します。
▼株式会社良品企画(無印良品)
無印良品は「1日1本、空のペットボトルを削減する」という目標を掲げ、2021年4月、販売している飲料のパッケージをペットボトルからアルミ缶へ変更しました。
アルミ缶は日本国内でのリサイクル率が96.6%、缶から缶へのリサイクル率も67.0%と高く、くり返し利用できる循環型原料です(※)。また、遮光性が高いことから賞味期限も長くなり、フードロスの削減につなげられます。
ほかにも、無印良品は「水プロジェクト」と題し、無印良品店舗に無料の給水スポットを設置することで、プラスチックゴミの削減にも取り組んでいます。
▼パタゴニア・インターナショナルインク
アメリカのアウトドアブランド・パタゴニアは、リサイクル素材を使った製品の開発に熱心に取り組んでいます。2022年4月現在で製品の原材料の89%にリサイクル素材を使用しており、2025年までに100%を達成する予定です。
加えて、近年問題となっている海のマイクロプラスチック(微小なプラスチックゴミ)。
プラスチックは自然分解されないため、海洋に滞留し、海洋生態系を破壊する原因になり得ると言われています。
パタゴニアはこのマイクロプラスチックの原因のひとつである魚網を回収し、新素材「ネットプラス」を開発。2021年から衣料素材として利用しています。
▼スターバックス コーヒー ジャパン株式会社
スペシャルティコーヒーの先駆者・スターバックスは、2030年までに「二酸化炭素の排出量」「ゴミの排出量」「水の使用量」を半減するという目標を掲げて活動をおこなっています。
その一環として、使い捨て紙カップの代わりにマグカップやマイタンブラーを使用する「Mug &Tumbler Challenge」というイベントを開催。これは店内のカップ・グラスを使ったり、マイタンブラーを持参することで、スターバックスのアプリにそのチャレンジ数がカウントされていくというもの。ゲーム感覚でサステナブルな取り組みに参加できると好評だったそうです。
そのほか、紙カップやペーパーナプキンなど店舗で使う紙製品に「FSC®認証紙」を導入。
「FSC®認証」は持続可能な森林管理の国際基準であり、違法伐採の抑止や適切な森林管理を促進するための制度です。
▼サントリーホールディングス株式会社
サントリーは日本各地にある21カ所の「サントリー天然水の森」で森づくりを実施し、酒類や清涼飲料水に使用する天然水をこの森から採水しています。
例えば「サントリー天然水の森 南アルプス」に利用する天然水は、山梨県北杜市の森林で採水。北杜市とサントリー間で森林を守るための協定を締結し、ゆたかな森を育み、持続するための活動を実践しています。
▼山梨中央銀行グループ
山梨中央銀行が取り扱う「グリーン世銀債ファンド」は、間接的に地球温暖化防止に協力できる投資信託です。
この「グリーン世銀債ファンド」とは、世界銀行が発行する「グリーンボンド」という債券をおもな投資先とするもの。グリーンボンドが原則として「新興国の地球温暖化防止対策プロジェクトへの貸付にのみ利用される」ことから、間接的に地球温暖化防止に協力できるとされています。
ほかにも「サステナビリティ・リンク・ローン」という、顧客が定めたSDGsに関連する挑戦目標の達成度に応じて、金利など融資条件が変動する融資商品も。
「顧客の資金調達ニーズ」と「持続可能な地域開発」を両立するユニークな取り組みと言えます。
▼株式会社桔梗屋
桔梗屋の看板商品は、かの有名な「桔梗信玄餅」。同社ではこの桔梗信玄餅をはじめとしたお菓子の詰め放題を実施しています。
工場内で「賞味期限12日のうち、残り半分をすぎた商品」「包装に失敗した規格外の商品」などの詰め放題サービスをおこなうことで、フードロス削減に取り組んでいます。
サステナブルな社会を作るため、私たちができること
ここでは、日々の生活で取り入れられるサステナブルな活動を、衣食住の観点から紹介します。
【衣】環境に配慮した衣料やメーカーを選ぶ
環境に配慮した衣料・メーカーを選ぶことで、私たちもサステナブルな活動に貢献することが可能です。
例えばアパレル業界では近年、サステナブルに対する意識が高まっており、特に「ファストファッション」と呼ばれるブランドにおいて、世間から向けられる視線が厳しくなっています。
「ファストファッションがサステナブルに反する」と言われる理由は、大きく2つです。
- 低価格の衣料を大量生産するため、途上国の人々を劣悪な労働条件で雇用していること
- 「衣料の素材である合成繊維が土に還らない」「廃棄した衣料が埋め立て処分した土地から海に流れ込み、海洋汚染を引き起こす」など、地球の環境悪化を招いていること
これらの問題点が指摘されるようになり、アパレル業界全体がサステナブルな取り組みを推進する流れが生まれています。
例えばH&Mは「オーガニックコットンやリサイクルコットンを積極的に使用する」「廃棄予定のブドウの絞りかすからレザーを作る」など、地球に負荷をかけない素材の利用を推進しています。
ユニクロは着用しなくなった衣料を回収するボックスを設置し、その衣料を難民キャンプに寄贈したり、ダウンやフェザーを取り出してリユースしたりといった活動をおこなっています。
【食】フードロスを削減する・サステナブルな食品を選ぶ
フードロスを削減する
食に関するサステナブルな取り組みと言えば、真っ先に挙がるのは「フードロスの削減」でしょう。
世界では毎年、約13億トンの食品が廃棄されています(※)。
フードロスは食べ物が無駄になるのはもちろん、途上国では栄養不足で苦しんでいる人々がいるにも関わらず、限りある食料資源が有効に活用されていない、という問題も生んでいるのです。
フードロスを削減する取り組みには「自炊のときは食品を買いすぎないようにする、外食のときは食べ切れる量を注文する」「余った食品が日持ちする場合、フードバンクやフードドライブに寄付する」などが挙げられます。
サステナブルな食品を選ぶ
日々の暮らしで口にするものとして、そもそも「サステナブルな食品を選ぶ」という考え方もあります。
肉・牛乳など動物性の食品を、大豆ミートやオーツミルクなどの「植物食」に置き換えることで、畜産動物の飼育が不要となり、地球環境への負荷を軽減できます。
ほかにも、アニマルウェルフェアやサステナブルシーフードといった取り組みで生産された肉・魚を選ぶことも有効な行動と言えます。
▼アニマルウェルフェア
家畜にとって自由度が高く、快適な環境下での飼育を目指す考え方のこと。
家畜のストレスや病気を軽減することで、生産性の向上・安全な畜産物の生産につながると言われている▼サステナブルシーフード
将来も魚介類を食べ続けられるよう、環境に配慮し持続可能な方法で漁獲・養殖されたシーフードのこと
ESG投資家の厳しい目もあり、世界的に注目が高まるアニマルウェルフェアですが、日本ではまだその考え方が浸透しているとは言えません。
そんな中、山梨県では全国の自治体で初めてのアニマルウェルフェアの認証制度「やまなしアニマルウェルフェア認証制度」を2021年に創設。全国に先駆けた、持続可能な畜産に取り組んでいます。
【住】サステナブルな家に住まう
サステナブルな住宅とは、大きく「手を加えることで持続的に住める家」「太陽光発電や木質の断熱材を取り入れるなど、環境に負荷をかけない家」という考え方に分けられます。
持続的に住める家
「持続的に住める家」は、間取りの可変性やメンテナンス性の高さがポイントと言えるでしょう。
例えば、子どもが独立するなどして家族構成が変わった場合、必要に応じて壁を取り払える・空間を仕切れるといったように間取りを自由に変えられれば、長く住み続けることが可能に。
また、壁や塀などに経年劣化が目立たない素材を利用することで、メンテナンスが格段に楽になります。
住宅を建てるときは、上記のポイントを考慮することで長く住める家になるでしょう。
加えて、持続可能な住宅に対して行政からの支援・援助があるケースも増えているので、確認してみてください。
環境に負荷をかけない家
「環境に負荷をかけない家」とは、再生可能エネルギーや環境にやさしい素材を取り入れた家のことです。
「再生可能エネルギー」は、太陽光・風力といった地球資源を利用した、CO2を排出しないエネルギーのこと。屋根・屋上に太陽光パネルを設置することで、再生可能エネルギーを利用できるだけでなく、電気代を節約することも可能です。
加えて、地球環境にやさしい素材を取り入れることもサステナブルと言えるでしょう。
建築資材に再生可能なリサイクル資源の木材を使うことで、CO2の排出が抑えられるだけでなく、将来的に家を解体しなければならないケースでも、自然に還すことができます。
ほかにも、建築資材として「FSC認証木材」を利用することもおすすめ。
FSC認証とは、持続可能な森林管理を認証する国際的な森林認証制度。FSC認証木材を利用することで適切な森林管理の支援に繋がると同時に、違法な伐採などによって得られた木材を知らずに使ってしまう事態も避けられます。
山梨県は日本で一番大きなFSC認証の森を有しており、地球環境に配慮した、持続可能な森づくりを推進しています。