最近よく耳にする「メタバース」という言葉をご存知ですか?
「インターネット上の空間でアバターが歩いている」といった状況をイメージしながらも、実際のところはよくわからない、という方も多いかもしれません。
この記事では「メタバースとは何か、なぜ注目されているのか」を掘り下げ、わかりやすく説明します。
山梨県が取り組む先進的な取り組みのほか、企業のメタバースサービスの事例についても紹介しますので、まずはご一読ください。
INDEX
メタバースとは
「メタバース(metaverse)」とは、「超越した」という意味の「メタ(meta)」と、宇宙を意味する「ユニバース(universe)」からとった「バース」を組み合わせた造語です。
「メタバース」は「インターネット上の仮想空間」のことを指しますが、仮想空間という概念自体が抽象的なため、よくわからないという方も多いでしょう。
その場合は、映画「サマーウォーズ」や、ゲーム「Fortnite(フォートナイト)」「あつまれ 動物の森」などを想像するとわかりやすいかもしれません。インターネット上で人や動物を模したアバターが自由に動き回り、活動できるあの空間こそがメタバースです。
VRとの違い
VRは「バーチャルリアリティ(Virtual Reality)」の略です。
メタバースとVRは混同されやすいですが、メタバースは仮想空間そのものを指すのに対し、VRは「仮想的な世界を体験できる技術や機器」のことを言います。
メタバースは仮想空間においてさまざまな人が活動し、コミュニケーションを図ることを想定していますが、VRは体験そのものを楽しむことがメインになります。
メタバースが注目されるようになった理由
メタバースがここ数年大きな注目を集めるようになったのには、いくつかの理由があります。
- VR機器の普及・VR技術の向上
- オンラインコミュニケーションの成熟
- 仮想通貨や関連技術の実用化
順に見ていきましょう。
VR機器の普及・VR技術の向上
メタバースが注目を集める理由として、第一に「VR機器の普及・VR技術の向上」が挙げられます。
- 軽量化・ワイヤレス化といったVRゴーグルの進化
- アバター・仮想空間を表現する技術力の向上
- VRコンテンツの充実
総務省「令和4年版情報通信白書」によると、VR機器の出荷台数は2021年に1,250万台を突破。今後も増加していくと予想されています。
多数のベンダーが参入したことで市場での淘汰が進み、出荷台数も一時的に減少しましたが、2020年から再び増加に転じています。
VR市場の広がりと同時に、メタバースがますます注目を集めていると言えるでしょう。
オンラインコミュニケーションの成熟
近年、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークという働き方が拡大しました。
民間企業におけるテレワークの導入率(※)は2021年8月末時点で51.9%と、2019年の20.2%から大きく増加しています。
(※ 令和4年版情報通信白書 総務省調べ)
このテレワークの増加と外出控えにより、チャットツール(テキストチャット、ボイスチャット)やオンライン会議ツールの利用人口が増え、オンラインでのコミュニケーションが急速に普及しました。
より快適で自由なオンラインコミュニケーションの手段として、メタバースは関心を集めています。
仮想通貨や関連技術の実用化
NFTや仮想通貨の実用化も、メタバースが注目されるようになった理由のひとつです。
NFTは「Non-Fungible Token」の略で、日本語では「非代替性トークン」と呼ばれます。
NFTは「本物である証明書が付与された、偽造や改ざんが難しいデジタルデータ」であり、オンリーワンという観点から、デジタルデータに資産価値が与えられるようになりました。
このNFTや仮想通貨をメタバースと組み合わせることで、さらに価値あるデジタルデータを生み出したり、大規模な経済活動がおこなえるようになったりという期待から、メタバースが注目されるようになったのです。
メタバースを利用するメリット・デメリット
ここでは、メタバースを利用することによるメリット・デメリットについて説明します。
メタバースを利用するメリット
メタバースがもたらすメリットとして「制約のない空間で、非日常の体験を手軽に得られること」が挙げられます。
自由に作り上げられる仮想空間では、移動距離やコストといった制約に縛られることがありません。例えば、メタバース内で音楽イベントが開催されても、会場へ移動する手間もコストも不要です。メタバースへ入った瞬間、そこがイベント会場になります。
ほかにも「アバターを通じて、現実に近いコミュニケーションが取れる」という大きなメリットも。例えば企業の場合、わざわざオフィスに出社しなくても、バーチャルオフィス内でのコミュニケーションで仕事は円滑に進められます。
メタバースを利用するデメリット
メタバースがもたらすデメリットとして「メタバースそのものに依存してしまうこと」が挙げられます。
メタバースは非日常的な世界への没入感が強く、スマホやゲームのように依存症の恐れがあります。制約がないことから、かえって理想の世界に浸りすぎてしまい、抜け出せなくなることも。
また、メタバースにおける不安のひとつが「法整備が十分でないこと」。
NFTを取り締まる法律はなく、仮想通貨も脆弱性という点で不安が残ります。メタバース内でウォレットにまつわるトラブルが起き、相談しようと思っても、運営元は日本語の通じない海外のベンチャー企業かもしれません。
まだまだ黎明期の段階であるメタバースでは、想像し得ない問題が発生する可能性もあります。自分の身は自分で守ることを意識し、利用していかなければなりません。
メタバースを利用したサービス例
ここではメタバースを使ったサービス事例を紹介します。
美術館・博物館
企業や自治体がメタバースに美術館・博物館を構築する試みが増えています。
美術館・博物館をメタバース内に設置することには、参加者側には「時間や場所の制約がなく、すぐに芸術に触れられる」、主催者側には「普段あまり芸術に触れる機会のない層にリーチできる」といったメリットがあります。
開館50周年を控える山梨県立美術館は、最先端デジタル技術の活用推進の一環として、メタバース実験事業をスタート。
- 山梨県出身の現代美術作家の作品をメタバース内に展示
- 現代美術作家とともに、メタバースやNFTを体験するワークショップを開催
- 美術館内にVR機器等を導入し、誰もがメタバース体験を楽しめる場の整備
といった取り組みを進めています。
バーチャルイベント
メタバース内では、日夜さまざまなイベントが開催されています。
例えば、スマートフォン向けメタバース「REALITY」ではバーチャルライブの配信が可能。
スマホでアバターの姿になり、顔を出すことなくライブ配信やイベントといった双方向のコミュニケーションを楽しめます。
バーチャルオフィス
テレワークという働き方が当たり前になった現在、メタバース内のバーチャルオフィスに出社しているという方も多いのではないでしょうか。
「バーチャルオフィス」とは、メタバース内に構築されている仮想オフィスのこと。バーチャルオフィスにはVRを使うものもありますが、2Dのメタバース空間内で、社員がアバターやアイコンといった形で存在する形が主流です。
会議中・離席中といったステータスが確認しやすく、社員がアバターとしてそこに存在しているため、シンプルなチャットツールと比べてスムーズなコミュニケーションが取りやすいと言えます。
バーチャルショップ
バーチャルショップはインターネットで公開されている店舗で、実店舗とECサイトの中間のような存在。アバター店員による接客をおこなうショップもあります。
人件費や家賃といったコストを削減できる上、エリアに縛られず、24時間365日のショッピング体験を提供できるといったメリットがあり、H&MやBEAMSなど、多くの有名アパレルメーカーがバーチャルショップを公開しています。
付け加えると、バーチャルショップと混同しがちなのが、次の項目で紹介する「メタバースEC」。
「バーチャルショップ」はオンラインショップを構築して公開するのに対し、「メタバースEC」はオンラインショップを既存のメタバース内に出店するという違いがあります。
メタバースゲーム
メタバースを利用した数あるオンラインゲームの中でも「Roblox(ロブロックス)」は、月間のアクティブユーザーが世界で2億人を超える大人気プラットフォーム。
日本での知名度はまだそれほどではありませんが、アメリカでは16歳未満の子どもの半分以上がロブロックスで遊んでいると言われています。
このロブロックスは、ユーザーがレゴブロックをモチーフにしたアバターとなり、メタバース内でゲームを作成・共有・プレイできるシステム。
メタバース内には「メタバースEC」としてGUCCIなど有名ブランドが多数出店しており、ただのゲームプラットフォームを超えた広がりを見せています。
日本では「Fortnite(フォートナイト)」「Minecraft(マインクラフト)」「あつまれ どうぶつの森」などがメタバースゲームとして有名です。
これらのゲームはひとつの世界が完成されているのに対し、ロブロックスは仮想空間を新しく作り、広げていけるという違いがあります。
バーチャルシティ
バーチャルシティとは、インターネット上に存在する仮想都市プラットフォーム。ユーザーはアバターとなってバーチャルシティ(=プラットフォーム)を楽しめます。
有名なバーチャルシティのひとつが「REV WORLDS(レヴワールズ)」。
仮想新宿にメタバースECとして伊勢丹が出店していたり、バーチャル東京ドームでイベントが開催されたりと、もうひとつの「東京」がそこにあります。
日本のメタバースの先駆けである「バーチャル渋谷」も、渋谷区公認の「もうひとつの渋谷」。
新型コロナウイルス感染症拡大による外出の自粛要請で、渋谷から人が消えたことをきっかけに「自宅に渋谷を届ける」という取り組みが始まりました。
アバターとなって渋谷を歩くことができ、メタバース内ではライブ、トークイベント、アート展示などがおこなわれています。
メタバースは、私たちの暮らしを豊かにする新しい技術です。
「よくわからない」という理由で敬遠せず、メタバースの世界に飛び込むことで、より生活が楽しく便利になるかもしれません。