【山梨県×NEO TOKYO PUNKS】NFTを活用したマンガ制作・拡散で挑む、新しいPR

イノベーション 芸術・文化・伝統
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最終更新日: 2024.02.09

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【山梨県×NEO TOKYO PUNKS】NFTを活用したマンガ制作・拡散で挑む、新しいPR

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最終更新日: 2024.02.09

2050年。
永遠の命を手に入れた権力者たちの欲望の秘密組織・Brainverseによって支配された東京で、一人の少年が命の危機に直面していた。

彼を救うカギとなるのは山梨県が長年研究を進めてきた、世界に誇る水素技術。

近未来を舞台に繰り広げられる先端技術と冒険の物語――。

こんなストーリーのマンガの制作が進んでいる。
取り組んでいるのは山梨県、そしてNFTプロジェクト「NEO TOKYO PUNKS(NTP)」だ。

ブロックチェーンという技術を使ったNFT(Non-Fungible Token)は全世界で広がっており、NIKE、バンダイ、コナミ、スターバックスなど有名企業が続々と参入。また個人やチームが、さまざまなNFTプロジェクトを立ち上げている。

日本では自治体がNFTを活用する例も増えてきているが、今回、山梨県は県のPR事業としてNTPとコラボレーション。NTPのコミュニティメンバーらに山梨要素を取り入れたマンガを制作してもらい情報拡散をすることにより、山梨の魅力発信に取り組む。

NFTを使ったPRという、新しい手法に取り組む狙いや事業の内容、今後の展開などを山梨県とNTPの担当者にそれぞれインタビューした。

※NFT(Non-Fungible Token):偽造ができない、本物であるという証明書つきのデジタルデータのこと。ブロックチェーンという技術が活用されている。

【NEO TOKYO PUNKS(NTP)とは?】

2022年3月末にリリースされたジェネラティブNFTアートコレクション(2,222体)。
マスクなどを装着したサイバーパンク×アニメ風の横顔のイラストが特徴で、設定は「2050年の東京」。クリエイターはイラストレーターのNIKO24さん。
国内の時価総額最高2位を記録するなど、日本で最も有名なNFTプロジェクトの一つ。NTP保有者らが参加するコミュニティには国内外から約6000人が参加(2023年2月時点)。国内外の有名プロジェクトや企業とコラボしてきたほか、オリジナルアパレル展開も目指している。

Twitter:NEO TOKYO PUNKSofficial(@NTP_NFTofficial
HP:https://www.neotokyopunks.com/

自ら知って・考えて・広める。NFTコミュニティを活用したPRで山梨の先進性を伝えたい

左から平賀主任、塩澤主事

・平賀亮太 知事政策局地域ブランド推進グループ 主任
・塩澤侃士 知事政策局地域ブランド推進グループ 主事

――山梨県初のNFTを活用した事業だそうですが、ここに至った背景や事業の目的を教えてください。

平賀:今回の事業の一番の目的は、新しいPR手法への挑戦です。行政が行うPRは、プレスリリースなどを出して新聞やテレビなどに取り上げてもらうやり方が主流です。ただこれだと発信が一方通行になりやすいんです。ニュースに出ても、視聴者は自分に関係のないことであればすぐに忘れてしまいがちです。最近はそもそもニュースを見ない若者も増えていますしね。SNSでの発信も行っていますが、同様の課題があると思っています。
「何かほかのやり方はないだろうか」と悩んでいたときに、今話題のNFTの活用を思いついたのです。

――自治体ではNFT活用したふるさと納税などの事例はありますが、PRに使うというのはかなり珍しいと思います。NFTをPRに使うメリットはどこにあるのでしょうか。

平賀:今の日本のNFTプロジェクトは、そこに紐づくコミュニティがあるのが特徴です。影響力の強いプロジェクトとコラボすれば、コミュニティメンバーが“自分ごと”としてコンテンツ制作に協力し、情報拡散にも力を入れてくれると思いました。一方通行だったこれまでとは違う、新しいPRができると期待しています。

塩澤:知らない方も多いと思いますが、実は山梨県には水素・燃料電池産業の研究開発拠点が集まっているんです。水素は「究極のクリーンエネルギー」といわれており、世界でも研究が進んでいます。今回は山梨が持つ水素技術をテーマにマンガを制作してもらいます。たくさんの人にマンガを読んでもらうことで山梨の先進性を知ってもらい、イメージを変えることができると考えています。

――数あるNFTプロジェクトの中から、NEO TOKYO PUNKS(NTP)とコラボすることにした理由を教えてください。

平賀:NTPは日本で最も成功しているNFTプロジェクトの一つです。そのアートは2050年の日本を舞台としていて、私たちが訴えたかった水素の「未来」「先進性」というイメージにぴったりです。コラボする相手としてはここ以外ないと思えました。

塩澤:NTPのコミュニティは非常に結束力が高く、熱量が高いと聞いています。メンバーが自主的にファンアートなどの企画をすることも多いそうで“自分ごと”として考えてPRに協力してくれると感じました。

――具体的にどういったコンテンツを制作するのですか。

平賀:10ページほどのマンガを制作してもらっています。山梨の水素技術を扱うのですが、水素を説明するよくある教育マンガではありません。山梨県出身の少年の成長ストーリーで、水素が展開を左右するカギとなるというイメージですね。

山梨県、米倉山電力貯蔵技術研究サイトの紹介図(山梨県提供)

――初めてのコラボになりますが、やりとりをしていて驚いたことはありましたか。

平賀:水素技術について理解してもらうために、2023年1月にオンライン勉強会を開催したのですが、NTPの一部のメンバーが仕事を休んでまでして参加してくれたんです。しかも県のHPにアップされている難しい資料にまで目を通してくれました。その熱量に驚きましたし、ちゃんと理解したうえで制作しようとする姿勢がうれしかったですね。

――事業を進めていくにあたり苦労した点があれば教えてください。

塩澤:自分にとってNFTは未知の領域でした。山梨県としてもNFT活用は前例がないため、他部署に説明するときは「NFTとは何か」から理解してもらわなければならず、説明には苦労しましたね。
ただ私たちは今回の事業がうまくいけば、今後のPRのあり方を大きく変えると確信しています。だから新しいゲームを買ってもらった子どものようにワクワクしながら、全力で取り組んでいます。

平賀:私もNFTは初めてだったので、最初は出てくる用語を一つ一つインターネットで調べていましたね。ネット記事を読んだだけでは理解できないことも多く、もどかしい思いもしましたが、自分がわかっていないのに他人に説明することなんてできません。地道にコツコツ勉強を続けて、半年ほどかけてようやくわかるようになりました。

――最後に、事業への意気込みを教えてください。

塩澤:今までは若者に「山梨といえば?」と聞いても、富士山やブドウといった定番の回答か「何もない」と言われることが少なくありませんでした。今回の事業によって水素技術やNFTとのコラボを知ってもらい、「山梨は先進的な取り組みをしている」と県民みんなが胸を張れるようにしたいですね。

平賀:今回の事業のゴールはマンガを作ることではなく、山梨と水素技術について知ってもらう、そして自分の頭で考えてもらうことです。だからこれだけで終わってしまってはもったいない。実施結果をふまえて、次年度以降も何かしら新しい取り組みをしていきたいと思っています。

熱量の高いコミュニティからハイクオリティのコンテンツを創出。山梨とNFTに興味を持つきっかけに

・NIKO24さん(@fukusta343
NEO TOKYO PUNKSファウンダー、イラストレーター
・SHOWGOさん(@VVQ_SHOWGO
NEO TOKYO PUNKSプランナー、放送作家

――NEO TOKYO PUNKS(NTP)について教えてください。

NIKO24:NTPは企業がサポートしているNFTプロジェクトと違い、サラリーマン兼クリエイターだった私を中心に始めたプロジェクトです。自分のクリエイティブのファンになってくれた人、理念に共感してくれた人たちで育ててきたというのが大きな特徴です。メンバーはみんな別に仕事があるのですが、それとは切り離して“サードプレイス”としてNTPを楽しんでくれています。

SHOWGO:NTPのNFTは2,222体あるのですが、そのすべてが主人公というコンセプトを掲げています。そのためNTPのコミュニティメンバーは、全員「自分がコミュニティの主人公」という意識で活動しています。だからNTPのアートの二次創作作品をつくるなど、みなさん非常に自発的に行動してくれるんです。この熱量の高さがNTPらしさだと感じています。

――山梨県とコラボすることになった経緯を教えてください。

NIKO24:NTPを保有している方が、山梨県がパートナーを募集されているという情報を教えてくれたんです。調べてみると、山梨は水素燃料電池の開発に力を入れていることがわかりました。NTPは2050年の東京を舞台にした作品です。未来の技術として注目される水素と未来が舞台のNTPは非常に親和性が高いと感じました。それに東京と山梨は距離的にも近いですしね。

NFTは一般の方にはまだまだ理解が広まっておらず、「怪しい」というイメージを持っている方も少なくありません。これまでさまざまなNFTプロジェクトが市町村とコラボしてきましたが、都道府県とコラボしたところはおそらくない。NTPが山梨県と組むことで世間のNFTに対するイメージが変わり、NFT業界全体にメリットがあると考えました。

――制作されるマンガでは水素技術を取り上げますが、どのように情報を集めましたか。

SHOWGO:まず自分たちが理解するところから始めました。山梨県の担当者に「水素燃料技術について教えてほしい」と伝え、担当部署である新エネルギーシステム推進室との勉強会を開催してもらいました。室長から直接、山梨が進めている研究についてご説明いただいたのですが、知らないことばかりでとても勉強になりましたね。

室長は「山梨をエネルギー業界におけるシリコンバレーにしたい、最先端のエネルギーの街にしたいんです!」と、熱い思いを語ってくれました。今回の取り組みは、今蒔いているこの水素技術の種が、数十年後にどうなっているのかを想像することに意味があると思っています。目指している山梨像を聞かせていただき刺激を受けましたね。

――現在、どのようにマンガ制作を進めていますか?苦労されている点はありますか?

NIKO24:マンガの制作はNTPにとって初めての挑戦です。流れとしては、まずコミュニティ内のストーリーチームでストーリーを固め、それを漫画家の重松成美さんにマンガにしていただきます。コアで携わっているメンバーは7人ほどですが、主人公の名前などはコミュニティ全体から募集して決めました。

SHOWGO:僕は本業で放送作家をしているのですが、マンガはこれまで制作してきたコンテンツとはまったく違います。まず魅力的なキャラクターを考えて、そのキャラクターの目線からどういう感情でどんな行動を起こすのか考えていく。単純に起承転結にすればいいというわけではないんです。またコマ割りやページ数も考慮しなければいけません。特殊な作業ばかりで最初は戸惑いましたね。

またコミュニティでつくるという点も、メリットでありデメリットでもあります。制作に携わる人が増えれば増えるほどアイディアの数はでてきますが、内容は分散しやすい。しかもストーリーチームはコンテンツ制作のプロというわけではありません。意見を取りまとめて、マネジメントするのはなかなかハードです。ですがコミュニティでつくる作業はWeb3らしくて、楽しいですよ。

――PRにNFTを活用することにはどういったメリットがあると考えていますか。

SHOWGO:僕は山梨プロジェクトで最も大事なことは、できるだけ多くの人に山梨県の未来について考えてもらうことだと思っています。
単純に情報を拡散するだけであれば、インフルエンサーの方にPRしてもらえばいい。きっとその方がリーチできる人の数も多いでしょう。ですがそれでは情報を受け取った方は浅い理解しかしてくれないと思います。

NTPの魅力は、強力なコミュニティです。コミュニティ内でコンテンツを制作していくことで、先ほどご説明した水素の勉強会のように、メンバーが当事者となって学び、考える機会ができる。理解したうえで発信するので単純に「広く」伝えるのではなく、「深く」伝えられると考えています。
初めての取り組みになるためどういった拡散がされ、どのような効果があるかはわかりませんが、個人的にも結果が楽しみです。

――コミュニティには6000人以上が参加していますが、どのように巻き込んでいきますか。コミュニティの外にはどうやって関心を持ってもらいますか。

SHOWGO:全員に水素について学んでアイディアを出してもらうのは、かなりハードルが高いので、そこはストーリーチームを中心に少人数で行い、全員に向けては名前募集など別に参加しやすい機会をつくって巻き込んでいます。

コミュニティ外には、Twitterにマンガの一コマを掲載して、セリフを考えてもらうキャンペーンを開催するつもりです。参加者にはおそらく抽選になりますが、NIKO24さん描き下ろしのNFTをプレゼントする予定です。

――完成に向けて、意気込みを教えてください。

NIKO24:今まさにストーリーの完成、マンガのプロット制作、ネーム作業、と制作が進んでいます。クオリティの高いコンテンツを作るので、まずはみなさんに純粋にマンガを楽しんでほしい。そしてそれをきっかけに、山梨やNFTに興味を持ってくれればうれしいですね。

今回の事業を通して僕自身、山梨へのイメージが大きく変わりました。今までは山梨というと果物やキャンプ場が思い浮かんでいましたが、新たに「水素」「最先端」が加わりました。いいご縁をいただいたので、今後も一緒に何かできたらいいなと思っています。

SHOWGO:ストーリーチームを中心に夜遅くまで会議や作業をするなどして全力で制作を進めています。みんな仕事や家庭で忙しいなか、誰にやらされているわけでもなく「山梨を盛り上げたい」「NTPの力になりたい」という純粋な気持ちで取り組んでいる。その熱量をコンテンツに落とし込んでいくつもりです。

今回のプロジェクトは、NFTコミュニティ発のコンテンツ制作・PR事例として、大きな意義があります。NTPにとっても成長の機会です。できるだけ多くの人に届けることで「自分たちにもできるかもしれない」と、新しいことに挑戦する人が増えたらうれしいですね。

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