地図・GISを活用したWebシステム・アプリ開発、コンサルティングを行う株式会社シグナイト(東京都府中市)は今年8月、山梨県二拠点居住推進センターを活用し、甲府市内にサテライトオフィスを開設しました。さっそく、リモートワークや甲府市内での営業活動の拠点として使ったり、新たな出会いの場を創出したりと、活用の幅を広げています。
代表取締役CEO・原田智行さんと、取締役COO・渡辺敦さん(甲府市出身)に開設のきっかけや今後の展望について、お話をうかがいました。
(以下、敬称略)
INDEX
交通の便、家賃の安さが魅力
――今年8月、甲府にサテライトオフィスを開所しました。なぜ地方に拠点をつくったのか、開所するまでの経緯を教えてください。
原田:2017年11月、山梨県主催の「山梨県サテライトオフィス誘致セミナー」にたまたま誘われて参加しました。そこで当時、東京から山梨にサテライトオフィスをつくった会社の話を聞いたのですが、当時は全く興味がなかったんです。
ですが、コロナ禍を経て、社員がほぼテレワークに移行したことでコミュニケーションが不足してしまったという反省もあり、リモートで働く社員もコミュニケーションをとれる環境をつくりたいと考えるようになりました。地方にサテライトオフィスを作れば、新たな出会いも広がり、これまでとは違った事業もできるのではという思いもありました。
今年に入り、二拠点居住推進センターの職員に相談したところ、山梨県の魅力や補助制度を丁寧に説明していただき、翌月には物件の内見に行きました。
~サテライトオフィス開設までの流れ~
2021年4月 二拠点居住推進センター訪問(その後、山梨県からは随時、セミナーやツアーなどの情報を提供)
2023年2月 サテライトオフィスの設置について、センターに相談
2023年3月 甲府市内の物件を内見
2023年4月 甲府市内の物件を契約
2023年8月 サテライトオフィスを開所。学生が集える場としても開放している
――最終的に甲府にサテライトオフィスを構えた決め手は何だったのでしょうか。
原田:首都圏の他の県も検討はしたのですが、府中市内の本社から、ドア・トゥー・ドアで1時間半くらいという便の良さは魅力でしたね。賃料が東京の半分くらいの相場という点も、決め手の一つになりました。
それに加え、山梨県がテストベッド(※)の実証実験に力を入れているなど、新しい事業への助成金などのサポートが充実していることも魅力的でした。こうした情報も、二拠点居住推進センターで教えていただいたんです。まだ実際に助成金は活用していませんが、今後機会があれば、こうした県のサポートも活用して、事業を展開していきたいですね。
※実際の運用環境に近い状態で先端技術の実証実験を行う「場」のこと
――サテライトオフィス開所後、原田さんは月2回程度、渡辺さんは週1回程度来訪しているとうかがいました。どんな風にサテライトオフィスを活用していますか。
原田:日帰りの場合は特急で昼頃に甲府に行って、夕方までいろんな方々と打ち合わせをしています。朝から打ち合わせがある場合は、前泊することもあります。コンパクトシティで、駅周辺に多くの企業が集まっているので、営業や情報交換がしやすいですね。
甲府に来たからこその仕事、人材採用を
――甲府のサテライトオフィスを、今後どんな風に活用していきたいですか。
原田:まだ手探り状態ですが、人のつながりを広げ、甲府に来たからこそできる新しい仕事を増やしたいです。私たちは東京で普段、地図・GISや位置情報データを活用して、エリアマーケティングやWebシステム・アプリの開発などを行っていますが、東京に比べ、山梨ではこうした技術があまり活用されていないとも感じています。そのため、山梨で私たちのビジネスを展開していけば、チャンスもつかめるのではないかと思っています。
サテライトオフィスの近くには大学もありますし、現地の人材採用も積極的にしていきたいですね。東京だけにオフィスを構えているときよりも、多様な人材を確保できるのではないかと期待しています。
――サテライトオフィスには、無料のコミュニティスペース「SHIRO-no-IRO」を併設しました。甲府駅から徒歩10分ほどの便利な立地で、明るく広々としたスペースが印象的です。学生や留学生に、こちらのスペースを開放しているんですよね。
原田:コミュニティスペースは現在、不定期で週1回程度、学生向けに開放しています。今後、平日は毎日開放していきたいと思っています。コーヒーも無料で飲んでいただけますので、ぜひ気軽に、勉強や語らい、休憩などで利用してほしいですね。ここで仲間と一緒に何か新しい取り組みを「創造」するのも、大歓迎です。
学生たちには自宅や学校・職場に次ぐサードプレイスとして使ってほしいと思っていますが、それだけでなく、私たちが新しい事業を始める時に、学生の若いフレッシュな考えを取り込んで一緒にできたらな、とも思っているんです。オフィスとコミュニティスペースの間はガラスになっていて互いの様子が見えるので、学生にも私たちの会社に興味を持ってもらえたらうれしいです。新しい土地で、多様な人と出会うことで、私たちのITの技術をさらに活かし、地方活性化ができれば、という思いをもっています。
渡辺:地方には、いいアイデアがあっても都市部よりもマネタイズが難しいという弱点はありますが、人のつながりでカバーしていけるという強みもあります。山梨にもそれは当てはまりますし、その点を活かして新しいものを生み出していきたいと思っています。
原田:従業員が定期的に仕事やプライベートでサテライトオフィスを活用していくことで、山梨の方々や企業との新たなシナジー効果が生まれて、東京でやっている仕事を刺激し、さらに事業も拡大していければ理想ですね。
サテライトオフィスで、多様な選択肢を社員に提供
――サテライトオフィスを開設したことで、社員の方々にはどんなメリットがあると思いますか。
渡辺:リモートワークも一般的になった現在、山梨出身の人が地元に住んだまま働きたい、東京の人が地方に移住して働きたい、といったニーズは着実に増えていると思います。そういった多様なニーズに応える選択肢を用意していきたいです。実際に現在、温泉好きの20代社員が山梨への移住を検討していますよ。山梨にサテライトオフィスがあるからこそ、「平日はサテライトオフィスで働き、休日には近所の温泉を満喫してリフレッシュ」という生活が可能になりますよね。
原田:テレワークを推奨している会社であれば、空気や景色の良いところで仕事ができるという選択肢をつくるのは、おすすめです。とくに山梨は賃料も安く、東京にも近く、進出しやすい場所だと思います。
――たしかに、サテライトオフィスでの仕事の前後に、山梨の自然や食事でリフレッシュするのもよさそうですね。甲府ご出身の渡辺さんから見て、おすすめはありますか。
渡辺:山や川など自然が豊かなので、釣り、山登り、ゴルフはおすすめですよ。実際に私も休日に楽しんでいます。美味しいものはやっぱり、ぶどうや桃といったフルーツでしょうか。夏に社員ほぼ全員がサテライトオフィスに来たときには、みんなお土産にフルーツを買っていきましたね。ワイン、日本酒も美味しいです。
今後、山梨でワーケーションや社員同士の懇親の機会もつくっていけたら楽しいですね。
<二拠点居住推進センターについて>
二拠点居住推進センターでは、山梨県に拠点をつくりたい企業や個人からのご相談を受け付けています。対面のほか、オンラインでのご相談にも対応しています。
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