※山梨県では、「上質で心おどる美酒・美食体験」として、豊かな自然環境やたゆまぬ挑戦と努力から生まれるお酒や農畜水産物を素材にした美酒・美食の魅力を五感に訴えかけていくプロモーションを行っております。
本記事はその一環で、食の未来が見えるウェブマガジン「料理王国」とのコラボレーション記事になります。
ーーーーーーーーーー
今回のコラボレーションにあたり、料理王国が主催する料理家向けの学びの活動「料理王国アカデミー」にて「美食王国やまなし料理講習会」を開催しました。
この講習会は、山梨県産のお酒や食材を使ったレシピ開発に向けて、料理王国アカデミーのオフィシャル料理家の皆さまに山梨の魅力を伝えていこうというものです。
当日は山梨県出身で、現在、地元・郡内地域で自店のオープン準備を進めているシェフの堀内浩平さんと、ソムリエの堀内茂一郎さんご兄弟により、県産ワインの紹介や調理のデモンストレーションが行われました。
※堀内シェフのご紹介はじめ、料理講習会の様子は以下記事をぜひご覧になってください。
本記事は、この料理講習会を受講した料理王国アカデミーのオフィシャル料理家による、山梨県産の食材とワインを使った料理教室のレポートです。
堀内さん兄弟が伝えてくれた山梨の魅力を、今度は料理家さんがご自身の生徒さんたちに向けて伝えてくれました。
INDEX
イタリア料理教室Cucina Italiana Via Frua 緒方美智子先生
緒方美智子先生は6年間のイタリア・ミラノ滞在から帰国後に料理教室『Via Frua』を主宰します。この名前は、暮らしていたミラノの通りに由来しており、現地のシェフやソムリエ、そしてマンマたちから料理やワインの技術的なことはもちろん、食文化や食習慣、テーブルコーディネートなどイタリア式のおもてなしまで幅広く学び、それを身近な食材で作りやすいようオリジナルを加えたレッスンで人気の料理家さんです。料理王国アカデミーのサロンや講習会にも幾度となく参加し、常に学びを深めています。
今回は23年11月に行われた「美酒美⾷王国やまなし 料理講習会」で紹介された「ふじさんワインラム」を使い、ご自身の教室でレッスンを開催しました。
「ふじさんワインラム」とは?
富士山麓の静かな山間を開拓して作られた手作りの小さな牧場で育てられる「ふじさんワインラム」。乾燥牧草と穀物をメインに、そこにワインを絞った後に残る果皮や種をなどの絞りかす(パミス)を加えた餌で育てられる、いわゆるグレインフェッドで、くさみがなくきめ細かな肉質が特徴です。
レッスンスタート!
レッスンはまずイタリアの食習慣の紹介から始まりました。それはアンティパスト、いわゆる前菜から始まり、前菜と主菜をつなぐパスタやリゾット、スープのプリモ・ピアット、そしてメインのセコンド・ピアット、食後のデザートのドルチェと続き、それらが同時に提供されることはあまりなく、レストランに限らず学校の給食などでもコース仕立てで順に出て来ます。温かいものは温かいうちに。緒方先生のレッスンもそれにならい、一皿ずつ美味しく実食するところから逆算して、仕上げまで段取りされています。
というわけでまずはドルチェの「ミモザティラミス ヨーグルト風味」から。イチゴの鮮やかなソースとミモザに見立てて細かく切って散らしたカステラが美しいデザートです。
ティラ(引っ張る)+ミ(私を)+ス(上へ)=「私を引っ張り上げて」というヴェネト地方の方言が由来で、だからコーヒーやチーズなど気分を上げてくれるものがいっぱい入っている、というトリビアから、カステラやスポンジ生地を使った市販品がビチャビチャしがちなのに対し、ほとんどティラミス専用と言ってもいいくらいのサヴォイアルドビスケットを使うと時間をかけて水分を吸ってふっくらと仕上がるというポイントまで、楽しく語られながらレッスンは進んでいきます。
カステラを散らす手前まで仕上げて冷蔵庫へ。ここで次のメニューに移ります。
続いては「胚芽パンのニョッキ ブロッコリークリーム」。
イタリア式の先に全部混ぜて溶かしてから火にかけてとろみをつけて行くやり方でホワイトソースを作り、茹でてブレンダーでペースト状にしたブロッコリーと合わせます。塩味の調整をペコリーノチーズで行うのもイタリアスタイルです。
パンを使ったニョッキは宮廷の豪華な料理=クチーナ・リッカに対してクチーナ・ポーヴェラ、つまり「貧しい料理」とされますが、固くなったパンをいかにして美味しく食べるか、など様々な工夫がなされて来たのがこのクチーナ・ポーヴェラで、イタリアの家庭料理の豊かさの真髄はここにあると言えます。
ジャガイモのように茹でたりマッシュしたりする必要がないのも、家庭料理では嬉しいポイントです。
材料を混ぜて生徒さんみんなで成形し茹で上げたところで、本日最初の試食タイム!
合わせたワインは、山梨生まれのブドウ、甲州から造られる「キザンワイン白」。造り手の「機山洋酒工業 Kizan Winery」は甲州市塩山にある家族経営の小さなワイナリーで、地域に根差したワイン造りを心がけており、緒方先生はこのワインを「柑橘系の香りに、ふわっとはちみつのような雰囲気も、塩気を感じる旨味のあるドライの白」と紹介してくれました。
お次はいよいよ「ふじさんワインラム」の登場です。
まずソースは、ギリシャヨーグルト、ニンニク、キュウリ、オリーブオイル、そしてハーブの香りとライムの酸味を加えたザジキ風ソース。イタリアとも同じ地中海食文化圏と言えるギリシャでは羊と合わせる定番のソースです。
「ふじさんワインラム」は焼き縮みしないよう脂や筋に切り込みを入れて、サッとソテーに。焼きすぎると固くなるので要注意です。
空豆とオーブンで焼いておいたジャガイモ、そしてザジキ風ソースと一緒に盛り付けたら完成です。
試食は、ラム肉が苦手な生徒さんからも「このラム美味しい!」大好評。みんなその場ですぐに、スマートフォンでお取り寄せの方法を確認し合っていました。
合わせたワインは勝沼醸造の「甲州テロワール セレクション 穂坂甲州」。勝沼醸造はその名の通り甲州市勝沼町のワイナリーで、ブドウ品種の甲州に特化してワインを造っています。このワインは、韮崎市穂坂町の畑でとれた甲州を樽発酵・樽熟成させたもの。
先の「キザンワイン白」がステンレスタンクでの発酵・熟成で甲州らしい爽やかさに特徴があるのに対し、こちらは樽由来の厚みのある味わいで、「スッキリしてるけどコクがあり、ラム肉とも楽しめる白ワイン」と緒方先生。
最後はデザートの「ミモザティラミス ヨーグルト風味」を仕上げ、そんな甲州ブドウのワインの多様性を語らいながら試食。
レシピはもちろん背後にある食文化、そして今回は山梨県の食材からワインの合わせ方まで楽しく学んだレッスンとなりました。
山梨県の食材を紹介する料理王国のポータル、「美酒・美食王国やまなし」についてはこちらを。