PROFILE
フリー編集者・ライター クシダユリ
南山梨の情報を発信するフリーペーパー『南山梨 HuMaN』の制作を手掛け、早川町の広報誌などにも関わっています。地域に密着したコンテンツ制作を通じて、地元の魅力を広めることに情熱を注いでいます。
身延町で「てすきや 逆手山房(さかてさんぼう)」という名で工房をかまえる和紙職人の宮本重男さん。和紙と出会ったのは、昔働いていた東京都神保町の画材店で、その温かみのあるホッとするような手触りや、ていねいな手仕事に心惹かれたのだとか。一方で、職人が減り、和紙自体が少なくなっていた現実にひしひしと感じるものがあり、「自分でも残していきたい」という思いでこの道に進んだのだそう。
思わず触れたくなる、和紙の質感
現代の暮らしは、コピー用紙や本のページなど、つるっとした丈夫な「洋紙」にあふれています。表面は均一で、文字を書くにも印刷するにも使いやすい。あまりに生活になじんでいるからこそ、その存在を意識することは少ないかもしれません。
しかし、宮本さんの工房に入ると、自然と紙そのものに目が向きます。原料である楮(こうぞ)の繊維をあえて見せるもの、厚みにムラのあるもの、風合いの違うもの。見ていると思わず手で触れたくなります。紙のざらっとした質感を確かめたり、光に透かしてみたり。「和紙っていいなぁ」と浸ってしまうのは、きっと私だけではないはずです。
和紙の原料となる楮(こうぞ)。紙へ仕上げていく途中の姿
産地を越えて「甲州和紙」へ
身延町にある西嶋地区は、古くから書道用紙の産地として知られてきました。同じ南山梨エリアにある市川三郷町では障子紙の製造が盛んで、それぞれ得意とする和紙をつくりながら、両者は産地として栄えてきました。
しかし、現在では暮らしの変化とともに需要は減り、工場や職人も減少。そこで、西嶋和紙と市川和紙の生産を続ける人たちが一緒になり、「甲州和紙」として発信する取り組みを進めています。
両者はどちらも長い歴史の中で受け継がれてきた名前だけに、作り手たちにとっては簡単にひとつにまとめられるものではありません。それでも「甲州和紙」として発信することで、山梨に残るものづくりをこの先につないでいけると宮本さんは考えています。
「甲州和紙」と聞いて、「山梨にもこんな紙があるんだ」と知る人が増えていく。その名前をきっかけに、西嶋や市川三郷、それぞれの和紙づくりにもさらに興味が広がっていく。そんな流れができていったらいいなと思います。
INFO
◎てすきや逆手山房
住所:南巨摩郡身延町三沢5911-3
電話:090-3342-3815
和紙について相談したい人や、「和紙でこんなものを作ってみたい」というアイディアがある人は特に歓迎とのこと。
見学や訪問を希望する場合は、事前に電話での連絡がおすすめです。