空飛ぶクルマはもう未来の話ではない?山梨県と企業が社会実装に向けて動き出した!

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最終更新日: 2025.03.31

空飛ぶクルマはもう未来の話ではない?山梨県と企業が社会実装に向けて動き出した!

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2025年に開催される大阪・関西万博でデモ飛行が予定され、注目が高まる「空飛ぶクルマ」。

空飛ぶクルマの社会実装の実現による「空の移動革命」は、地域社会における交通手段、救急医療、災害救助や観光・レジャーなどの領域で新たなビジネスの創出も期待されています。

実証実験の聖地、山梨県でも「空飛ぶクルマ」の社会実装に向け、具体的な課題の洗い出しや民間企業、地元住民を含めた関係者の協力・連携を深めています。

そうした中、2025年1月10日に県内外の事業者や自治体でつくる「やまなし空の移動革命・社会実装推進ネットワーク」の第2回勉強会を開催。
多くの関係者が集まり、「空飛ぶクルマ」について熱く意見が交わされました。

「空飛ぶクルマは未来の話ではない。」

本記事ではそう遠くない未来に実現するであろう空の移動革命の様子が垣間見れた勉強会の様子をご紹介します。

「空の移動革命」として期待と課題

「空⾶ぶクルマ」とは、電動で自律飛行、垂直に離着陸する次世代モビリティのこと。いま国内外で急速に開発が進められ、多様な活用が見込まれています。たとえば、交通が不便な地域での移動手段や、救急・災害医療の現場での人員輸送、さらには観光の目玉として“空からの絶景を楽しむ”というワクワクする未来も広がります。

こうしたイメージ映像を収めた山梨県のコンセプトムービーはこちらです。ぜひ“空を駆ける感覚”を味わってみてください。

一方で、安全性への不安や、新しいモビリティがゆえに県内でどのようなビジネス展開の可能性があるのか見えにくいなど、さまざまな課題があるのも事実。山梨県リニア・次世代交通推進グループの宮川新一さんは、「実用化に向けてエアモビリティに対する理解を深める機会をつくりながら、事業環境の整備・調査も並行しておこなっています」と語りました。
多くの人の暮らしに 寄り添う技術だからこそ、課題や懸念を解消しつつ、社会実装に向けて着実なステップを踏む必要があります。

県だけでなく民間事業者・県内自治体等との社会実装に向けたネットワーク作り

山梨県では「空飛ぶクルマ」の円滑な社会実装のために、2024年9月「やまなし空の移動革命・社会実装推進ネットワーク」を発足。県内外の事業者や自治体など、未来に情熱を持つプレーヤーが集結し、情報共有と連携を深めています。

第1回会議(2024年9月)では、日本政策投資銀行と山梨県が「空飛ぶクルマ」の最新動向を紹介。参加者の関心は高く、“自分たちの地域や事業にも生かせるかもしれない”という期待が広がりました。

山梨県のこれまでの取り組みは、
山梨県/「空の移動革命」実現に向けた取り組み
をご覧ください。

そして第2回会議(2025年1月)では、川崎重工業・日建設計・九州旅客鉄道(JR九州)・山梨県の事業担当者が登壇し、それぞれが取り組む事例や今後の展望について語りました。企業側は、鉄道や建設・まちづくり、航空事業などバックグラウンドの異なるメンバーが集合。会場には、「知らなかった視点が盛りだくさん!」と熱心に耳を傾ける参加者の姿があり、まさに“多角的な連携の輪”を感じさせる場となりました。

以下、それぞれの事業者の講演とその感想をご紹介します。

川崎重工業:ヘリがつなぐ地域の未来と「空飛ぶクルマ」への期待

川崎重工業の堀井知弘さん

講演者:堀井知弘さん
川崎重工業は、ヘリコプターのWeb手配サービス「Z-LEG」を展開しています。Webで申し込みを行うだけで、ヘリコプターが目的地まで運んでくれる仕組みです。このサービスにより、JR駅や廃校跡地、北海道の空港など多様なロケーションから離発着できるようになり、観光客や地域住民にとって移動の自由度が飛躍的に高まっています。
空飛ぶクルマの実装に向けてこのサービスの仕組みが、有効に活用できるものと考えています。

堀井さんの講演内容のポイント

  • 移動の時短で観光をより充実したものに
    「Z-LEG」の仕組みを活用することにより、移動時間を短縮して浮いた時間をレジャーや食事、伝統芸能の鑑賞などに充てられます。これにより地方経済が潤い、観光地に長く滞在してもらうことで、より深い体験を提供できます。
  • 富裕層向けの新たな誘致の可能性
    宿泊施設が都市部にしかない場合でも、都市部からの移動が楽になれば地方観光地の課題である「富裕層向けの宿泊施設不足」もカバーできるかもしれません。
    宿泊は都市部で、観光は移動して楽しむといった、富裕層にとって魅力的な旅の選択肢が増えるわけです。
  • 社会課題解決への期待
    地方の医療機関が閉鎖し通院が難しくなっても、ヘリコプターで都市部の病院へアクセスしやすくなります。また、災害時の物資輸送や通勤・通学の手段など、「空の移動」を日常的に整備しておくことで、いざというときにも役立つと期待されています。

堀井さん 講演後のコメント
「今回の勉強会では鉄道や建設など異業種の方々から多角的なご意見を伺え、純粋にワクワクしました。業種は違っても“未来をより良くしたい”という想いは同じ。いろいろな視点を取り入れて、ヘリコプターだけでなく、将来的に『空飛ぶクルマ』の可能性もさらに広げていきたいと思っています」

日建設計:“未来の日常”を支えるまちづくり

日建設計の須賀博之さん

講演者:須賀博之さん
都市計画や建築設計を行う日建設計では、10年後・20年後を見据えたまちづくりを先端的な取り組みや技術を取り入れながら進めています。今回は、山梨で「空飛ぶクルマ」が実現した未来のイメージとそのメリット、そして進め方について考えてみました。

須賀さんの講演内容のポイント

  • 次世代ネットワークの拡張(山梨を”効率よく”満喫できるようになる)
    群馬県高崎市やさいたま市は甲府市から約100キロ圏内。もし「空飛ぶクルマ」で高崎駅・大宮駅などにアクセスできれば、東北・上越新幹線へ簡単に乗り継げるなど移動の選択肢が飛躍的に広がります。県内観光も効率よく周遊できるようになり、例えば、甲州市内のワイナリー、河口湖、富士山、ほったらかし温泉といった工程を一日で満喫することも視野に入りそうです。
  • 未来の日常
    今後、リニア中央新幹線山梨県駅や周辺の開発、まちづくりが進められていくと思います。その際「空飛ぶクルマ」の運用が可能になるように、空にも道を計画するような設計を進めていくことも重要と考えます。「空飛ぶクルマ」が実用化される未来も見据え、山梨県駅周辺の計画を進めていくといいのではないでしょうか。
  • 価値の転換
    以前、山梨県小菅村でドローンを使って荷物を配送する取り組みをした際、地元の方々と地元の木材を使って離着陸スタンドを組み立てました。この取り組みは、地元の方々同士のコミュニケーションや木材の有効活用につながったと思います。「空飛ぶクルマ」に関する取り組みでも、まちづくりやコミュニティづくりのきっかけがありそうです。
  • 段階的成長
    「空の移動革命」は一朝一夕に起きるものではなく、拠点やインフラを少しずつ整備しながら一つ一つコツコツと前進していくイメージです。いきなり大規模な離発着場が建設されるだけのイメージだけではなく、地域に合った小さな拠点をつなぎ、徐々に成長していくまちづくりの選択肢もあると思います。

須賀さん 講演後のコメント
「『空飛ぶクルマ』の社会実装に向けて、参加者の方々も関心が高く、実装への期待度が伝わってきました。山梨ならではの議論もでき、大変貴重な機会となりました。ありがとうございます。これからも、まちづくり・場づくりの観点から“空の移動革命”に貢献できるよう注力していきたいです」

九州旅客鉄道:鉄道と“空”をかけ合わせる地域創生

JR九州の神子徹さん(左)

講演者:神子徹さん
九州エリアには、全国平均よりも早く高齢化が進み、近年では自然災害等により公共交通網の維持が困難になっているという社会課題があります。また、九州各地の観光地は駅から離れたエリアに点在しており、2次アクセスの改善が求められています。それらの課題解決に大きな期待が寄せられているのが「空飛ぶクルマ」です。

神子さんの講演内容のポイント

  • 鉄道と空飛ぶクルマの連携による地方創生
    鉄道ではアプローチしにくい山間地や離れた秘境・観光スポットにも、「空飛ぶクルマ」を組み合わせることでスムーズに移動できるようになります。更に防災、救急の活用や住民の生活の足としても、移動手段が増えることは大きなメリットです。
  • “乗ること自体が観光コンテンツ”になる可能性
    例えば阿蘇山火口など、“上空から眺める”ことでさらなる魅力を引き出せる観光地は多く存在します。JR九州の鉄道をご利用いただく既存のパッケージツアーの中に空飛ぶクルマをセットするなど、新たな旅行商品が誕生する余地もあります。
  • 今後のロードマップ
    JR九州は「空飛ぶクルマ」開発を進めるSkyDrive社と連携協定を締結。2028年度ごろには遊覧事業をスタートし、2030年度以降には九州内の広域移動、2035年度以降には都市部でのエアタクシーサービスの提供を目指すプランを描いています。
    JR九州は「安全・安心なモビリティサービスを軸に、地域の特性を活かしたまちづくりを通じて九州の持続的な発展に貢献する」という「2030年長期ビジョン」を掲げています。「空飛ぶクルマ」の実現はこのビジョンにも合致し、既存の鉄道ネットワークに加え、新時代のモビリティサービスで、地域を盛り上げたいという思いが込められています。

神子さん 講演後のコメント
「九州エリアだけでなく、高齢化や公共交通網維持の課題に直面している地域は多いと思います。地域が抱える課題を解決する手段として、『空飛ぶクルマ』には大きな可能性があります。地方創生に向けた取り組みを、九州からも積極的に発信していきたいです」

山梨県:今年度の取り組み状況の共有と未来への決意

講演者:宮川新一さん

講演者:宮川新一さん (山梨県リニア・次世代交通推進グループ)
山梨県では「空飛ぶクルマ」の社会実装へ向け、(1) 民間企業等がビジネスを展開しやすい環境整備、(2) 県民への理解促進――この2つを大きな柱として活動しています。

宮川さんの講演内容のポイント

  1. 離着陸場の候補地、有望ルートの調査・検討等
    山梨県内全域を視野に入れ、離着陸可能な候補地と観光・生活両面において有用なルートの洗い出しなどを進めています。現時点では、甲府エリアと富士北麓エリアを結ぶルートが有望と考えています。
  2. 次世代モビリティに親しむイベント開催
    イベントを通じ、県民からは安全性を重視する声があることもわかりました。プラス面だけでなく、皆さんが抱える“不安”な面についてもしっかりと把握し、丁寧に説明しつつ、「空飛ぶクルマ」の理解を深めていただけるようなイベントも継続して実施していきたいと考えています。

宮川さん 講演後のコメント
「今回の勉強会を通じて、多くの事業者や自治体の皆さまと具体的なビジョンを共有できました。これからも『やまなし空の移動革命・社会実装推進ネットワーク』を核に、情報共有と連携を深めていきたいです」と語り、リニア中央新幹線の開業を見据えて“地上×空”の融合を目指す考えを示しました。

スムーズな移動が実現された県内ネットワークのイメージ(空の移動革命・社会実装推進ネットワーク会議資料から一部修正)

行政だけでも民間だけでもなし得ない“みんなで作る未来”

山梨県が進める「やまなし空の移動革命・社会実装推進ネットワーク」は、業種も立場も異なるプレーヤーが集まり、互いに刺激を与え合いながら前に進んでいます。
行政だけ、民間だけ、では実現することができない、多くの関係者相互の協力関係があるからこそ実現できる取り組みです。

「空飛ぶクルマ」がもたらす変化は、山梨の観光や地域課題の解決だけにとどまらないかもしれません。きっと近い将来、空はわたしたちの当たり前の移動空間になり、新たな産業や暮らしを育んでいくでしょう。

“空を移動する”時代は、もうすぐそこに。空の移動革命で大きく変わる山梨の姿に期待が膨らみます。

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