介護ロボット・ICT導入に関するモデル事業成果報告会レポート

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最終更新日: 2024.02.09

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介護ロボット・ICT導入に関するモデル事業成果報告会レポート

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最終更新日: 2024.02.09

2023年3月20日、「介護ロボット・ICT導入に関するモデル事業成果報告会」が開催されました。

本事業では、山梨県内の介護事業所が介護サービスの質を向上させつつ、業務の負担を軽減するため、介護ロボットやICTを活用する取り組みを支援しています。 

報告会では、今年度のモデル事業所に選ばれた2施設が導入事例を紹介しました。それぞれの施設が導入にあたって心がけたことや、苦労したこと、スタッフが感じた効果について発表しました。

報告会の様子。会場とオンラインのハイブリッドで開催された

テクノロジーを活用した業務効率化モデル事業とは

今年度始まった本事業は、介護ロボット及びICT機器を導入するうえで、より効率的、効果的な導入を行うため、モデル事業所がNTTデータ経営研究所のコンサルタントとともに、介護事業所の業務上の課題を分析し、改善策を策定したうえで導入します。
そして、この導入事例をモデルとし、県内事業所へ介護ロボット、ICT機器の導入方法の普及を図る事業です。

介護ロボット・ICT導入を進める上でのポイント 

2事業所の報告に先立ち、今回、事業所の介護ロボット・ICT導入支援にあたったNTTデータ経営研究所の大塚恒治氏が、介護現場における介護ロボット・ICTの活用方法や、導入を進める上での注意点を解説しました。 

大塚氏は、令和22年度には介護人材が約69万人不足すると推計されている中、すでに介護ロボット・ICTは介護現場のさまざまな場面で活用されていることを紹介しました。たとえば、利用者が身につけることで歩行の安定性を向上させる介護ロボットや、夜勤の時間帯に利用者の状態をスマホで確認できるシルエット型見守りセンサーが、介護者の負担を軽減しています。 

ただ、事業所が介護ロボットを導入するときには、ただ導入するだけでなく、その機能を使いこなすことが大事だといいます。大塚氏は、「介護ロボットによって、職員の負担を軽減し、介護サービスの質を上げるためには、導入前の情報収集、実施体制の整備、スタッフ全員にわかりやすいマニュアル作りといった方法論と、組織のモチベーションが重要になってきます」と語りました。 

今回、モデル事業所となった2施設は、大塚氏のこうしたアドバイスを踏まえ、導入前の準備から効果測定まで取り組みました。 

大塚氏が示した、介護ロボット導入までの9ステップ(提供:NTTデータ経営研究所

モデル事業所による成果報告 

今年度、モデル事業所となったのは、みのりの里介護老人保健施設旭ヶ丘(医療法人恵風会)と、介護老人保健施設フルリールむかわ(医療法人燦生会)です。 

それぞれが、介護ロボットの「準備期」「導入前期」「導入後期」でどのような工夫をし、どういった成果があったのでしょうか。主な発表内容をお伝えします。 

1.みのりの里介護老人保健施設旭ヶ丘(医療法人恵風会) 

「みのりの里介護老人保健施設旭ヶ丘」では、利用者の見守り機器を導入しました。 

【準備期】 

<実施したこと> 

  • 各所属長で意見交換をした。 
  • プロジェクトチームのメンバーを選定した。 

<苦労したこと> 

  • 管理職同士の意見交換では、現場のニーズがわかりづらかった。 
  • メンバー選定をする際、管理職のみでは電子機器になじみがない。一方、プロジェクトチームの年齢層を低くすれば、経験が浅く、指示命令の際に問題が生じてしまうとの懸念があった。 

<解決策> 

  • 幅広い層で意見交換をし、現場が抱える問題点を洗い出した。 
  • 管理職だけでなく、電子機器の操作に慣れている若いスタッフもプロジェクトメンバーに起用した。 

【導入前期】 

<実施したこと> 

  • 現場の職員が、日頃の業務の課題を「気づきシート」に記入。たとえば「センサーが各居室にあるため、夜勤時、Aフロアの利用者様の対応をしている最中に、Cフロアの利用者様のセンサーの反応があった際、すぐに対応に行けず、危ないことがある」などの内容があった。 
  • さまざまな「気づきシート」を踏まえ、利用者の見守りができ、呼吸数や脈拍、睡眠度をモニターできる介護ロボットの導入を決定した。 
  • 複数社の介護ロボットのデモを実施し、パラマウンベッドの「眠りSCAN」「眠りSCANeye」の導入を決めた。 
  • 介護ロボット導入に向け、マニュアルを整備した。 

<苦労したこと> 

  • 現場にあるさまざまな課題の中で、どの課題の解決を優先するか決めることが難しかった。 

<解決策>

  • スタッフとともに、理事長も課題を分析、検討し、課題を可視化した。 

【導入後期】 

<実施したこと> 

  • 本格導入に向け、スタッフ向けマニュアルを作成した。 
  • 介護ロボット導入により、モニターやスマホで利用者の見守りができるようになることから、夜勤時の巡視を1時間に1回から、2時間に1回に減らした。 
  • 介護ロボットを導入したことで改善したことをスタッフ間で共有した。 

<苦労したこと> 

  • 施設内のネットワークが不安定だった。 
  • アプリ・カメラの操作について、職員間で知識にムラがあった。 

<解決策> 

  • Wi-Fi環境の再設定を実施した。 
  • アプリやカメラの設定を行う職員を、若い職員や、PC操作に慣れている職員に限定した。 
介護ロボット導入後は、モニターやスマホで、利用者の様子を確認できるようになった
(提供:みのりの里介護老人保健施設旭ヶ丘

【導入の成果】  

  • 夜勤者の平均歩数が約1万4千歩から千歩ほど減り、約1万3千歩となった。 
  • 「無駄な訪室が減りましたか」「精神的に負担が軽くなりましたか」とのアンケートに、いずれも50%以上のスタッフが「実感した」と回答した。 
  • 現場のスタッフからは「以前よりも利用者様の状態が見られて、安心して仕事ができる」「複数の利用者様からセンサーが鳴っても、カメラ機能で確認できるため、優先順位が早く決められるようになった」との声が上がった。 

今回、介護ロボット導入のプロジェクトリーダーを務めた渡辺格氏は、報告の最後に、「今後、介護が必要になる人口は必ず増加していきます。介護ロボットやICTのテクノロジーを十分に現場で活用することは、施設の使命になると感じました。これからも質を高めていけるよう、施設一丸となって取り組みたいと思います」と、今後への抱負を語りました。 

2.介護老人保健施設フルリールむかわ(医療法人燦生会) 

「介護老人保健施設フルリールむかわ」では、カメラ付き見守りセンサーを導入しました。 

【準備期】 

<実施したこと> 

  • プロジェクトチームのメンバーを選定した。 
  • 「介護ロボットを導入し、今までの業務オペレーションを一新し、一人あたりの労働生産性を上げる」という目標を設定した。 

<苦労したこと> 

  • 通常業務があり、メンバー間の話し合いに時間をかけづらかった。 
  • メンバー全員がミーティングに毎回参加することは難しかった。 

<解決策> 

  • 定例で、短時間のミーティングを実施した。 
  • プロジェクトチームのメンバー同士、チャットツールを使って情報を共有した。 

【導入前期】 

<実施したこと> 

  • 全職員が現状の業務の課題を「気づきシート」に記入。内容を「見守り」「入浴」「設備・環境」など8つのグループに分け、問題点や原因を分析した。たとえば、「フロアの見守りがいない時がある」「夜勤時にセンサーの誤作動がある」などの課題があがった。 
  • 気づきシートをもとにした分析の結果、「職員が居室内の利用者の様子を確認できず、センサーが鳴って訪室しても、センサーの誤作動であることも多い。誤作動に対応することが多いと、通常の見守りが十分にできず、結果として転倒等の事故につながりかねない」との結論に至り、カメラ付き見守りセンサーを導入することに決めた。 
  • 3社のカメラ付き見守りセンサーでデモを実施したところ、導入後のサポート体制が充実していることなどから「HitomeQケアサポート」に決めた。 
  • カメラ付き見守りセンサーと、これまであったインカム・電話・センサー通知の一体型システムを統合したマニュアルを作成した。 

<苦労したこと> 

  • 導入工事直前に、コロナのクラスターが発生し、対応に追われた。 

<解決策> 

  • 工期や研修スケジュールを調整した。 
  • プロジェクトチームのメンバー同士でチャットツールを活用し、継続可能な活動を模索した。 

【導入後期】 

<実施したこと> 

  • カメラ付き見守りセンサーを試行的に導入した。 
  • 導入したことで改善したことをスタッフ間で共有した。 

<苦労したこと> 

  • 今回の事業に限らず、「逆に業務が増えている」などのネガティブな意見が上がることがあり、職員の失敗体験が定着してしまう傾向にある。 

<解決策> 

  • プロジェクトチームのメンバーが、導入後の課題を早めにスタッフから聞き取り、早急に対応した。 
センサーが鳴ると、天井についているカメラを通じて利用者の様子を確認できる
(提供:介護老人保健施設フルリールむかわ

【導入の成果】 

  • カメラ付き見守りセンサーを本格的に運用し始めた直後のため、導入後のセンサーの誤作動の回数や転倒事故の件数はまだ調べていないが、職員へのアンケートの結果、「身体的疲労感が強い」は90%から61%へ、「精神的疲労感が強い」は80%から69%へと、いずれも減少した。
  • 職員からは「手元で利用者の様子が確認できるので、無駄な訪室が減った」「夜間業務の精神的不安が減った」といった、導入を評価する感想が寄せられた。 

報告を担当した内藤義仁、丹澤優哉両氏は最後に「現場の課題を現場スタッフは気づいています。職員の気づきに、こちらが気づくことも重要。働きやすい職場には、職員もご利用者もともに笑顔があふれているはずです」と、今後、より働きやすい職場をつくりあげる決意を語りました。 

まとめ 

2事業所の発表後、大塚氏が「2つの施設では若いリーダーが精一杯取り組み、業務改善のプロセスの中で様々な課題を乗り越える事が出来た。業務改善には終わりはないので継続して取組を続けてほしい。今回のセミナーに参加頂いた事業所でも2施設の取組を参考に業務改善を進めてほしい。」と述べました。

山梨県は来年度も、2事業所を選定し、同様のモデル事業を実施する予定です。5月16日には、来年度の事業説明会を開催します。詳細は、4月に開設される介護福祉総合支援センターのホームページで告知されます。

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