7年連続ミシュラン三つ星の料理人が、山梨で新たな店を構えた理由とは?

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最終更新日: 2026.03.19
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7年連続ミシュラン三つ星の料理人が、山梨で新たな店を構えた理由とは?

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「ミシュランガイド東京」で三つ星を7年連続獲得した和食界のレジェンド、江﨑新太郎さん。2018年、人気店だった東京の「青山えさき」を閉めて拠点を山梨県北杜市に移し、「八ヶ岳えさき」を開業しました。都心から山間に移転して、たった1人で切り盛りする店を始める――そんな大きな決断の背景には、どんな思いがあったのでしょうか。本記事では、江﨑さんに山梨への移転のきっかけ、料理人として感じる山梨の魅力、そしてこの地で見据える未来について伺いました。

和食界のレジェンドを魅せたのは、どこまでも柔らかな「水」

――東京での独立からミシュランの星獲得までの経緯についてお聞かせください。

大学を卒業してから、赤坂の料亭で10年間修行し、33歳のときに独立して「青山えさき」を開店しました。初めてのミシュランの星獲得は46歳でしたね。

ミシュランは元々、フランスで旅行者のために創刊された歴史あるガイドブックです。東京版が初めて発行された2008年に、初めて二つ星をいただきました。「世界的な媒体に認めてもらえたんだ」と本当に驚きましたね。

東京では毎年どんどん店が増えて競争も激しくなる中で、正直、私は二つ星でも十分満足していました。それが翌年も二つ星をもらい、さらにその翌年には「卓越した料理、そのために旅行する価値がある」と評される三つ星に昇格したんです。そこから7年連続で三つ星を維持できたのは、スタッフやお客様方に恵まれたからこその成果だと感じています。

ミシュランは私の料理人生を大きく変えてくれました。名誉ある評価をいただいたことで、より真摯に、矜持を持って料理と向き合えるようになりましたね。その意味でミシュランにはとても感謝しています。

――東京で大きな成功を収められた。そこから山梨に移転されるという大きな決断をされましたが、山梨県とはどういった関わりがあったのでしょうか。

以前、東京の自宅で甲斐犬を飼っていたんです。愛犬にぜひ生まれ故郷を見せたいと思って山梨に遊びに行ったのが、最初のきっかけですね。

実は、いまの店舗がある敷地は、お店を出す10年以上前に「いつかここに別荘を建てよう」と思って購入していた土地なんです。ただ、毎週こちらへ遊びに来るうちに、この環境で料理がしたくなってしまったんですよ。

――料理人として、山梨の環境のどこに魅力を感じましたか。

いろいろと要素はありますが、とりわけ大きかったのが「水」ですね。日本料理は出汁の文化ですから、その大元となる水の質がとても大事です。山梨の水はとても柔らかな軟水で、まったくと言っていいほど、とがりがない。体の中にすっと浸透していく水だと感じています。日本は水の国なので、各地に美味しい水がありますが、私の体には山梨の水が特に合ったんだと思います。

――山梨の立地的な利便性はいかがでしょうか?

今でも東京の自宅と店を行ったり来たりしているのですが、車があれば中央道一本で難なく移動できるのがいいですね。豊洲市場で食材を仕入れて、2時間ほどで店まで運べることも、店をやる上でとても助かっているポイントです。最近、北杜市も都心からの移住者がかなり増えていますが、通勤できる距離感だと思うと、それも納得できますね。

一人きりで店に立つ。自身の料理の集大成に向かって

――移転前と移転後で、どのような変化がありましたか。

最も大きな変化は、店の規模を小さくして、調理から接客まですべて一人でするようになったことですね。

東京の店は規模も今より大きく、スタッフや弟子たちへの指導も含め、毎日さまざまな作業に追われていました。加えて三つ星ホルダーですから、そのプレッシャーも相まって、精神的な負荷も大きかったんです。だから、もっと静かな環境で意識を集中させて、お客様と自分の料理に向き合いたい――移転前からそんな思いを持っていました。

――お一人で店を切り盛りすることに、どのようなよさを感じていますか。

100%の純度で食材と向き合い、料理に集中できる喜びを、日々噛み締めています。多分、自分の料理の集大成がここで完結できるんじゃないかなと感じています。

あと、お客様との関係も変わりましたね。東京では毎日忙しく、お見送りの時くらいしかご挨拶できなかったんです。今の店は調理場とお客様の席がとても近くて、自分の家に招いて料理を振る舞うような距離感なので、いろいろとお話ができて楽しいです。お客様が料理を食べた瞬間の反応を直接見られるので、それもモチベーションの向上につながっています。

――移転されてから、客層の変化は?

移転前はミシュランの影響もあって、外国人のお客様が半分ほどを占めていました。ヨーロッパの方が多かった印象です。残りは東京の方がほとんどだったかな、と。

今の店については、移転当初は東京からのお客様が多かったんですが、少しずつ地元の方が増えてきて、現在は7〜8割が山梨在住のお客様ですね。残りの2〜3割は長野県、愛知県の方が多いです。

そもそも、私がここに店を構えた理由の1つには「全国にこんな美味しいものがたくさんあるということを、山梨県民の方に伝えたかった」というのがあって。自分で言うのもなんですが、山梨愛、すごく強いんですよ。そんな愛すべき山梨の人たちに「東京に行かなくても、私のところで全国の美味しい食材を揃えていますので、ぜひ来てください」と伝えたかったんです。だから、山梨からのお客様が少しずつ増えてきて、今では大部分を占めるようになって、とてもうれしく思っています。

多様なフルーツ、高品質な米……それらを支える、行政や農家の努力

――山梨で特に魅力を感じている食材はありますか?

それはもう、いろいろありますよ。第一に挙げられるのは、フルーツですね。これは本当に素晴らしい。私の店は山梨の食材だけを扱っているわけではないのですが、フルーツだけはずっと山梨産がメインですね。

たとえば、山梨で生産されている桃は何種類もあって、それぞれ微妙に味や食感が違います。しかも、1週間スパンで市場に流通する品種が変わるんです。だから、その日に手に入る桃によって、料理法を考えなくてはなりません。大変ですけど、料理人としてすごく刺激的で楽しいですね。また、お米も素晴らしい。個人的には「にじのきらめき」という品種が気に入っていて、親しみを込めて「にじきら」と呼んでいます。仕事柄、全国のお米を食べ比べていますが、「にじきら」は粒が大きくてふっくらしている、甘みがあるといった大事な要素を押さえつつ、温暖な環境でもしっかり育つよう改良されているんです。温暖化の影響が農産物に大きな影響を与えつつある中で、行政や農家の方々が美味しいお米を作り続けられるよう、懸命に栽培方法の改善に取り組んでいらっしゃって、その姿勢も素晴らしいと感じています。

――山梨に移転してから、こちらの素材を生かしてよくつくるようになったメニューはありますか?

特定のメニューはないのですが、旬のフルーツはよく使いますね。もちろん生で食べても美味しいですが、ソースにしたり、焼いてフランベして付け合わせにしたりと、その品種の特性を最大限に生かせるような形で提供しています。

ソースと言えば、こちらに来てから考案した「お米のソース」は、お客様にも好評です。お米を裏ごしして出汁と合わせたとろとろのソースは、魚介類との相性が抜群にいいんですよ。このソースをベースに酢と油を足せば、ドレッシングにもなります。実際に提供すると、「これお米なの?」「食べたことない、美味しい!」と驚かれることが多いですね。

基本的な料理への姿勢は、東京でやっていた頃と変わりありませんが、山梨に来てから面白い食材に出会う機会は増えたなと感じています。明日はどんな食材と出会えるか、どんな調理法を試そうか……そんなふうに料理人としてこの地で過ごす日々を、とても楽しめています。

水、空気、食材――言葉にしきれない山梨の魅力を、ぜひ現地で

――山梨の店を拠点に、どのようなことに挑戦していきたいですか?

東京の忙しさから離れてのんびりやろう……なんて気持ちはまったくありません。全身全霊で料理に向き合いたくてこちらに来たので、何よりもまずは日々の店の切り盛りを、真摯にやっていきたいです。

それに加えて、山梨のためにもさまざまな活動ができたらと思っています。現在、県から「にじきら」のアンバサダーに任命していただいているので、「にじきら」を中心とした山梨県産のお米の良さは、多くの人にPRしていきたいなと。近い将来、海外にも積極的に展開できればと考えています。

いま、日本料理は世界的に注目を集めています。それと相まって、日本らしい食材の需要も高まっているんです。日本のフルーツは海外でも高品質なブランドとして世界に流通していますから、その流れで近いうちに、お米も通用するようになるはずだと思っています。

――今後、叶えたい夢や目標は?

いろいろとやってみたいことはありますが、「八ヶ岳えさき」の店主としては、一人でも多くの山梨の方に食べに来てもらいたい――これに尽きますね。山梨には、そして日本には、まだまだこんなに美味しい食材があるんだということを、私の料理を通して知ってもらいたいです。

だいぶ山梨贔屓なことを言ってしまいましたが(笑)、もちろん山梨県外の方々にもたくさんお越しいただきたいです。山梨には、言葉では表現しきれない魅力が山ほどあるので、私の店に来るのをきっかけにして、それを体感してもらえたらうれしいですね。

@yamanashi_yosugiru 山梨県が「〇〇」すぎる!!📢 様々な場面で山梨を選択した方に、その理由や感じている魅力など、リアルな声をインタビューするシリーズ第10弾🎤 山梨県が「知られてなさ」すぎる!! と語るのは、ミシュラン三つ星7年連続獲得したシェフの江﨑新太郎さん🌾🍚 👨‍🍳「水と環境、食材と空気感に魅せられた。料理の集大成がここで完結できると思っている。」 あなたもきっと、山梨がちょっと好きになるかも…!! 協力:日本料理 八ヶ岳 えさき #山梨県が👍👍すぎる #移住 #にじのきらめき #ミシュラン #八ヶ岳 ♬ オリジナル楽曲 – 【公式】山梨県が良すぎる

八ヶ岳えさきについて詳しくはこちら

文・西山武志、写真・中込 涼

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