ワイン県やまなしの「テロワール」とは?山梨の取り組みや、テロワールが育む味わいについて説明

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最終更新日: 2024.11.14

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ワイン県やまなしの「テロワール」とは?山梨の取り組みや、テロワールが育む味わいについて説明

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その地ならではの地形や気候、土壌といった自然環境や、そこから生み出される旬の食材や食事、それらを育む文化を意味する「テロワール」をご存知でしょうか。

テロワールとは、フランス語の「風土」や「土地」から生まれた言葉で、農産物や食品の品質や特徴を決定する環境を指します。例えばワインでは、同じ品種のブドウでもテロワールの違いによって、味や香りが大きく異なることが知られています。

新旧約90のワイナリーが集まり、日本ワインの生産量が日本一を誇る山梨県では、特有の地形を活かしたぶどう栽培と、それを原料としたワイン生産が古くから盛んです。また、地域毎に異なる水質は、県内各地で個性豊かな日本酒の生産につながっています。

この記事では「テロワールとは何か」「テロワールに関する取り組みにはどのようなものがあるか」といったテロワールの基本のほか、山梨県で体感できるテロワールを詳しくご紹介します。

地域の文化や風土を深く感じながら旅したい人は、ぜひ参考にしてください。

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テロワールとは何か

テロワールの概念を古くから用いるフランスのワイン業界では、テロワールというと主にブドウ畑を取り巻く自然環境、つまり土壌、気候、地形などのことを指します。

テロワールは甘みや香り、味の深みなど、農産物の個性を決定する重要な要素であり、その土地の特徴を反映した、独自の味わいを生み出す鍵となるのです。

例えば、日本有数の日照時間や昼夜の寒暖差が大きい内陸性の気候の中、扇状地で育つ山梨県のモモやブドウは、豊かな風味を持ち、糖度も高いといわれています。

近年では、テロワールの概念はワインに限らず、コーヒーやチーズなどの農産物にも取り入れられ、各地の特産食材を語る際にも使われるようになっています。

続いて、テロワールと関連する2つの考え方についてご紹介します。

テロワールとGI(産地呼称制度)

フランスでは、1930年代に制定されたワイン法(原産地統制呼称法)をベースに、テロワールの考え方が強く根付いています。ここから生まれたのがGI(産地呼称制度)です。

GIとは、その地域ならではの品質、社会的評価などの特性を持つ産品の名称を、地域の知的財産として保護する制度です。GIにより、その地域特有の産品が他の地域からの模倣や不正な使用から守られ、正当な評価を受けることができます。

日本では、酒類のGIが1995年(平成7年)に始まり、農林水産物・食品​​のGI制度は2015年(平成27年)に始まりました。現在では、さまざまな伝統食品がGI制度により保護され、その地域の特性や歴史が反映された高品質な産品として評価されています。

テロワールとGIによって、地域独自の文化や伝統が尊重され、産品の価値が高められるのです。

テロワールとサステナビリティ

テロワールは、地域の自然環境を尊重した、長期的な視点で育まれます。これは、製品の質を高めるだけでなく、地球環境と地域社会にも責任を持つこと、つまりサステナビリティを重視する考えにほかなりません。

甲州市勝沼町では1300年ほど前に、東西交易とともにシルクロードを経て、ブドウ栽培が始まったともいわれています。甲州市の大善寺には、ブドウを手にした薬師如来像が祀られており、地域の歴史と自然環境が深く結びついていたことを示しています。今もブドウの生産が盛んであることが、ここが「ブドウの生産に最適な地というしるし」と言えるかもしれません。

また、山梨を代表するワイン用ブドウの品種「甲州」や「マスカット・ベーリーA」は、山梨の自然環境に合った「適地適作」な品種です。

このように、テロワールとサステナビリティは密接に関係しています。テロワールは、地域の自然環境を活かしながら持続可能な農業を実現するための重要な考え方です。

やまなしのテロワールを構成する要素

山梨県は、甲武信岳(こぶしがたけ)を中心とした関東山地、南アルプス、富士山などの山々が甲府盆地の四方を囲む地形となっています。

ここでは、独特な地形を有した山梨のテロワールを構成する主要な要素について、詳しく紹介します。

日照:日本有数の日照時間がもたらす甘み

山梨県は、日本有数の日照時間が長い県として知られています。甲府市や甲州市など、県内の多くの地域で年間の日照時間が2,000時間を超えています。 

また、高い山に囲まれた甲府盆地では、年間の降水量が少なく、昼と夜の気温差も大きいのも特徴です。植物は、昼間しっかり光合成をして作られた糖分を、夜の間に実に蓄えます。また、雨が少ないことで実の中の糖分の濃度が高くなり、甘みを増していきます。

山梨の晴れが多く寒暖差の大きい気候が、山梨の果物や農産物に甘みをもたらすのです。

水:「天然の水がめ」

山梨県は「天然の水がめ」と呼ばれるほど、豊富な水資源に恵まれています。富士山や八ヶ岳、南アルプスなど周囲の山々に降った雨や雪が地下水となるからです。

山梨県は豊富な水資源を背景に、ミネラルウォーターの出荷額日本一を誇っています。

立地・土壌:世界農業遺産に認定

甲府盆地を囲む傾斜地では、果物づくりに適した水はけのよい土壌が形成されています。峡東地域では日当たりや標高をうまく使い分け、ブドウやモモなど多様な果樹栽培が行われています。

傾斜地を活用した果樹栽培が山梨県の農業の特色となっており、2022年7月には、峡東地域の扇状地に適応した果樹農業システムが世界農業遺産に認定されました。

自治体や企業のテロワールに対する取り組み

続いては、全国の自治体や企業における、土地の魅力を活かしたテロワールの取り組みを紹介しましょう。

GI Yamanashi(ワイン・日本酒)

山梨県のお酒といえばワインを思い浮かべる方が多いと思いますが、豊富な水を活かした、個性あふれる日本酒の酒蔵も各所に点在しています。これらの酒蔵やワイナリーの活動が認められ、山梨県は日本酒とワインの両方でGIを取得しました。

2013年にワインが、2021年に日本酒がGI指定を受けたことで、日本国内で初めてGIのダブル指定を受けることとなった山梨県。「GI Yamanashi」のワインと日本酒には、厳格な基準が設けられています。

GI Yamanashiのワインは、山梨県で収穫されたブドウのみを使用し、県内で醸造、貯蔵、容器詰めされたものに限られています。また、GI Yamanashiの日本酒は、全国のGI認定日本酒の中で唯一、仕込み水に使う水系が6つに限定されており、蔵元の個性に加えて水系の違いを楽しむことができます。

ワイン、日本酒ともに、GIとして認められるためには、官能審査や書類表示審査などの品質審査をクリアしなければなりません。この厳しい審査をクリアすることで、高い品質を持ち、地域の特性を示し続けていることが保証されるのです。

GI Yamanashiに代表される山梨ワインは、どのような歴史や味わいを持つのでしょうか。

山梨ワインの歴史は明治時代にさかのぼります。「富国強兵」と「殖産興業」の国策の一環として、もともと山梨県内の峡東地域で行われていたブドウ栽培を活かし、ワイン作りが始まりました。

今日、山梨ワインを代表するブドウ品種は「甲州」「マスカット・ベーリーA」の2つです。

山梨がおもな産地である「甲州」から作られたワインは、グレープフルーツやレモン、ミカンなどのような、爽やかな柑橘系の香りが特徴です。

特に、シュール・リーと呼ばれる醸造法で作られた甲州ワインは、柑橘系の香りに加えて、白桃や洋梨のような果実の香りも感じられることも。また、果皮を一緒に発酵させるオレンジワインでは、よりブドウや作り手の個性を感じることができます。

マスカット・ベーリーAは、ブドウにもかかわらずイチゴのような果物を思わせるだけでなく、綿あめのように砂糖を熱した時を思わせる甘い香りが特徴的です。GI Yamanashiワインを始めとする山梨県産のマスカット・べーリーAを使ったワインは、フルーティーで渋みが少なく、重厚な赤ワインが苦手な人にも飲みやすいワインとして人気があります。

果樹王国やまなし(世界農業遺産・甲斐の八珍果)

峡東地域を中心とする山梨県内では、ブドウだけでなく、モモや柿なども古くから栽培されてきました。

江戸時代には、山梨県内で生産されていた代表的な果物8種類を総称して「甲斐八珍果(かいはっちんか)」と呼びました。 現在でも山梨県は、ブドウ、モモ、スモモの生産量で日本一を誇っています。山梨県は歴史上でも果物の名産地となっているのです。

やまなしの美酒・美食

山梨県内では、果物やワイン、日本酒だけでなく、食やロケーションでも山梨のテロワールを伝えています。中でも、旬の県産食材を使用した料理と県産酒とのペアリングを、県内の素晴らしいロケーションの中で体験することを、県では「やまなしの美酒・美食体験」と位置づけています。

県内のシェフやソムリエで構成された「やまなし美食コンソーシアム」のメンバーのひとりである鈴木信作シェフは、山梨の魅力に触れ、東京から移住した経歴をお持ちです。鈴木シェフは八ヶ岳の宿場町にある古民家を活用し、ガストロノミーレストラン「テロワール愛と胃袋」と、一棟貸しの宿「旅と裸足」を運営しています。

また2024年2月には、果樹産地の中にある山梨県立博物館に、「Museum café Sweets lab 葡萄屋kofu(ミュージアムカフェ スイーツラボ 葡萄屋 kofu)」がオープンしました。

スイーツラボ葡萄屋kofuでは、日本を代表するパティシエなどのスペシャリストたちが、畑で完熟し、その場でしか味わうことのできない果物の魅力を、スイーツプレートやスムージーなどに加工。山梨県産のワインや日本酒をスパイスとしてプラスすることで、土地に根ざした素材のおいしさが存分に引き出されています。

山梨県立博物館では、山梨の歴史に触れスイーツに舌鼓を打つという、テロワールを五感で感じるひとときを過ごせるでしょう。

山梨県内ではこのほかにも、サステナビリティの観点から、ジビエの活用や、規格外の桃を使った「アップサイクル」クラフトビールの開発など、新しい取り組みも行われています。

最近の山梨県では、果物やワイン、日本酒といった地域資源を産地ならではの形に再編集することでテロワールを満喫させる取り組みが増えているのです。

庄内スマート・テロワール構想

山梨県以外でも、テロワールに関するさまざまな試みが行われています。一例として、山形県の日本海側に位置する鶴岡市を中心とした、庄内地域の取り組みをご紹介します。

「庄内スマート・テロワール構想」は、2016年に山形大学農学部が中心となって始めた産学官連携のプロジェクトです。この構想は 「循環型の経済圏(農村社会)」の実現を目指し、カルビー株式会社の創業者である故松尾雅彦氏が提唱したもので、地域の生産者やメーカー、店舗など、さまざまなプレイヤーが参加しています。

庄内地域では耕畜連携、農工連携、工商連携、地産地消といった多角的なアプローチを用い、地元産のトウモロコシを食べて育った豚肉を使ったハム・ソーセージ・ベーコンの開発などが行われています。

兵庫テロワール旅

テロワールの概念を地域の観光資源全般に広げ、観光を楽しむ形に捉え直したのが、兵庫県の観光キャンペーン「兵庫テロワール旅」です。このキャンペーンでは、あらかじめ兵庫県の風土や歴史を深く知ることで、単なる観光地巡りではなく、地域への関心を深める旅を提案しています。

キャンペーンの特徴として、兵庫県の「テロワール」を学び、楽しむためのオンライン研究所「兵庫テロワールlab.(ラボ)」を開設。兵庫県の食や文化、風土に対する文化的な背景について事前に学ぶことができ、実際に現地を訪れた時の理解や感動を深められるのです。

暮らしにテロワールを取り入れよう

ここまで、テロワールとはどういうものか、山梨県ではどのようにテロワールを取り入れてきたかを詳しく紹介してきました。

山梨県が進めている、ワイン・日本酒に現れるテロワールの確立や、テロワールにまつわる情報の発信は、都道府県としては初めての取り組みです。これは「ワインと日本酒の両方でGI指定を受けた、初めての都道府県」ならではのものといえます。

「地産地消」や「サステナビリティ」にもつながるテロワールを、山梨県内ではさまざまに感じることができます。ぜひ、美酒・美食のやまなしへお出かけください。

▼関連記事:山梨県の日本酒テロワールとは

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